第一話
人によって日に一度しか使えない自己開示<オープン>を使い、ギフト欄のところにじっと見つめる。
【スキルショップ】
スキルとは、才能あるものが努力をしてはじめて実る技術のようなもの。剣術の才能をもっているものは、数日素振りをしていれば、簡単に手に入る。
逆に言うと、才能がなく或いは乏しいものは、いくら素振りをしても無駄に終わる。この俺のようにだ……
しかし、このスキルショップというのは、この才能ありなしにもかかわらず、金さえあれば手に入るようなものだ。数多のギフトを耳にしても、このスキルショップだけは一度も聞いたこともない。
アルフォンスお兄さんは二つほど、ギフトを授けられたそうだ。
【剣の申し子】、と【アイデムボックス】である。
このギフトを駆使して僅かに3年で3級冒険者に至った。歴代最速3級冒険者到達者である。【剣の申し子】というのは、剣の才能を底上げにしたギフトである。
もともとギフトを授けられる前からスキル【剣術】を持っている彼には、まさに鬼に金棒。このギフトだけで彼は<剣鬼>という二つ名を与えられたが、【アイデムボックス】という容量無制限、サイズ無制限の優良ギフトのおかげで、剣で倒した魔物をすべてギルドまで持って行くものである。それからというもの、彼は<剣鬼>と<殲滅者>の二つ名を世に馳せた。
それもそのはず、登録したての頃から脅威度8級魔物のオークの巣窟を単人匹馬で殲滅し、その素材をすべてギルドに持っていたという伝説を作ったのである。
魔物の脅威度というのは上位ランク(5級)以下だと、冒険者ランクとほぼ互角である。つまり、10級冒険者一人と10級魔物一匹とどんどんということ。でも、数人かかれば、その脅威度ランクの魔物を簡単に倒せるということで、逆もしっかり。
アルフォンスお兄さんはあのごろ、8級脅威度のオークの巣窟(**)を単人匹馬で殲滅した。巣窟というのは20から30体以上から無数にいる、且つ上位種が存在する、とこのカテゴリーに分類される。
あのときアルフォンスお兄さんは若年15歳でオーク【8級】45体とオークリーダー【7級】3体を撃破した。もちろん、そんな大群を殲滅したアルフォンスお兄さんは満身創痍となった。
噂だと、冒険者ギルドに正式登録したものは自分の倒した魔物の魔石と料金少々と引き換えに身体能力を僅かに上昇する恩恵があると言われているが、そのなりたてほやほや状態のアルフォンスお兄さんはその恩恵を知らずにそのまま魔物の討伐する依頼を受けてしまった。
もちろんそのあとに、オークの魔石を全部その恩恵に回したそうだけれど。
この冒険譚がアルフォンスお兄さんが世に知らしめる最初のものである。
彼に憧れて剣に打ちこんでいたが、いくらやってもスキルが実らずにいる。それ以外にもいくらやってはいたが、全部不発だった。それもあってアルフォンスお兄さんが行方不明になったと知ったときは、心から絶望した。
あのような強さを手にしたものでも、簡単に死ぬ、と。別に死んだわけではないが、五年が経って彼に関する情報は何一つ耳にできないとなると、さすがに生きているというのは楽観しすぎた。
アルフォンスお兄さんのことを一瞬頭に過った。
でも今大事なのは、このギフトは思ったようなスキルなのかどうかである。【ギフトショップ】のギフトを使用すると念じると、見渡す限り画面がリストとなった。目にしたのは無数にあるスキル群。分かる限りのスキルがここに載っていると言っても過言でもない。利用料金は、10000Gから250000Gまで幅広く表示される。
下に下に、と念じると。なんと【期限付き無料貸し出し】という売り文句?がスキルの隣に表示してきた。それが【薬草鑑定】と【隠密行動】の二つである。期限は二つとも7日で値段は10万Gと売られていたようである、。
10万Gとは硬貨に数えると、銀貨10枚である。銀貨1枚とは庶民が一か月ぎりぎり生活できる金額であり、それが10枚だと、贅沢に生活しても半年が過ごせるほどの金額である。いったいどれほどのゴミを漁れば稼げるのだろう、と自虐ネタを脳内で披露した。
まずは貸出のこの二つのスキルを使い、お金を稼げなければ、思った俺は日課のゴミ漁りを辞めることにした。