プロローグ
新作を初めました。
どうぞお楽しみください。
「や、しばらくぶり。まだ元気かい」
「うん!」
「今日は君にこれを渡しにくるんだ。しばらくこの町を離れるからね」
と手渡してくれたのは、スクロールらしきもの。手で触ると、ぴょんと消えてなくなった。
「えっ」
「これでいいんだ。それは幸運のスクロールなんだ。じゃなー」
そう言い終わって、消えてなくなった。
「待って!」
追いかけようと手を伸ばして……
気が付いたら薄暗いところにいた。いいや、逆だ。またあの頃のことを夢に見ていたのだ。
先ほど夢のなかに出てくるのはアルフォンス兄ちゃん。3級冒険者で領主さまのお抱え冒険者であり、このスラム出身でこの街で一番有名な冒険者だった人だ。
5年前にこのスラムを最後に、行方不明となった。
週に一度食べ物と日用品をこのスラムの住民に配ったおかげで、スラムの住民たちが全員生き永らえたと言っても過言ではない。
でもそれも5年前からの話で、援助がなくなった今は生きることだけでも精一杯だ。
あの日から彼にもらったあの幸運のスクロールは、全くと言っていいほど役にたたず、そのせいで成人まであと僅かになってもスラム脱出も叶わずにいる。でもある意味、いまだに生きていることだけを幸運に思う。
今にあのごろのアルフォンス兄さんを知っているのは残りこの僕だけになってしまい、ほぼと言っていいほど全員が餓死か、不幸の事故に巻き込まれてなくなったからだ。
あの頃から、彼のようになりたくて、木の棒を剣として素振りをしたり、魔法を習得するためにいろいろ
やっていたりしたが、才能がないことだけを現実として突き付けられた。
今にできるのは、週に3回街から徒歩90分程度離れる森で果実を取りにし、知識なしに採集した薬草をギルドに卸してお金にしてもらっただけ。
これから何もできずにスラム住民として生を終えるだろう、と己の人生を嘆きながら、自分のテリトリーで横にした。
翌日に目が覚めると、体がいつものような怠さを感じず、全身が不思議なほどに力に満ち溢れていた。この現象はさすがの俺も知っている。神様から成人になった贈り物<ギフト>を授けられたのだ。
左胸に手を当て、「オープン」と呟くと……
ライヤ(15歳)
スキル:なし
ギフト:【スキルショップI】
どうやら幸運のスクロールがようやく機能し、万人に一人という確率で手に入るギフトが授けられた。
この日がライヤという、スラムに住む孤児の運命を動かす日となっる。