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大団円エンディングの作り方  作者: 吉瀬
第2章 太陽の章
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30 ニート再び

「入るぞ」


 やっぱり大地君は私の返事を待たずして入ってくる。

 着替え中だったらどうするんだ、ラッキースケベキャラか。


 起き上がろうとすると、ツカツカ近寄って来た大地君におでこを押されて寝かされた。


「いい。寝てろ」


 大地君は椅子を引いてどかっと座る。アンダーアーマーっぽいものを着ていた。外から帰って防具だけ脱いだ状態のようだ。


「貧血だって?シャル達が『聞いたことのない状態異常』だって心配してた」

「多分、もう大分良くなったよ」

「本当か?舌出せ」


 舌と瞼の裏を確認される。何でもできるな、ほんと。


「ちょっと白っぽいな。今日はもう横になってろ」

「……はい」


 大地君は鈴でシャルさんを呼んで、恐らく貧血に効くであろう食べ物等を指示した。


「研究所で何があった?」

「何もないです」

「質問を変える。突然貧血になるような、何があった?」


 逃げ道はどーこー?上手く誤魔化さずにいると、大地君は深い深い溜息をついた。


「……はぁ、しばらく研究所の手伝いの方休め」

「え?!」

「マリの学校は連れて行っていいから。感知した限りじゃ何もないけど、力の結晶の影響が出てるのかも知れないだろ」


 大地君には研究所でお手伝いをすると報告した際にいつでも感知して良いからと伝えている。


「みんなの役に立ちたいよ」


 魔力関係ないんですー。ネバー無職。ネバーニート。


「もうすぐ俺がウランさんを抜く。えいこサンの魔法をオレが上書きする。それまで安心させて欲しい」


 彼は優しく私の薔薇の痣をなでた。

 大地君負い目も分かるし、私もがっつり結晶触ってるのを黙ってる負い目があって、何も言えない。


「一ヶ月以内に上書きする。必ずだ」


 イケボと優しい眼差しに射抜かれて折れました。

 というほど不謹慎では流石に無いけど、やる事も出来たので今回は流されておこう。

 無理くり押し通して、大地君の過保護度が上がると動きにくい。


 大地君が帰った後久しぶりに頭をフル回転させる。

 この世界は四方を海に囲まれた一続きの大陸だ。東に光の国、西に闇の国があり、間に深い谷と山脈がある。各王都はやや北寄りに位置している。魔力や聖力は南ほど濃くて街が多く、北は薄いため荒れ地が広がる。私が落ちたのは谷と山脈に挟まれた北寄りの荒れ地だ。谷や山脈は北から南へ伸びているが、北端と南端は平地なので、各地域には南端を通って行く。北端は魔力や聖力の自然回復が望めないから普通は通らない。

 谷の内側が光の国、山の内側が闇の国で、谷と山の間は人間が住む。人間が住む所も東寄りは光の国の、西寄りは闇の国の影響下にある。


 セレスは原作通りなら、谷の底に住んでいるが、谷の入り口である南東の街や南西の山脈の扇状地にある街に居て結晶を採取しているはずだ。

 いきなり光の国の勢力圏に行くのは無謀過ぎる。

扇状地の街が良い。後はどうやって身内を説得するか、だ。

 大地君はかなり心配性。私への負い目のせいで仕方ないけど最難関。サンサンも、聖女を重ねて見てるせいか、難しそう。

 ウランさんは、どうだろう。

 想定範囲以外のことは石橋叩きそうだけど、国全体の利があれば冒険しても止めたりはしないタイプだと思う。


 後ろ盾が欲しい。無能な私を売り込むにはどうしたらいい?


 私が知っている事をみんなに話すには、私への信頼度が足りないと思う。『信』は少しはあっても、『頼』は皆無だ。

 それに、バッドエンドはこの世界の人にとっては最上の世界とも言える。私こそみんなへの『信』が足りない。


 とりあえず、図書室に行こう。自然に城の外に興味が湧いている印象をつけて、何かの折に連れて行ってもらうのが、確実だ。それまでに何か信頼を得られる事をして、現地で一人で動けるようにしたい。図書室で何か情報があるかも知れない。


一通り考えると、急に眠気が襲ってきた。

でも、そろそろ、マリちゃん、迎えに行かない……と……。

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