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ハズレ王子 Ⅱ 〜輪廻の輪から外れた俺は転生させられて王子になる〜  作者: さつき けい


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13・大切なこと


 パルレイクさんは、シーラコーク国の外相であるピアの父親の部下だ。


ピアが子供の頃からの知り合いで仲は良い。


奥さんのヒセリアさんが小赤の飼育員で、俺が大量に飼いたいとお願いした時に小赤と一緒に夫婦でブガタリアにやって来た。


なんていうか、パルレイクさんはピアのことを妹みたいに可愛がっているような気がする。


たまに俺がピアに手紙やプレゼントを贈るのが遅れると、めっちゃ嫌味を言われるんだよ。


なんだか、監視役というより小舅こじゅうと?。


 今は出向というか、外交官という感じでブガタリアに奥さんと子供と一緒に住んでいる。


ブガタリアには他国の大使館というものがないんだ。


他国からの使者の多くは出入りしている商人たちだからね。


彼らが自分の国からの連絡や通達を持ち込んでくれて、こちらも彼らに依頼する形だ。


シーラコークにしても、イロエストにしても、いまいちブガタリアとは友好国とはいえない。


表向きはちゃんと交易はしてるんだけどね。


しかも、考えたら両方とも険悪なのは俺のせいだったー。


すまん、父王、ヴェズリア様。




 何故か、俺は宴の会場でパルレイクさんに睨まれている。


「ヒセリアには今回、一緒に行くんだとかなり粘られましたよ」


「あははは」


だろうね。


ヤーガスア領主の頼みとはいえ、今までと少し違う環境に小赤を大量に連れて来た。


子供同然に可愛がっているヒセリアさんにしたら心配でしょうがないだろうね。


 だけど、俺にすれば品種改良した小赤や小金の他国への売り込みの第一歩。


反応を見るための大事な機会である。


「ヒセリアさんには養殖や改良をがんばってもらいましたからねえ。


たまにはご褒美も良いかもしれません」


俺としてはヒセリアさんをねぎらいたい気持ちはあるけど、秘密漏洩の関係であまり他国には出したくない。


その代わり、何か褒賞を考えてあげたいとヴェズリア様には相談している。




 会場内を隅から隅まで歩き回り、設置場所の候補を上げていく。


後で領主様に選んでもらい、早めに土台の準備を始めたい。


ガラスの水槽だから、破損や太陽光の屈折なんかも心配だし。


「やっぱり昼間は諦めて、夜だけのお披露目が良いですかね」


会場の窓が大きくて、光がたっぷり降り注ぐ。


それはそれで気持ちが良いけど、小赤たちには眩し過ぎる。


俺が考え込んでいる間に数名の静かな足音が近づいて来た。


「何のお披露目ですの?」


シェーサイル妃と、その侍女たちである。


ブガタリア一同で一斉にビシッと礼を取った。


「これは妃殿下、本日は良いお天気ですね」


代表して俺が挨拶する。




 久しぶりに見たシェーサイル妃は母親の余裕で微笑む。


「コリルバート様、お久しぶりですわね。


ピアには会ったのに私には顔を見せてはくれないの?」


俺は若干、姿勢を崩す。


「妃殿下にご挨拶したくても、義大叔父おじ様がなかなか許してくれないのですよ」


「まあ、ふふふ」


二人で小さく笑い合う。


 俺とシェーサイル妃は三年前の騒動以来、結構気の合う友人関係になった。


ピアが俺のために色々と説得してくれたお蔭だ。


お互いに誤解を解いてみたら、俺たちは案外相性が良かったんだよな。


「ピアが遅いから、お昼を届けに来たのよ。


皆さんもご一緒にどうかしら」


「ありがたく、お受けいたしまー」


「シェーサイル様!」


俺が返事をし終わらないうちに声が割り込んで来る。


「ザッジ」


エオジさんが不快全開の唸り声を出した。




「何をなさってるんですか、こんなところで」


「お天気が良いものだから散歩よ。


館の中ですもの、問題ないでしょう?」


シェーサイル妃が色気の増した笑みでザッジの顔を見る。


「も、もちろんでございます!」


何でお前が赤い顔してんだよ、相手は領主の奥方だぞ。


気持ち悪いな。


「しっ、しかしっ、ここは空気が悪いようですので」


