第十話
シェリーさんからのご厚意に感謝しつつ、職人ギルドを後にした。武具一式をさっそく身にまとおうとしたが、四苦八苦してようやく防具一式を着込んだ。左腰に剣をおびて、冒険者ギルドにむけて出発した。普段から不慣れな格好をしたにもかかわらず、移動速度は落ちなかった。スキル【体術】による恩恵かな?
いろいろ済ませたからか、朝も終わり掛けている。早めの昼食のことで、屋台の串焼きを三本ほど買った。二本を人に気づかずに【収納】に収めて残り一本を食べ切った。
ちょっと散歩気分で歩いていると、冒険者ギルドのまえについた。扉を文字通り叩いてから入ったが、ギルド内はかなり閑散としていた。時間が時間なので、上手い依頼はもうほとんど残らないだろうと、この時間帯に来る冒険者は早めの達成報告か、打ち合わせのためにしかこないだろう。冒険者ギルド内部にも酒場を経営をしているが、朝から飲んだくれはさすがにいないだろう。
【収納】から冒険ギルド宛ての紹介状を取りだして、受付のあるカウンターに直行。受付は書類業務をしているのか、かなり忙しそうに書類に書きこんでいた。どうやら俺がギルドに入ることすら見えないほど集中している。
「あの……」
「……」
「あの、すみません!」
二度目に話しかけてようやく俺に気づいたのか、急に立ち上がって
「いっ、いっらしゃいませ、当ギルドにはどの御用でしょうか?ご依頼ですか?」
「どうも、これを」
紹介状を受付嬢に渡すと、やはり紋章を確認する。
「少々お待ちください。」
と言って、カウンターの向こうに消えた。しばらくすると、先程の受付嬢の後ろにはいかに冒険者ギルドの長を勤めていそうな男がついていた。
「あなたがライヤか?俺はセーム、このギルドの副長をしている。よろしく頼む」
と手を伸ばしてきたので、握りながら自己紹介をした。
「はじめまして、ライヤです。今日は冒険者の正式登録をしにきました。よろしくお願いします。」
「ふむ、紹介状を読ませてもらった。紹介に預かれば、正式登録は確かに無料となる。アイシャ、この少年に正式登録を済ませろ。では、指名依頼の件も契約などいろいろ確かめなければならないので、グレイのおっさんに会いに行く。」
そう言って冒険者ギルドを出ていたセームさんを見送る俺とアイシャさんである。
「フットワークが軽い方ですね。」
「えぇ、それがセームさんの売りですもの。」
「やはり冒険者出身の凄腕ですか?」
「わかります?セームさんは元3級冒険者であり、『疾鬼』という2つ名をお持ちしていたそうですよ。」
そう言って、何らかの書類をカウンターの上に置いてあった。
「では、正式登録を始めましょう。この書類に記入してください。丸のところは必要事項なので、漏らさないようにお願いします。代筆は必要ですか?」
「いいえ、大丈夫です。」
アルフォンス兄さんに読み書きをある程度学んだから、読み書きには困らない。書類には○名前、○年齢、特技、住所といくつかの事項があったものの、必要事項は名前と年齢だけであった。
名前のところにライヤ、年齢のところに15歳、特技は薬草採取と格闘術、剣術を少々。住所はさすがにスラムと書けないので、空欄にした。書類をアイシャさんに渡して、アイシャが必要事項などをチェックしてから
「少々のお待ちを」
と立ち上がってカウンターの向こう側に行かず、横のカウンターから直方体のなにかを持ってきた。先程の書類をその直方体の上に置き、手をそのまま書類に置き、
「《インプット(入力)》」
と、何かしらのシステムマジックを発動した。書類が発光して少しずつ分解し、その直方体に消えていた。システムマジックとは、《オープン》のようにスキルとは別系統で、人種ならば誰でも使えるものである。
「《アウトプット(出力)》」
と、直方体からカードが輝きだして現れた。
「このカードの上に血を1滴垂らして」
と、針を渡してくれた。その針を人差し指に突き刺して、カードの上に垂らした。
「《メモライズ(記憶)》」
とまた何らかのシステムマジックを使ったか。血滴がカードに染み込んだようにカードが赤く発光した。
「最後に手のひらをカードの上に置いてください。」
言われたままに手のひらをカードの上に置いた。
「《メモライズ(記憶)》 」
と発光したカードがやがて発光しなくなった。
「これにて、冒険者の正式登録が完了しました。おめでとうございます。これにて貴方様が冒険者の一員になりました。受けたい依頼がございましたら、依頼書とカードを同時に提出してください。このカードが身分証明書にもなりますので無くさないでください。」
と、渡されたカードを受け取った。これで晴れて冒険者になった。




