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大団円エンディングの作り方  作者: 吉瀬
第7章 ダヤンへの加入
100/146

100 キテルね!

「起きているな。気分は?」

「もう大丈夫。倒れてごめん。」

マリちゃんはああ言ったけど、やはりセレスは謝るような愁傷な事はしなかった。


「飯はここに置いておく、が体が慣れればハウスキーピングはお前の仕事だ。腹は減っているか?」

まぁ、下僕ですからね。自信があるのは掃除だけだけど。

「ありがとう。働かざるもの食うべからず、だからね。ご飯は後でいただきます。」

流石にまだ若干気持ち悪いのでご飯は後にしておく。

セレスは怪訝そうな顔をして、持ってきたバスケットの中からリンゴを取りだし、マリちゃんに与えた。

「ありがとう、D。」

嬉しそうに食べるマリちゃんの頭を軽く撫でると、彼は椅子を引き寄せて座った。

「使令に食餌は不要だ。腹も減らない。だが、嗜好品として食べることはできる。」

ん?少しバツが悪そう?セレスが妙に視線を合わせない。が、突っ込んじゃダメなタイプよね、きっと。気も短いし。

マリちゃんは立ったままリンゴをかじっていた。


「一緒にご飯は食べれるんだね。良かった。でも、マリちゃん、椅子に座って?」

パクつく姿は微笑ましいけれど、その格好なら多少はマナーも教えなくちゃ。指示すると、ハッとしてマリちゃんは座った。自覚はあるらしい。


「ところで、D,私はまずは、料理とか基本的な魔法覚えたらいいかな?それで慣れておいて、攻撃魔法とか補助魔法覚えて…その後は祠を回りたいんだけど。もちろんお仕事は優先させるから。」

古文書はまだ全て明らかにはなっていない。来訪者でないセレスも古文書の内容には興味があるはずだろう。


「…冷静だな。」

「え?」

「いや、好都合だ。その方向でいい。古文書の全ての情報は今のところ、お前しか集められないから命じるつもりだった。立てるか?」

促されて立つと、なんか変な感覚がする。

「魔力や聖力を感じるだろう?魔人は視覚にくるか嗅覚にくるかが多いが、マリスは違うかもしれないな。」

「圧迫感というか、熱というか…感じるね。」

視線を感じるとか、無言の圧力とかそんな感じ。

「それを五感のように頭で即時処理しろ。魔力の動きはマリを憑依して慣れるしか無い。ついてこい。」

促されて外に出ると、病院というか、近未来的な宇宙ステーションのような、つるぺたっとした内装の廊下に出た。そういえば部屋も殺風景だった。

基本的な部屋の説明があってから、小さなホールに連れてこられた。

「ここで魔法の練習をすればいい。結界が張ってあるから、外には漏れない。」

至れり尽くせり。

「質問は?」

食料も結晶類も倉庫にあったし、水道もどうやってあるのか知らないけれど、ある。中世的なこの世界より、元の世界に近い施設だった。

「外はどうなっているの?」

「死にたくなければ外には出るな。一応ロックしておくが、外はモンスターの巣窟だ。」

え。

「ここは、どこ?」

「聖なる谷底。」

それは、聖の力が湧き出しているところですね。

「この建物には聖の力も魔の力も入らないようになっている。移動は魔法陣だ。三重扉を通れば出入りできるし、器無しは聖の力にやられる事は無いが。」

「モンスターにはやられるのね。あと、下手したらシステムにも?」

そもそも防御系の加護無いしね。自衛できなきゃ来た時と同じくらい今の私はか弱い。

「システムは心配しなくていい。」

首で促されて、再びついていく。


「この世界には、システムと意思によって成り立っている。システムはあらかじめ決まったルールに則って粛々と世界を動かしているが、意思は世界の方向性を決めている。俺は管理者と呼んでいるが、その意思はこのルールに逆らう事は出来ないらしい。しかも、出来ることは魔の力や聖の力を媒介して人の記憶を消すレベルで、大規模な改ざんもできない。この建物は外からの力をほぼ無効にしてあるから、管理者は手出しできなくしてあるが…念のためコレを持たせておく。」

