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裏話 元勇者のTS少女が違和感を覚えたり照れたりする話


 何かおかしい気がする。

 ここ最近、廉次の様子がおかしい。


 最初に気付いたのは夏休みの途中くらいからだろうか。

 なんとなく違和感を覚えて、でもよくわからない感じ。


 何かが違うのは間違いない。

 なにせ勇者の第六感が言っている。五年間の戦いの日々で幾度となく私の命を救ってくれた第六感を私は信頼しているし、それがいまさら誤作動するとも思えない。


 ……でも、その原因が分からなくて困っている。

 ……一体何なんだろう。


「……」

「……どうしたカナメ。何かあったか?」


 謎に頭を悩ませる私とは裏腹に、廉次はなんてことのない顔でこちらを見ている。

 

 学校の通学路。夏休み明けの初日。

 九月の朝は夏の気配がまだまだ現役で、猛暑を避けるために私たちは手を繋いで歩いていた。


「……ううん、なんでも」


 首を振って返しつつ、廉次の様子をもう一度見る。

 ……普段通りだと思う。手を繋いで歩いてるのに平然とした顔をしているのも、手の平を包む感触も特に変わりはない。

 家にいるときはちゃんと甘やかしてくれるし、頼みごとをしたら普通に受け入れてくれる。これまでと一緒。


 ……でも、それなのに。

 ……これ、何なんだろう。なんだか背中の辺りがムズムズする感じ。


 第六感が囁いている。

 このまま放置してたら大変なことになるぞ、と。でもそれなのに悪いことにはならない気もして……よく分からない。


「……うーん」

「……そういえばカナメ、制服替えたのか?」

「え、あ、うん」


 廉次の言葉に意識を切り替える。

 そうそう。実は制服を買いなおしたんだった。


 一学期に使っていたものは帰ってきてすぐの頃に急いで作ったものだったので、サイズが微妙に合ってなかったから。

 微妙に袖が余ってたし、少し着心地が悪かった。なので、この長期休暇で作り直すことにしたわけだ。


 ちなみにお金は異世界から持ち帰ったアクセサリーを換金したものを使った。制服では使いきれないくらいの額になったので、今の私の財布はとても潤っている。


「ふふーん、どう? 似合ってるでしょ?」


 まあ、それはそれとして、せっかくの新しい制服なので廉次に見せつけることにする。制服は一カ月ぶりだし、新鮮味もあるはずだ。廉次もきっと似合ってると言ってくれるはず。


 サイズは上半身はピッタリに。そしてスカートを少しだけ短くしてあったりする――これは廉次には秘密だけど。


「……可愛いな」

「うんうん、そうだよね! …………ん?」


 ……今なんか、おかしなこと言わなかった?

 

「……?」

「……どうした?」


 聞き間違いかな?

 だって廉次そういうこと言うタイプじゃないし。前に一回言ってくれた気もするけれどそれ以降は全然だ。

 

 可愛いな――なんて。

 まあ言って欲しいけど。五分に一回くらいは言って欲しいけど。


 でもきっと聞き間違いなので、廉次は似た別の言葉を言ったはずだ。

 なんだろう。可愛いなじゃなくて……ああ、いいなとか?


 うん、なんかそれっぽい。きっとそれだ。間違いない。


「……」


 ……でも、一応確認しておこうかな。

 よく分かんないままじゃ、なんだか気持ち悪いし。


「ねえねえ、さっきのもう一度言って?」

「……さっきの?」

「ほら、私の制服姿見て感想言ったでしょ?」

「ああ……カナメ、よく似合ってる。可愛いぞ」


 ……………………!?

 聞き間違いじゃなかった!? しかもなんか増えてる気がする!

 

「……!?」

「……どうした?」

「どうしたって、その、そんなこといきなり言うから……」


 れ、廉次が変になった……。

 ……あ、まさか最近の違和感ってまさかこれ? 廉次が可愛いって言ってくれるようになったのを第六感が感じ取っていた……?


 ……いや自分で言ってて訳わからないけど。


「……嫌だったか?」

「い、嫌じゃないよ? でもその……ちょっと驚いたというか……」


 嬉しいけど……すごく嬉しいけど突然言われると、どう反応していいか分からないっていうか……。恥ずかしいというか……。


 ちらりと廉次の顔を見ると、いつも通りの顔をしている。

 結構恥ずかしいことを言ってる気もするのに、照れた様子もない。


「……」


 なんなの……?

 恥ずかしがってるのは私だけ……?


「はぅ……」


 顔に血が集まってる気がして、頬に手を当てる。

 ……実際にとても熱かった。

 

 全身がそわそわするような感覚がある。

 居ても立っても居られない感じがする。


 廉次の顔を見られない。

 恥ずかしさと嬉しさがごちゃ混ぜになって訳が分からなくなってる。

 

「……カナメ、どうした? 顔が真っ赤になってるが」

「逆に廉次は何でそんなに普通なの……?」


 確かに廉次は真顔で誉め言葉を言うタイプだけど……。


「か、可愛いとか言うの恥ずかしくない?」

「……そうか? 思ったことを言ってるだけだが」

「――」


 ――れ、廉次に一体何があったの!?

 なにがなんだか分からないけど、第六感が囁いている。今の廉次はちょっと前の廉次とは全然違うと。何かが決定的に変わったのだと。


「……うぅ」


 ……なんとなく、スカートを抑える。

 なんでだろう。スカートを短くしたのが、今更恥ずかしくなってきた。


 

 

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― 新着の感想 ―
[一言] グイグイ来る。。。いいぞそこだいけー
[一言] 自覚するとつええ
[一言] 答えを得た廉次君まじイケメン! 
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