魔力MAX公爵令嬢は王太子の溺愛から逃げられない。
※(謝罪追記。)ヴィンセントの名前が………ヴィクトール、になってましたーっ!!今頃気づいた(滝汗)
何の誤変換だったの、私。重ね重ねスミマセン…
訂正いたしました(涙)
前言撤回――やっぱり婚約破棄、できないもんでしょうか?
「重い」
「へっ? 何が?」
「アレックスの愛が重すぎるっ!!」
「あ~。確かに」
魔王討伐の旅に出て、早数ヵ月。
四天王を名乗る幹部の2人は倒し、向かうところ敵なしの勇者一行ではあるが。パーティーの内部と言えば、日々トラブルが絶えず起きる――主に、男共のせいで。
光の勇者ティリシアと水の巫女ティリカ。その2人を、従者の私たちが守護する。そうは言っても、ティリシアは歴代最強と名高い剣士で、ティリカは桁違いの魔力を誇る巫女様。本来守らなければならないはずの2人だが、規格外すぎてこちらが追い付くので精一杯だ。
「ティリカだって、あのティリシアの束縛……たまには抵抗しないの?」
「え、抵抗? 何でー?」
「――あんだけ執着されても嫌じゃないのね。さすがだわ、ティリカ」
「あはは。だって愛されてるー、って実感できるじゃない。確かにたまにウザくて無視はするけど、涙目で無言の攻撃食らっちゃうと許すしかなくなるんだよねぇ。うん、イケメン無罪」
「……うわぁ」
私――わたくしの名前は、アメリア・スペンサー。古くはローランド王家の血筋を含む、由緒あるスペンサー公爵家の長女だ。
そして。この世界――ティルローランドを代々治めるのがローランド王家である。その現在の王様の第一王子が、私の婚約者となったのは幼少の頃のこと。
既に風の魔力に目覚め、しかも幼児にしては膨大な魔力を完璧に制御してみせた。更に、希少な水の魔力も持っていることが判明し。王家に嫁ぐのは確実だと、周りに持ち上げられた。
自らの魔力を高めることに、私は夢中になっていき。婚約者の立場を度々忘れて、冒険者に混じって魔物退治に明け暮れてみたり。魔法研究所に潜り込んで、研究所たちと魔法の研究に取り組んだり。
――ハッキリ言って、強制的にさせられる王太子妃教育なんて嫌だったし、逃げ出したくなることも一度や二度ではなかった。だが、公爵家に生まれた私に、拒否権などあるはずもない。その上、私ときたら無駄に外面が良く、ハイスペックで血反吐を吐くような教育まで完璧にこなしてしまうものだから仕方がない。
燃えるような紅い髪に、陶器のような白磁の肌。誰もが文句のつけようのない、中身もパーフェクトな美少女――それが、わたくし、アメリア・スペンサーなのである。
それに対して、婚約者である第一王子――アレキサンダー・リオン・ローランド様も、負けず劣らずのハイスペックぶり。文武両道で、王家特有の美しい金髪に碧眼の顔面偏差値ぶっちぎりな端正な顔立ち。私という婚約者がいても、女子人気は衰えることがない。
婚約者とはいえ、貴族や王族の場合、政略的なものがほとんどで。私も、例に漏れず愛など期待したことなどなかった。出来るものなら穏便に解消したい程で。
――だから、婚約者である殿下がまさか、私を深く愛していたなど思いもよらず。
「どうしたんだい、アメリア?」
「――で、殿下!」
「いやだな、アメリア。そんな他人行儀な呼び方。アレックス、って呼んでと言っただろう?」
「申し訳ありません。少し、昔のことを考えておりましたので」
「何だ。俺のことを考えてくれてたんだ? それなら許そうか」
ふふっ、と嬉しそうに微笑まれ。不意打ちを食らった私は顔を赤くしてしまう。――ああ、おかしい。愛されている自覚はしても、こんなに心乱されることになるなんて!
「いいね、最近のアメリアは。以前は俺の一方通行だと思っていたけれど……」
「な、何ですか。わたくしも愛しておりますと言いましたでしょう?」
「そうだな。言葉では聴いていたが、こうやって態度で表して貰えるのが嬉しいんだよ」
「アレックス……」
蕩けるような甘い瞳を向けられ、危うく私は昇天しそうだ。何なの、この色気! 殺傷力が高すぎるでしょ!
