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大団円エンディングの作り方  作者: 吉瀬
第3章 悪の精霊
41/146

41 お願い事

日が沈みきってから、ようやく解放されました。


もうね、頭の中を見事に真っ白にしてたから、時間の感覚なかった。もうすぐ悟りを開きそうだったよ。煩悩まみれだけど。


帰りは普通の駈歩かけあしだったし、洋服に上手い事魔法をかけて固定してもらったので、安全安心快適でした。次回は最初からそれでお願いしたい。


城についたら、笑顔のウランさんがお出迎え。ぶるぶる。

「おかえりなさい(にっこり)」は本気で怖いからやめて欲しい。

厩に行く大地君と別れて、ウランさんと2人で部屋に戻る。

「お疲れの所申し訳ありませんが、お願いしたい事がありますので、明朝モートン殿と伺ってもよろしいですか?」

安定の仕事優先ぶり。

「構いませんよ。」

「ありがとうございます。…遅くなりましたので、食事は部屋に運ばせます。先に湯浴みなさるなら、部屋にいるシャル達に言ってください。」

「ウランさんはお食事は?」

「貴女が帰らないのに、食事が喉を通るとでも?」


ひー、怒ってるー。


「心配かけてごめんなさい。」

「謝らないでください。…心配はしていません。テルラ殿が一緒ですし、魔力防御で貴女の安全はシャル達には感じられました。あと、あんな青二才に貴女が落とせるとも思っていないので。」


じゃあ、怒ってないの?

ちょうど自室の前に着く。

お茶くらい出した方がいいのかな。でもご飯もまだだそうだし。私もお腹減ったし。

「えっと、お茶でも?」

聞いた瞬間、私を挟むようにドアに手を着く。ソフト壁ドン。

「…貴女は色々無自覚過ぎます。こちらでは夜に男性を部屋に誘ってはいけません。それから、」

なんかさっきもそんな事で叱られました。

まだ7時くらいだけどダメなのー?

と思っていたら、顔が耳元に近づく。


「これは、嫉妬です。悪いですか?」


セクシーボイース。


「あ、あの、こう言うやり取りはぁまり得意で無く…」

声がひっくり変える。けど、ちゃんと言っとかないとね。スライムになったら困るし。


「存じております。慣れていただかないと困りますので。」


んがっ。


「あと、ちょっとした仕返しのつもりでしたが、その顔が見れたので良しとしましょう。それではおやすみなさい。」

可笑しそうに笑ってる去って行かれました、厩の方へ。


「おかえりなさいま、せ?どうなさいましたか?すごい顔になってらっしゃいますけど?!」

ディナさんの目が点だ。既に部屋で夕食を食べていたマリちゃんが飛んでくる。

こんな時間までえいこ様を引っ張り回すなんて!とか怒るシャルさんに先にお風呂行ってきますと伝え、マリちゃんと一緒にヨロヨロとバスルームへ。


鏡にはハニワが写っておりました。

本気でウランさんの趣味を疑うわ。



翌朝果たして予告通り、ウランさんとモートンさんが来ました。

私が出来ることって言うと、どちらかの結晶でも回収に行くのかな?それとも急ぎで研究を手伝うとか?でも、研究所はまだ閉鎖中のはずだし。

しかし頼まれたのは予想外の事でした。


「光の国へのお披露目ですか?」

「はい。陛下を救った来訪者として、公式にご紹介させて頂きたいのです。」


なんでそんな事になった。ノンアビリティなんかお披露目しても何にもならないでしょ。そりゃ、誰も近づけ無いくらいの魔力をバーストしながら寝てる人がいたら役に立つかもだけど。しかも先代の聖女の声で飛び起きる人限定。うん。いないわ。


目立たないのは情報戦の基本だと某忍がいってたから避けたいよねー。


「理由を伺ってもいいですか?」


ディナさんが淹れたお茶に口もつけず、淡々とウランさんが『依頼』する。完全に仕事モードだ。

「この度の事故で陛下がバーストした事を初動で秘匿できませんでした。ですので、混乱を避けるために無事である事を速やかに公表しましたが、同時にえいこサンが魔女であるという噂も広がってしまいました。それで、国内の要職の者も謁見を望んでいます。

また、光の国には来訪者や魔女、聖女が見つかったら情報が欲しい旨を2年前に申し入れていますが、えいこサンについてこちらから通達しておりませんでした。しかし、女性の来訪者がこちらにいるはずだと主張する者がすでにあちらにいるそうです。また、陛下がバーストした事で光の国にも聖力の異常な高まりがあったようで、光の国から不審がられているとサタナ殿から報告があります。こちらとしては今後良好な関係を築いていきたく願っておりますので、初めての事ですがあちらの方を招いた公式行事を執り行いたいのです。」


世界を分断するにはあちらの協力は必須だし、そもそも聖力の結晶を事故で大量に消費してるから輸入も必要。こちらに魔女がいるという噂があちらに届く前に、顔合わせをセッティングしてしまいたいって事ね。でも私、魔女じゃないしなー。

と思っていたらモートンさんが口を開く。


「そう言えば、天使様がいらしてから研究が一気に進みましてな。我が国直属の商人であるサタナも予定を変更して採結晶地や光の国の街で結晶を工面しとる。うた事はあるじゃろが、なかなか良い男でおススメじゃよ?公式行事でもなくば呼べぬのが残念じゃ。」

モートンさんが髭を撫でながらウインクする。


この狸さんは、サタナさんを貸して欲しくば受けろと言うのね。

パンダといい、猫といい、本当にこの国は動物だらけだ。

そして、そう言えば、

「良い男かどうかは置いても私もキチンとお礼したかったのでご一緒出来れば嬉しいです。それと、一緒に助けてもらったジェード君もサタナさんの所ですか?」

「ジェード君、ですか?」

「おお、人間に育てられた魔人の子じゃな。サタナが拾った子じゃ。年嵩じゃが、うちの孤児院預かりになっておる。実質はサタナの子分じゃな。」


うちのの孤児院=モートン氏直属の密偵・暗殺者養成所


あれ?ゲームだと大地君の弟子だったはず。私が来た事で変わっちゃったんだ。うあー、読めない事がまた増えた。とりあえずこの問題は棚上げだ。


「分かりました。お受けします。」

「ありがとうございます。」

ウランさん達は予定通りといったとこか、表情は変わらない。

「ですが、条件があります。」

「ほほう。」

モートンさんの目がキラリと光る。何か楽しそうだ。

「こちらの国が来訪者の情報を欲しいと言ったのは大地君が探しているからですね?光の国側が欲しがるのは魔女や女神の情報だけですよね?」

「そうじゃ。来訪者が男性では魔人と同じくブレーキ力は身体に依存するが、女性である魔女は神秘に包まれた何かによりブレーキ力を育てる事が出来るでな。世界を癒すほどの偉業は女子おなごにしかできぬ。だから、その情報は欲しいじゃろな。ただの来訪者はかの国に影響を与うる事は無いしの。」


ゲームでも二年間みっちり修行した大地君と滞在1ヶ月ほどの月子ちゃんの魔力が対等だったもんね。

光の国が知りたいのは魔女の情報と闇の国が安定しているかどうかのはず。闇の国が荒れると最悪戦争だし。


「では、気位の高い魔女候補と最弱な侍女をでっちあげましょう。」


アルファポリス 

大団円EDの作り方 if R18 にて


39.5話大地×A子投稿しました。

最後までやっちゃうので、苦手な人はご注意下さい。

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