第六話
薬師ギルドから出て、空をみると夕暮れだった。空腹耐性がきちんと機能しているのか、まったくと言っていいほどお腹が減っていない。スキルなどを検証するためにスラムに戻った。
いろいろ検証を繰り返すなか、いつ寝落ちしたのかわからないが、いい朝を迎えた。空腹による苦痛など感じず、悠々と薬師ギルドに向けた。体臭はひどいが、スラム住民に清潔を求めるのはどうかな、と。薬師ギルドに着くと、昨日とは別のカウンター「その他」のところに並んだ。
【その他】のカウンターは買取の支払いと薬師ギルドの登録などを担当される。登録以外は別に時間がかからないので、あっという間に自分の番になった。認識票を受付に渡すとほんの一瞬目が険しくなり、すぐにニコニコ顔に戻り、
「ライヤ様ですね。ギルド長が貴方さまとお話がしたいと仰いました。少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「えっあ、はい。大丈夫ですこの通りスラム住民なので、時間だけ人一倍多いですか。なんてね」
「それはよかったです。ではこちらへどうぞ。」
と受付のお兄さんについていくと、扉の前で立ち留まった。扉の前には<ギルド長>とプレートに書かれている。受付のお兄さんが扉を2回叩いて、
「ギルド長、ライヤ様をお連れしました。」
「入れ」
「かしこまりました。ではライヤ様どうぞお入りください。ギルド長がお待ちしております。」
「はい」
部屋に入ると、なんといつも買取カウンターの受付をしたおっさんが椅子に座っているではないか。しばらくフリーズしてそれを分かったのか、おっさんが椅子を勧めてくれた。
「どうぞ、おかけください。」
「あっはい。ありがとうございます。」
「昨日、貴方の薬草を鑑定させていただきました。驚いたことに、雑草が一本も混ざらず、ほとんど上質な薬草です。6級薬草のみならず5級、しまいに4級の薬草を持ってきたではないですか。驚くを通り越して呆れすらしましたよ。当ギルドの優秀な鑑定士と俺たち職員はですよ。その前まで鑑定させてもらった記録とは大違いです。」
「は……」
この前の俺を貶したのか、今の俺を褒めるのかいまいちわからない。
「この年齢帯でこの変化を齎すのは、さぞ神に愛されるだろうというのは我々に至った結論であります。そこでだ、我々薬草ギルドの依頼を受けてみませんかと言うのは今回の本題なんです。」
「えっとつまり、薬草ギルドに指名依頼されたというのですか?冒険者でも薬師でもない私に?」
「ふむ、そうです。あなたのことを詳しく調べさせてもらいました。冒険者を目指しているではないでしょうか?我々薬師ギルド枠であなたのことを冒険者ギルドに紹介し、いろいろ便利を図らえることができますよ。もちろん正式登録料は無料で、強化石版の利用料金も我々が肩代わりにします。冒険に役立てる職人ギルドにも我々の紹介で便利を図れます。どうですか?」
なんかうまい話には裏がある。なぜそこまでのことをしてまで俺の肩を持つのだろうが。
「指名依頼の内容とは?」
「週に一度4級薬草を1束、5級薬草を20束、7級薬草を150束を定期的に我々薬師ギルドか冒険者ギルドに納品してほしいだけなんです。1束は10本をひとまとめにする計算です。知っての通り、薬草採取は冒険者にとって旨味が薄すぎて、最近では冒険者ギルドから納品がなく、それによりポーションの生産も停滞し、いつかポーションが生産できなくなるではないかと不安視しています。さらに冒険者ギルドや領主騎士団からもポーションの催促がされているのは我々の現状であります。」
それもそうか、俺が冒険者になれば、薬草採取もやめるつもりでいるのだ。このオファーを受けると、俺が薬草採取に時間を割かなければならないか。でももし、ポーションがなくなればうまく冒険に出る自信がない。どうしょうかといろいろ悩んでいると、ギフトを使う前提でこの依頼を定期的にこなす方法を思いついた。
「わかりました。このオファーを受けてみたいと思います」