はあ?、俺が居るからだとでもいうのかね。


「あら、私は気にしないわ。


本当に良いお天気だこと。 さあ、お昼にしましょう」


シェーサイル妃の一言で周りが動き出す。


陽の強く当たらない窓際にテーブルを移動し、サッとクロスを掛ける。


ブガタリアの騎士たちも侍女を手伝っていた。


椅子を運び、テーブルの上に簡単な昼食が並ぶ。


「どうぞ、ブガタリアの皆様も召し上がれ」


「ありがとうございます」


シェーサイル妃と俺が対面に座ると、ピアとズキ兄が自然と隣に座る。


他の護衛と侍女は俺たちが終わるまでその場で待機だ。


パンにハムや卵を挟んだものと果物、後はお茶か果汁程度で、偏食の俺にとっても助かるメニューになっている。


俺がチラリとピアを見ると笑って頷いているから、気を使ってくれたみたいだね。


後でお礼を言わないと。




 俺たちが和やかに食事を始めても、ザッジが動こうとしない。


俺はなるべく視界に入れないようにしていたけど、どうやら何かブツブツ呟いているようだ。


エオジさんが「コホン」と咳払いをすると、ハッとして顔を上げたが、俺たちが無視しているのでこっそりと姿を消していた。


まったく、何がしたいんだ、アレは。


 たいして腹も減っていなかったので、すぐに昼食は終わる。


侍女たちが片付けている間に、シェーサイル妃とピアが何かを話していた。


「ねえ、コリルバート様、この後の予定は?」


シェーサイル妃に訊かれて、俺は、


「領主様の執務室で打ち合わせです」


と、答える。


「ではいつ頃、私の息子に会いに来てくれるのかしら。


まさか、お披露目まで待つつもり?」


これは部屋に来いっていうお誘いか。


「これは失礼しました。 ぜひ、今夜にでも伺わせていただきます」


俺は肩をすくめて了承の合図を送る。


「お待ちしておりますわ。 息子が眠ってしまわないうちにいらしてね」


そうして、シェーサイル妃は侍女さんたちと共に静かに去って行った。


うん、相変わらずカリスマ性がある。


だけど、シーラコークであれだけ苦労したくせに、こっちでも信者増やしてないだろうな。


ちょーっと心配だ。




 俺たちは執務室に向かい、領主に面会を申し込む。


小赤たちのためにも早く決めたい。


すぐに返事があり、執務室に入った。


「確認をお願いします」


俺自身が打ち合わせしているのは、領主が当日まで秘密にしたいと言うからだ。


普通なら会場の設営なんて俺の仕事じゃない。


パルレイクさんがヤーガスアの設営担当らしい青年と小声で話し込んでいる。


細かいことはあっちに任せることにした。


 そうそう、あれを言っておかないと。


「今夜、別館に伺いますが、よろしいですか?」


奥さんからの招待なので文句は言えないだろうが、義大叔父おおおじは基本的には別館に男性は近づけたくないらしい。


ベタ惚れだからな。


「まあ良い、例の件か?」


「ええ」


俺だって出来れば近寄りたくはないけど、将来のためだから仕方ないんだよ。




 見回すと、義大叔父おおおじの執務室には文官が数名働いている。


その中にザッジの姿もあった。


思いっ切り俺を睨んでいる。


分かり易いヤツ。


昔の教え子だろうと、俺とお前じゃ身分が違うんだって、まだ分からないの?。


そんな態度を取られただけで無礼だと罰を与えることも出来るんだが。


邪魔臭いからやらないけど。


「では、今夜」


「分かった」


俺は立ち上がり、エオジさんたち護衛と一緒に廊下に出る。


「ザッジは何か仕掛けてきますかね」


エオジさんが執務室の扉を見ながら俺に囁いた。


「さあね」


知らんがな。




 それでも、仕掛けて来た時のために準備はしておこう。


俺は部屋に戻ると、今夜別館に同行させる女性兵士たちを選ぶ。


なるべく男性を減らしておかないとね。


「既婚者なら良いのでは?」


パルレイクさんが荷物持ちを減らされて不満そうだ。


この人もシーラコークでは公女時代のシェーサイルに迷惑をかけられた一人だ。


「ヤーガスアは領主様の機嫌が一番大事だから」


俺は、念には念を入れておくだけさ。



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