「赤くなっているアメリアも可愛いね。いつもの凛とした淑女の鑑と言える君も美しいけれど」
「も、もう止めて。ところ構わず口説くの禁止!!」
こんな感じで、婚約者のラブラブ攻撃に日々負けてしまっている。
「しかも、嫉妬深いし……」
「それはティリシアもだよー。嫉妬に関しては私も重いかなぁ、確かに」
「察するわ、ティリカ」
ティリシアのティリカに対する執着は、アレックスの比ではない。病的なレベルだと思う。男だけでなく、私にまで嫉妬するんだから。
「さすがにトイレとお風呂は勘弁して欲しいんだよね。私にだって、乙女心というものが」
「ああ、昨日もわたくしに無言の圧力をかけてきましたもの。久しぶりの宿で、ゆっくりできると思いましたのに」
女2人で、ゆっくり湯船にでも浸かって……と思っていたのに。再三催促され、早々にお風呂から出たティリカは、ティリシアの腕枕でぐずぐずに甘やかされて眠ったらしい。(詳細を聴く勇気はない。)
「――どうでもいいが、お前たちは闘いの前に緊張感がなさすぎると思うぞ」
「「えっ?」」
身支度を整えた私たちの前に現れたのは、とっくに準備を終えて、更に周辺の見廻りまで行っていたヴィンセントだった。彼は、私たち勇者パーティーの中でも一番の剣の使い手で。長身でガッチリとしたマッチョ体型に、端正なマスク。それぞれ相手のいる私たちに対してフリーであるヴィンセントの人気はかなり高い。肉食女子に常に狙われているが、本人はまるで興味がない。
「ティリシアとアレックスも確かに酷いが、それに付き合うお前たちもお前たちだ」
「容赦ないわね、ヴィンセント……」
「ティリカは自覚があるようだがな。アメリア、お前は流されすぎだ。将来の王太子妃なんだ、上手くあしらう術を身に付けた方がいい。アレックスの溺愛はエスカレートする一方だ。さすがの俺も砂を吐くレベルだ、あれは」
「分かってるわよ……。はあ、やっぱり婚約破棄できないかしら?」
「冗談でも、そういうことは口にするんじゃない。何処でアレックスの奴が聴いているか――」
ヴィンセントの忠告は、的中で。
「やっぱり、アメリアには身体から教え込んだ方が良さそうだね。出発は明日にしてくれるかな?」
「了解だよ。じゃあ、僕もティリカと更に愛を深めようかな」
「もう……ティリシアったら。まだ足りないの~?」
「イヤイヤイヤイヤ! 魔王の手下、迫ってるんだからね? 何をアホなことを……」
後ずさる私だったが、ガッシリと逞しい腕で囚われ。あっという間に、横抱きにされて鍵までかけられる始末。
「取り敢えず。黙るんだ、アメリア」
「っ!?」
素早く奪われた口唇は、熱くて、すぐに何も考えられなくなり――。
「俺から逃げようなんて、二度と言わせないからな?」
「うぅっ……」
「覚悟しろよ、婚約者殿?」
両手首を1つにまとめて掴まれ、練り上げようとした魔力も、集中力が足りずに途中分解し。詠唱もできないように、断続的に口唇は彼のモノで塞がれる。
「まさか、俺との婚約を破棄して、ヴィンセントを選ぶつもりじゃないだろうね?」
「ば、バカなこと言わないで! 仲間にまで嫉妬するなんて、そんなにわたくしが信用できないのっ?」
「だったら、信用させてよ。アメリアの愛を、俺に刻み込んでくれ」
ああ、ヴィンセント。私には、まだまだこの溺愛をはねのけることはできそうにありません。拒むどころか、すんなり受け入れてしまう――どうしようもなく、抜け出せない甘い罠のよう。
今はまだ、この溺愛の海の中に身を委ねて――漂っていたい。
「まあ、仕方ないか。だが、アメリアのことだ。そのうちアレックスを調教するだろうな」
「ヴィンセントには、それが確信できるのー?」
「ああ。歴代最強の王妃になるだろうな、あれは」
「おぉっ! アメリアなら、確かに」
最強王妃様は、本編で垣間見れます。魔力は、MAX振り切ってまだまだ上昇していると思われ。