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大団円エンディングの作り方  作者: 吉瀬
第6章 地球の章
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91 テルラの視点

あれから一月以上経ったがえいこサンの行方はようとして知れなかった。

光の国では危険聖獣駆除の名目でカナの祠の捜索が行われたが、結果収穫は無かった。しかも、神官代理が行方不明なったそうだ。あちらの国では大層な人物だったらしく、大騒ぎになっている。


一方で闇の国と光の国の国交は良好で、研究や技術提携は進んだ。サンサンの天寿が近いことも非公式で知らせた。その話し合いで魔力の放出が一気にくるより徐々に対応した方が良いだろうとなり、現在調整しながらサンサンの魔力は放出している最中だ。


操れる魔力量も減ってきていたから、暴発しなくて済むな。とサンサン本人もその方が良いと言い、今はマリスの世話をしながらモートンさんと穏やかに過ごしている。サンサンの実力は序列では下位に落ちたが、もちろん誰もサンサンがNo.1である事にも王である事にも異を唱えなかった。


俺がウランさんを抜いた辺りからは、ウランさんやサンサン、モートンさんと話し合って体制を変えて来ていた。国の方針を決める以外の実務的な事柄は下の機関にかなり割り振った。代わりにルールを決めたり、下の機関を拡大したりして一時的には忙しくなったが、ここに来てようやく落ち着き始めている。一重にこちらの世界の人達が優秀でしがらみが無い、善意の魔人ばかりだからだ。日本じゃ考えられないし、意味合いで言うと『聖人』ばかりだったからこんな短期間でまとまって来たのだろう。


さらに『ダヤン』と言う突如現れた魔法機器メーカーが急激に生活を便利にしてきている。エレベーターのような物や電話の様な物が使われる様になりつつある。忠誠の証や愛の証を贈った者同士は携帯電話みたいに話すことができる物まである。見た目が首輪で、付け外しが難しいのが難点だがシェアは広がっている。


かつて無い変化が次々と起こっている。サンサンの魔力を全て開放すれば、魔獣達は一気に凶暴化するだろう。この激流の中で器無しのえいこサンがこちらにいるより、無事に日本にいるならその方が良いとようやく心から思えるようになったある日、その知らせは届いた。


『えいこサンが現れた。』

ジェードから知らせを受けて、俺とウランさん、モートンさんが事情を聞く事にした。

現れたジェードにえいこサンの事を聞くと、「えいこサンだったかは分からない。」と答えた。




師匠からハトが届いた。実はもっと前に意識は戻った事はディナさん経由で知っていたんだけど、せめて起き上がれるまでは呼ばない、歩けるまでは呼ばない、とのびのびになりながら師匠には会えないでいた。呼ばれないって事は仕事に励めって事だから仕方ないと言えば仕方ないし。会いに行くだけだってかなり時間をロスする事は俺だって分かる。今は商人の俺が必要だって事も。


だいぶ慣れた仕事を片付けて会いに行ったら、元の師匠のまんまだった。「リハビリ出来るとこから鍛えとったけど、まだ本調子ちゃうわ。」と言いながらも、俺より全然強いし、『サタナ指定』のヘビーな仕事もあっという間に片付けちゃった。師匠は俺の事よく頑張ったって褒めてくれたけれど、やっぱり精神的にくる仕事は俺にさせないつもりだったみたいだ。

暗殺者は『見習い』を一度外すと戻れない職域だからと言うのと、俺を見ていると違う適性がありそうだからだそうだ。


ええっと、話を戻します。師匠は仕事を片付けてこう言ったんだ。

「えいこサンに会いに行こか。」って。

びっくりしたけどついて行ったら、ナイロの食堂で真っ黒なフードを被った人がいたんだ。それで、言われた通りその人の右隣に座って、師匠は左隣に座った。


「えいこサン、久しぶりやなぁ。」

「…。」

フードで顔は見えないけど、確かに女の人みたいだった。

「あの、えいこサン、なの?」

「…違う。」

そう答えた声はえいこサンだった。だから、顔をこちらにグイッて向けさせたんだ。流石にフードは脱がさなかったんだけど、目も鼻も口も、間違いなくえいこサンだった。

「やめて。」

そう言って、すごい力で振り払われた。

「生きてたんだ。俺すっごく心配してたんだよ!みんなだって!ディナさんだ「そんなの知らない。」

遮ったのはびっくりするくらい冷たい声だった。

「…話とう無いんやったらええけど、なんや困ってへんのか?」

「うるさい。」

師匠がすごく優しく聞いたのにえいこサンの反応はおかしくて、思わずイライラしたんだ。

「うるさいって!そんなの無いんじゃ無いかな。師匠はえいこサン助けるために命捨てたんだよ?」

「命、捨てた?」

「いや、生きとるし。」

「生きてるのは、たまたまヒノト様がバーストの治療に詳しかったからと結晶があったからですよ!俺にだって、師匠の事はほっとけって言って結晶飲んで、バーストして、岩溶かしたんじゃ無いですか!」


