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大団円エンディングの作り方  作者: 吉瀬
第2章 太陽の章
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26 早期教育

 果たして数日が経ちました。

 目の前には五センチほどのリスもどき。

 私は全力でカードをフラッシュする。


「……百!ドッツは終わりー。よく見てたね。いい子!マリちゃん天才!」


 人差し指でこちょこちょとさすると、そのリスもどきは気持ちよさそうにした。

 何故こんなことをしているかというと、です。

 お部屋を一室頂きました。何もすることが無いので、流石に身の回りの事くらいは自分でしたいと申し出ました。

 が、しかしです。この世界は魔力がある前提で生活が回ってました。


 ハサミすら使えません。


 普通は魔力でコーティングして使うんですって。コーティングしなきゃ切れません。包丁も同様。調理の火力も魔力です。

 洗濯も!掃除も!

 全滅。足手纏い以外の何者でも無い。


 城内の方々から特に非難めいた声が無いのが救い。

あと、よっぽど大地君の評判が良いのか時々慰めてくれる人もいる。

 しかし、働かざるもの何とか!

 居た堪れなくて辛い。


 そんな私を見て大地君がペットをくれました。

 ちょっと入手が難しかったけど、と、


 人気のペット マリス


 の卵。


 何でも卵から育てるとよく懐くとか。

 マリスはリスとハムスターの間の子みたいな生き物で、ひと月ほどで大人になり、知能は人間の子供並みになるのだそうだ。見た目は愛らしくしかも賢い。表情だって分かる!メロメロになりました。


 秋穂さんて、幼児教室勤務だったのよねー。

 する事が無いのでやりました。世界初マリスの早期教育。


 し○だ式?○ーマンメソッド?○ヨコおばあちゃん?我が教室ではIQ150の子供を生み出した事あったのよ!


 ※他人の子です。

 ※現在の幼児教育メソッドを使えばわりと普通にできます。


 紙と絵の具は魔法が無くても使えたし、こちらの絵本も融通してもらった。フラッシュカード自主作成やら指指体操やら思い出せる限りの方法で知育に心血を注いでみました。


 だって、後はする事と言えば、シャルさんとディナさんのお時間がある時に散歩して、ウランさんや大地君とご飯食べて終わり。

 漫画もゲームもネットも雑誌もないんですよ?

 二日ほど前に孵った我が子に指を握らせぶら下がらせながら、前世で一度も頭をかすめた事すらなかった願いを叫んだ。


「いやー!仕事したいー!」

「では、お願いしたいので部屋に入っても?」


 すごいタイミングでウランさんはやってきた。


「テルラ殿は確か本日から一週間ほど魔獣討伐に出られるそうですね?」


 世界に余った魔力は野生の魔獣を増やし獰猛にする。大物は人間では太刀打ち出来ない。仕事が早く、国のイメージアップもあって大地君が討伐に出たのだ。


「はい。その間はウランさんもお忙しいからお食事はシャルさん達と摂ることを勧められました」

「へぇ、私、そんなに忙しい事になってたんですか?初耳です」

「……お食事ちゃんと摂る方が効率良いと思いますよ。と寂しさまぎれに言おうかと思ってたところですが、違ったみたいですね」


 「ヤキモチなんて可愛い御仁だ」とウランは苦笑いした。


「さて、魔力研究所に私が兼務で在籍してることは言いましたでしょうか?そちらで、是非手伝って頂きたい仕事があるのです。もちろん、お給金はそれなりに」

「望むところです」


 大地君がいない隙に頼まれる仕事なんて、きっと少し危なくて、成果は大きい。でも好奇心の一人勝ちだ。私はくるくる回りながらウランさんに確認する。


「テルラさんから城から出ないようにとかなり言われてるのですが、研究所って外ですか?何か外に出られない魔法かけられたりしてません?」

「大丈夫ですよ。今の貴女は私の物なので、勝手には防御系の魔法でも上書きできません」


 ふーん。そういうものか。建物なら数人で防御魔法かけると思ったんだけど、それは何らかの手順があるんだな。と記憶する。


「では、外に行きましょうか。今日は私がいるのでシャル達は留守番です。あ、研究所にはマリスもいるので連れて行っても良いですよ」


 マリちゃんを服の中に入れた。初めての城外だ!

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