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大団円エンディングの作り方  作者: 吉瀬
第1章 未知との遭遇
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1 山下えいこ

はじめての作品です。よろしくお願いします。

 見渡す限りの荒野。

 ガタガタ揺れる荷台の中。

 隣には見たことはある困った顔のイケメン。


 私『山下えいこ』は自分の間の悪さに絶望して思わず涙をこぼした。


 よりによって、前世でプレイしたことのある乙女ゲーム『隔たれし君を思う』の世界に転生していたなんて!


 よりによって、ヒロイン達の転移に巻き込まれるなんて!


 そして、


 よりによって、記憶を取り戻すのが転移した後だなんて!


――――――――――――――――――――――――――


 祖母曰く、私は赤ちゃんの頃神童だった。


「『十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人』っていうからなぁ」


 と父には言われ、


「手のかからない子だったけど、ちょっとぼーっとした普通の子だったわよ」


 と母は言う。


 4月2日の16歳の誕生日。大好物のカレーを頬張りながら


「や、すでに才子ですらないから」


 と私は突っ込んだ。


 そもそも、子供の頃って早生まれの子と比べて四月の頭生まれってすごいアドバンテージあるよね。

 それ以外は自分自身で考えても、割と平凡だと思う。容姿も中身も性格も、おっとりとした両親とどっこいどっこい。


 一歳から絵本を読んでたらしいとかの逸話は、全然覚えてないし。


 でも、昔から初めて見るものや習う事を『なんか知ってる気がする』と感じることはあった。例えば九九とか。


「……いこちゃん!えいこちゃん!」

「へっ?」

「また、ぼんやりして。桜花高校の入学式って何日だったかしら?」


 いろいろ考えているうちに、話題は変わってたみたい。でも、一人娘の高校の入学式を覚えていないお母さんに『ぼんやり』なんて言われてもなぁ。


「えーっと八日の月曜日」

「そうそう、そうだったわね」

「そういえば母さん、あの祠まだあるか見てきてくれよ」


 うちの両親は幼馴染で共に桜花高校の卒業生でもある。大先輩。


「祠ってなに?」

「いわく付きだぞー。昔同級生の子が授業中に失踪してな、大騒ぎになったんだよ。ニュースにもなったのに見つからなくてな。で。十年ほどして、祠の前で見つかったんだ」

「うそ。惨殺されてたとか?」

「もー、お父さんてば。違うわよ。確かに見つかった時に意識はなかったけど、生きてたし、今はお子さんもいるはずよ」

「なにそれー。どこが『いわくつき』なの?」

「いや、十年は経ってるはずなのに、見つかった時はどう見ても十代の見た目だったそうだよ」

「つまり、美容の神的な?」

「いやいや、神隠し的な」

「もー。なにそれー」


 もーもー言ってると牛になるぞー。とか言っちゃうお父さんは本当にもうおじさんだなぁと思う。

 高校の友達づくりのネタにでもしよーっと。


――――――――――――――――――――――――――


 晴れて高校生。晴れの入学式。

 同じ中学からの新入生もちらりほらり。

 同じクラスにも名前は知っている子が数人。

 ちょうど出席番号後ろ二人は同中だったはず。喋った事無いけど。山田さんと山本さん。下の名前はなんて読むんだろう?


「新入生代表。源野海里」


 いけないいけない。また考え事してた。しかし、新入生代表って入試成績一位だよね。すごいなぁ。

 と、顔を上げた。電気が走った。


 すごいイケメン……


 え、これで頭いいとか。マジか。

 高校舞台にした漫画でファンクラブとかのエピソードは完璧創作だと思ってました。すみません。

 これはファンクラブできるわ。てゆーか、無かったら作るわ。


 うわー、うわー。がんぷくー。と思って見ていたのは私だけでは無いはず。


 サラサラの髪。涼しげな目元。彼のために作られたんじゃなかろうかと思うメガネにバランスがよすぎる体型。

 すんごい小顔でなければ多分身長も高そう。来賓席のおじさまと何か種族が違うレベル。


 あ、おじさまごめん。でも、多分私もそっち側。


 声がこれまた良いの、声優の小鳥遊さんの真面目なイケボ。前作からの続投だよね……


 あ、『小鳥遊さん』?『前作』?

 なにそれ。知らない……よね。


 そう思った瞬間、水をかぶったみたいに

いきなり醒めた。


 そして、もう一度源野君を見る。


 うん、イケメン。でもさっき感じた興奮はもう無い。


 教室に帰ったら。山田さんに声をかけられた。


「山下さん。同中だったよね?」

「私も!山田さん3組だったよね。池ちんせんせーの。山下さんは、のだっちん1組」


 山本さんも会話に加わる。

 普通元クラスなんて知らないよね。山本さん、卒業名簿覚えてるのかな。


「そうそう、これからよろしくね!ところで、さっきの新入生代表!超かっこよかったよね!」


 山田さん華麗に話題チェンジ。山本さんの元クラスのんて分かんないもんね。私も知らないけど。


「そう!源野君!橘中学出身だって!」

「えー!橘って隣の中学じゃん。あんなイケメンいるなんて知らなかった!」


 イケメンがお隣にいるなんて知らなかったし、隣の校区が橘中学という事も知りませんでした。


「ねー。あれはファンクラブできるわー。できたら入るわー」

「むしろ作るわー」

「マジで!ちょっと情報集めてくる!」


 気持ちは分かる。でも、なぜか私はすぐに醒めたのよね。なんでだろ。あ、まだ休み時間じゃ無いよー。席に着かなきゃだよー。

 そして、誰か私がまだ一言も発してないことに気がついて。


 担任の先生に叱られながら席に戻ってきた山本さんから、手紙が回ってきた。


『イケメン源野君はイケメン双子兄がいるらしい。それと、うちのクラスのたいらさん、幼馴染らしいよ!』


 むしろ山本さんが何者か知りたくなった。いつ調べたの?

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