第十一話
冒険者の説明をアイシャさんから受けたあと、商談を終えたセームさんが薬師ギルドから帰って、薬師ギルドの指名依頼を僕のカードに登録することになった。
「グレーさんからは永久依頼として頼んだらしいが、大丈夫なのか?」
「えぇ、大丈夫だと思いますよ。秘策があるんです。」
「そうか、ならいい。この依頼を一回でも果たせば、9級に昇進できるぞ。なにせランク的には7級か6級向けの依頼だからな。1割の税を天引きしても50000Gに近い報酬で、月だと200000Gだぞ。ベテラン冒険者に近い月収だよそれは。」
永久依頼、滅多にないが、依頼先から依頼をキャンセルしない限り、半永続に執行しなければならない依頼である。すごい大金を手に入れ続けるが、その代わりに自由が無くされる依頼でもある。この依頼を背負ったせいで、一部の依頼を受けられないと説明された。お金でスキルを買える俺にとって、お金はいくらあっても足りないのだ。いろいろすませてから、冒険者ギルドをあとにした。
昨日と同じく南門から外に出た。外に出てからある程度歩いて、人がいないと分かると、【隠密行動】を発動した。それから森に向かって歩いていた。森に入ってさらに奥に歩いて、【薬草鑑定】ではなく、【鑑定】で草にかけた。ちなみに【薬草鑑定】でかけた薬草はこんな感じ、
【薬草】
状態:良好
ランク:7級
価値:2G
注釈:下位ポーションの素材であり、魔素の低いところにも発見できる。
でLv3になった【鑑定】はこんな感じ、
【薬草】
状態:良好
ランク:7級
価値:2G
スキルのLvが一つ上がるごとに、鑑定結果が一行増える。このように推測すれば、借りたスキルは大体4か5ぐらいである。このようにLv3の【鑑定】があれば、借り物の【薬草鑑定】を頼らずにそっちに力を注いだほうがいい。で、今日はとりあえず指名依頼分の薬草を採集したい。なぜなら、【隠密行動】の時間切れが一刻一刻と近づいていたからだ。例の秘策も時間を掛けて目標を探さなければならないから、今やるのは不適切である。
とりあえず、森をさらに深入りして、6級薬草が盛んだところまでやってきた。雑草は薬草ではないから、鑑定にも引っ掛かる。点ではなく、面で鑑定できるので、前より早く薬草を発見できる。それを頼りに、薬草の根の上をもぎ取ってから、左手に移した。ひたすら摘んで、10本ぐらいあると雑草を一本も摘んで薬草を一束に結んだ。結んだ薬草を収納に収めてから、薬草を探した。薬草を鑑定で探し、探した薬草を摘んで10本を一束にまとめてから収納に収めることを繰り返した。
一面に薬草を見つからなければ、さらに深いところに行く。昨日とは離れたところから探索するため、なんのハプニングもなかった。もちろんゴブリンらしき魔物とオークらしき魔物は山ほど遭遇したが、【隠密行動】が機能する限り、発見されることがないため、心を無にしてひたすら採集し続けた。作業がかなりなれたためか、2時間たらずに昨日の採取量を超えた。今は昨日より深いところを探索しているが、これ以上深いところには入っては行けないと嫌な予感がした。おそらくこれ以上深い森には、【隠密行動】が通用しない魔物が生存しているだろうと考えている。
魔物を無視しつつ、薬草を摘むこと5時間。収納には3級薬草も含めた薬草が昨日の数倍の量があった。かさばる荷物に困らず、いつも身軽いままに薬草を採集できるので、無理もなかった。そのあと、結果に満足した俺は身軽なままに帰途についた。そう言えば、まだ宿を探していないことを思い出し、慌ただしく街に帰ったのだった。




