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大団円エンディングの作り方  作者: 吉瀬
終章 始まりの始まり
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135 バイバイ。みんな、さよなら。

夕食会も楽しく終わり、今晩はマリちゃんと二人で過ごす。お風呂で化粧を落としたら、手先は更に薄くなっていた。このまま薄くなって消えるのか、それともどこかにシュポッと吸い込まれるのか、もしかしたら空に飛んで行くのか。


マリちゃんには変化が全く見られない。私ですらどうなるか分からなくて不安なのに、マリちゃんは更に不安だろう。


「んー。だいじょぶだよ。ママとの繋がりはむしろ前より強くなっている気がするし。」


ニコニコとそう答えられて、そうなの?と驚く。全然私にはそんな感覚えありません。


「僕ね、多分ママの本当の子供になるんだと思う。この繋がりとこの記憶があるまま生まれ変われるなら、ちゃんとママを見つけられると思うんだ。それで、ママの準備が整ったら入れば良いんだよ。」


事もなげに、自信満々にそうマリちゃんは言った。


幼児教室で二、三歳の口が達者な子がそう言えば似たような事を言っていた。全ての子供が親を選ぶ訳では無いだろうけれど、もしかしたらそう言うシステムもあるのかもしれない。


マリちゃんと手を繋いだまま眠る。世界を作った時、自分は自分の役目を終えた後については何もプログラムを指定しなかった。だから、既存のプログラム通り、つまり古文書の通り『役目を終えた乙女は再び家路に着く』はずだ。家路はどこだろう?私はどこに還る事になるのだろう。

えいことしてあの世界に戻るのか、それともこの世界に還元されるのか。


もし、願っても良いならマリちゃんへの愛だけは忘れたくないと思う。


朝、起きるとマリちゃんは居なくなっていた。だけど、不思議と心配も無い。体は指だけでなく、全体的に薄い。ディナさんに手紙を書いて、万一の事を考えて署名はせずにハンコを押す。そして、その横に首からかけていたハンコを添える。


廊下を抜けて、サンサンのお部屋に。ノックするとモートンさんが出てきた。一瞬私の姿を見て驚いて、でもすぐに中に入れてくれた。


「おはよう。もう直ぐだな。」


サンサンの魔力はとても少なくなっていて、それさえも漏れていっているのが分かる。


「御機嫌よう、王陛下。エスコートしてくださる?」

「勿論だ。役得だな。」


サンサンの側に用意された椅子に腰掛けて、開け放たれた窓から外を見た。最上階のこの部屋からは王都全体が見えて、祭の開始を今か今かと待ちわびているように思える。飾られた街全体はとても美しかった。


「俺が死んでも祭りが終わるまでは公表しないようにしてあるんだ。せっかくの祭りだ。喪に服されちゃたまらん。大往生だしな、悲しまれる必要も無いと思ってる。」


だから、腹心であるモードさん以外は不必要に近づけていないのか、とぼんやりと思った。自分の感覚が少しずつぼやけて行く。肉体という境界がある事が逆に分かるような感覚だ。


「ご主人様……。」

「うん。そろそろだな。」


私の意識の一部は外に漏れでて、廊下の様子がわかるようになった。


「こんなに朝早く、しかも王の私室でしょ?いいの?」

「ええんです。急いだ方がええし。」

「何があった?ナ、サタナ?」

「……今日は祭りの初日ですからね。城内も慌ただしくて申し訳ありません。えいこサンが王の部屋に向かわれたというのは確実なので、どこかに行かれる前にご挨拶を済ませた方がよろしいかと。」

「まぁ、サンサンもキュラス様達に会いたがってたし、いいんじゃね?」


キュラスとカナトがサタナさん、大地くん、ウランさんに連れて来られたのが見える。惜しいなあ。時間切れ。


「失礼します。」


ノックもせずドアが開いた。あ、キュラスどん引いてる。だよねぇ。臣下が王の私室いきなり開けちゃダメよねぇ。サタナさんとウランさん、すごく取り乱してる?珍しいもの見れたな。カナトは相変わらず表情変わんないし。大地君、口開いたまま。男前が台無しよ?


バイバイ。みんな、さよなら。


ぱつん、と体の境界が無くなり真上に落ちていった。どんどん離されるけれど、魔力や聖力が直接感じられるせいか視界は良好。

ストラス達が手を振っていて、カークは……投げキッス?


それから、荒地の私が初めて落ちた場所にセレスが居た。私の事が見えているのか居ないのか、だけど視線はあった気がする。全ては一瞬で、初めの地図の上に放り出された。けれど止まらず、ずっと上に落ちていった。








「今の、見たか?」


テルラは誰ともなく聞いた。


「ええ、どなただったのでしょうか?」

「天使ちゃう?」

「天使……」

「何、闇の国って天使がいるの?」


一同は、一瞬しか見えなかった彼女に心が奪われた。穏やかな微笑みを残して消えた女性の名を彼らは知らない。

その一同に向かって、厳かに年老いた賢者は王の崩御を知らせた。


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