第八話
薬師ギルドを後にした俺は、冒険者ギルドに正式登録する資金が浮いたので、身を整えることにした。近くにある服屋さんから安めで丈夫な服とズボンを五着ずつ買いこんだ。思ったより安いが、それでも5000Gもした。
次に向ったのは雑貨屋さんで、それで石鹸を数個にタオルを二枚と桶一つを買って全部2000Gもかかった。その次に公衆浴場に向かおうとするが、荷物が嵩張って、このまま行くと荷物が盗まれかねないので、薬草採集の案を早めに進むことに、ギフト【スキルショップ】から一番ランク低いの収納スキルを50000Gで購入した。
《スキル【低位収納】を取得しました。》
低位収納は読んで字のごとく、収納スキルシリーズの中に一番ランクが低く、収納できるサイズは精々高さ1メートル奥行1メートル幅1メートルだけであり、しかもいくら使っても容量が増えることがないスキルである。
荷物を桶と石鹸を除いてすべて収納に投げ込んで、公衆浴場に向かうことにした。公衆浴場は朝からなのか、結構混んでいた。ちなみに利用料金は100Gもした。身をさっぱりにしてから、長らく髪を切ってもらえないので、人生初の散髪屋へ行くことにした。一番低い値段で切ってもらっても500Gがかかることで、一般的な家庭は家族か親しい人に切ってもらっているそうだが、そんな人が消えて5年経ったため、ずっと伸ばしたままである。
髪を短くしてもらってから、職人ギルドに向かうことにした。冒険者ギルドと薬師ギルドは南門道へ沿ってギルドを置いていたが、職人ギルドは北門道へ沿っておいてあった。簡単に言うと正反対の方向にある。この街の工房はすべて北東区に集った所以、職人ギルドも北東区に近い北門道においてあった。数十年前にあっちこっちに散乱しているが、住民が工房からの雑音が耐えられず、領主に訴えてからこうなったようだ。だから、北東区は俗称、職人区と呼ばれている。
とりあえず、冒険者ギルドに登録する前に、装備を整えたい。薬草を卸したお金は残り3228Gである。これで装備を整えるとは思わないが、とりあえず挨拶だけでもしとこうと思っている。良ければ、安めな装備を借りてもいいと考えている。【隠密行動】というスキルがあっても街外だといつ何が起こるか予想が付かない。
しばし東区に向かって歩いて、かんかんかんとあっちこっちから騒音がした。職人区に入ってから、金槌が叩く音しかせず、一時ならともかく、永住だとさすがにスラム住民でも耐えられないだろう。この区域で一番大きい建物に向かって進んでいた。建物の面積だけでも冒険者ギルドの10倍を超え、高さも領主邸より若干劣って5階だが、全体的に領主邸より若干小さい作りである。領主邸はいざという時に軍事要塞として街の住民を籠城できるように建てている。で、職人ギルドの建物全体には防音が施されているからは職人をふくめて職人区全ての住民の寝起きする場所と、食事を取る場所として機能する。簡単にまとめると旅館のような場所だ。
職人ギルドは職人を纏める組織で、指名依頼以外の制作依頼をギルドは予算により、職人に分配する。一番高価なマジックアイデムからはじめ、武器、防具、衣類などあらゆるものを職人が作りあげ、ギルド側がそれを依頼をした商人や客人に配る。職人に接客などさせず、ものつくりを専念させる。それが職人ギルドである。もちろん次世代の職人を教育するのも職人ギルドの務めの一つ。基本的に来る者拒まないので、北東区にはスラム街が存在しない。あるいはひたすら金槌の叩く音に耐えられず、ほかの区域に去っていたのかもしれない。
両目に収め切れないほど巨大な建物の前に、俺は到着したのであった。
職人ギルドのイメージはホテルと直結したショッピングモールです。よろしくお願いします。