そしたら、その女の人は一瞬師匠の方をみただけでこう言ったんだ。

「馬鹿みたい。命捨てる様な無様なことしかできない弱虫なんて要らない。」

頭が真っ白になってる隙にその女は席を立って店を出たんだ。

師匠は俺の背中を叩いて、「おーきに」って言ったんだ。それから、「ちょお、頭冷やしてくるわ。」って言って食堂を出て、帰ってこなかった。


しばらくして、よそのおじさんに背中になんか付いてるよって言われて、師匠が張り紙していったのに気がついたんだ。

その紙には『後の仕事よろしく。済んだら闇の国行け。』って書いてあった。




ジェードは最後に「俺はあの人はえいこサンだとは思いたく無いけど、師匠はえいこサンだって言ってました。」と憮然と付け加えた。


「どう言う事でしょうね。私にはまだ彼女の存在を感じられませんが。」

ウランさんは眉間を揉んだ。えいこサン行方不明時にウランさんが愛の証を贈った事は聞いている。

「しかしながら、ウラン殿。繋がりを謀る事は可能じゃて、その女子が天使殿の可能性も捨てきれますまい。」

「他人だったらいいけどな。」

「他人の方が良いのですか?」

俺の発言にウランさんは、素直に疑問を投げかけた。

「もし、えいこサン本人だとして、だ。操られているなら厄介だろ。」

「なるほど。」

「わしに分かるように説明しとくれんかの。」

「えいこサンを探して行方不明になった二人の事です。二人ともかなりの実力者ですが、えいこサンを連れ帰っていない。それは、何故か。」

「ふむ、天使殿を操った者か天使殿本人に捕まったか殺されたか、同じく洗脳されてあちらの駒になったか。」

「そんなぁ!」

思わず声を上げたジェードが慌てて口を押さえた。


「モートンさん、あんただってサタナさんがやられたとは思っちゃいねーだろが。一番可能性が高そうなのは、えいこサンが洗脳済みで人質状態じゃねぇ?ま、どっちにしろその女と話さなきゃ分かんねーよ。当面は同行を探りつつ、一人では接触しない方がベターだな。」

「そうですね。それから、黒いフード。彼女はセレスという人物に魔法を習うと言っていました。最近突然様々な発明品を販売しているダヤンの経営者が黒いフードを着用している男だそうです。彼の名前を知る者はいないそうなので、あるいは。」


動く方向を決める間、ジェードの事を忘れていた。それくらい気配を場に馴染ませるのが上手かった。

「それから、ジェード、お前これからどうするんだ?」

「俺ですか?師匠の後を継いで商人の仕事をしようかなと思ってます。でも、国付きの商人では無いので出来ればどこかで修行もしようかな、と。」

「じゃ、俺の下に付け。鍛えてやるよ。最終的に何になるかはサタナさん戻ってから決めりゃいいし。モートンさん。こいつの仕事なんとかできねーか?」

「テルラ殿、わしがこっちの仕事に関わってあるのは秘密なんじゃが。まぁ、ウラン殿も知らぬ訳無いからええがの。好きにするが良い。サタナの仕事はなんとでもなるわい。」

ジェードが驚愕の顔になって、周りを見回して、ウランさんがため息をついた。

「構いませんけどね。彼の能力等はディナから聞いておりますので。テルラ殿付きでしたら、内殿に部屋を用意させます。ジェードと言いましたね。次代の王にお仕えする覚悟はありますか?」

「騎士もなかなか楽しいぜ?」

俺とウランさんの問いかけに、ジェードは「はい!」と力強く返事をした。

前回に続き、本当は各々の反応等々考えてましたが、冗長になるので割愛しました。完結後に別途テルラエンドやディナ&ジェードエンド書く事になったら足します。

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