どうやらセレスの研究室のような部屋に連れてこられ、ペンダントをかけられた。

ペンダントトップには謎の記号が彫ってあり、かなり大きい。けれどつけ心地は、ほぼゼロだった。

「これは?」

「元は忠誠を誓った者が持てば主人と通話できる機械だ。改変して、俺のココにも繋げてある。」

そういって、胸の心臓のあたりを叩いた。

「お前が死ねば、ここに直接電気が走って俺も道連れだ。」

「ちょっと!何バカな事やってるの?!」

ペンダントを外そうと思ったけれど、輪が小さくて外せなくなっている。

「バカはお前か?俺はお前と心中する気はさらさらない。お前の話だと俺は管理者にとって大事な駒だろうが。俺らが、管理者の思惑に沿って動いてる間はむしろ安全だ。奴はお前が多少ミスしても、むしろカバーするようになるさ。」


「管理者の思惑以外のことっ!するつもりでしょ?」

「まぁ、奴の顔を見てゴアイサツくらいはな。それくらいで消すには惜しいくらいの働きしてやるよ。」


そう言って、何故か脱ぎ出した。

「だいたい、コレを今更抜くのは面倒だ。」

見せられたセレスのみぞおち辺りに機械が埋まっていた。この電線が、びりっといくわけですね。分かります。

目眩がした。こんなキテル人がご主人様とか、もぅやだ。


「マリちゃん、どう思う?」

黙って大人しくついて来ていたマリちゃんのその大きな瞳はセレスの機械に釘付けだった。

「その機械はどうなってるの?すごいね!カッコいい、僕も欲しい!」

「いや、マリちゃんと私はもともと一連托生だし、マリちゃんペンダント側だよ?」

「ペンダントかぁ、それなら要らない。デザインがダサいんだもん。」

「この、クソネズミが。」

マリちゃん意外と怖いもの知らずでした。首根っこを掴まらて外に放り出され、私もついでにお暇する。

やる事は山積みだった。



魔力を感じるのは四六時中感じているからか、過去の私も経験があったのか比較的すぐに慣れた。料理とかも、以前からマリちゃんと共同作業でハサミを使ったりしていたせいか、すんなりクリア。

問題はむしろ発火とか防御とかの基本的な魔法だった。


「魔力がぎゅーってなって、ぼってなって、火がつくの。」

私の先生は可愛いけれど、致命的に理論性が欠けていた。

こちらの常識が無い私はどうしても理論が無いと効率的な魔法は使えない。中途半端な化学と物理の知識が、はっきり言って足を引っ張っている。

えーっと分子を魔力で震わせて熱量あげて発火?みたいな?あれ、基質は何?燃料は?となる。

来訪者チートってなかったっけ?どこ行った?


仕方なく、どうやら多少の科学を知ってるセレスに相談した結果、ホールが火の海になった。そのまま酸素燃やしたら、そりゃそうなるよね。

「てめぇ、いい加減しろ。俺の研究時間を削るんじゃねぇ。」

「アキー。僕がバカでごめんなさいぃー」

セレスに凄まれ、マリちゃんに泣かれ、そして上達の方向性を完全に見失ってしまった。



魔法を使い始めて3日で既に行き詰り、仕方なく家事をしていたら、家事ロボット三号が私に伝言を持ってきた。この広い建物をセレスはこの家事ロボットを使って維持しようとしていたらしい。ただし三号現在、出来るのは幼児の手伝い並み。

「ペンダント使って話せばいいのに。お疲れ様。」

『あー多分、伝言聞けば意味分かりますよ。』


ちなみに家事ロボットは会話可能。受け答えは中央制御室にいる使令がブレーンだそうだ。はじめ見た時はセレスの外道っぷりに引いたけれど、元が水中生物な三号本人は快適なんだとか。同じ下僕同士、友情が育まれつつある。

なお、便利家電の性能はひと昔前の日本のレベルと大差なく、結局手動や魔法が必要な感じ。物干部屋では風魔法の練習が出来ていいんだろうけどね。マリ先生にお任せしている。


さて、その伝言ですが、

『お前に客だ。地下牢に閉じ込めてある。』


きゃく?私に客が来るのも不可解だし、客だと認識してるのに地下牢に閉じ込めておくのも意味がわからない。

三号は「ね。」と言った。セレス、色々めんどくさくなって逃げたな。


客、かぁ。一瞬契約中のサタナさんの顔が浮かんだ。けれど、ウランさんの証やサタナさんの証の追跡はこの建物で弾かれている、と聞いている。そうなると、思い当たる相手はいないのだけれど。とりあえず、三号と地下牢に向かった。



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