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BLOOD STAIN CHILD Ⅴ  作者: maria
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 「ただいまー。」

 部屋に戻ると案の定リョウはイヤホンを耳に差して、ベッドに寝転がっていた。ミリアはイヤホンをすっぽんと引っこ抜き、「ただいまー。」と耳に口を近づけてもう一度言った。

 「ああ? おお。」リョウは眠っていたような微睡んだ眼でミリアを、それからシュンを、アキを、見上げた。

 「これね、お土産なの。うなぎパイ。シラス丼屋さんのおじちゃんが、リョウお留守番してるって言ったらくれたのよう。」

 リョウは素直にそれを受け取り、暫し見詰めた後、袋を開けてぼりぼりと口の中に押し入れた。

 「なんだこりゃあ。うなぎの味、しねえじゃねえか。……でも、まあ、旨いな。」

 「リョウってば、インタビュー途中で辞めちまったでしょう? 下でインタビューの女の人困ってたわよう。」ミリアはそう悪戯っぽく笑んで追及した。「まあ、ミリアが最後ちゃんとやってきてあげたけど。」

 「あ? ああ。」リョウは俄かに不機嫌そうに眉根を寄せ、「そうだ。俺は日本国内ではもう金輪際インタビューはやらねえことにしたかんな。ありゃ、お前らに任せた。」と言って伸びをした。

 「何だよ、お前、自分で『俺がリーダーだから俺がやる』なんつってたんじゃねえか。」シュンがその理由を十分すぎる程解しつつ、一応反論の声を上げた。

 「ああ? んなもんどうでもいいんだよ。前言撤回だ。人は常に変化してんだ。とにかく俺はもうインタビューの仕事は辞めた。徹頭徹尾絶対ぇやんねー。」

 「何だそりゃあ。初老で不惑のおっさんなんだから、ちったあ自分の発言には責任持てや。」

 「初老だろうが不惑だろうが、厭なモンは厭なんだよ! あ、だけどな、海外のインタビューは俺がやる。」

 「……ふうん。わかったわよう。」ミリアは素直に肯く。「じゃあ、ミリアがやるわよう。あんまし喋るのは得意じゃあないけれど、リョウがやんないんなら、しょうがないの。」

 リョウは流石に躊躇のそぶりを見せ、押し黙った。

 「あっははは! リョウ、大丈夫だ。ミリアに任しときゃあよお。さっきの女もこいつがきっぱり音楽の話で締めさせた。」

 「え、マジ?」リョウは思わず上半身を起こしてミリアを凝視した。

 「だってね、リョウはミリアのこと好きなんでしょっていうことばっかし訊こうとするから、全然そんなことないって言ってやったわよう。リョウには別に好きな女の子ができましたって。」

 「お前! そりゃあそれで拙いだろ! 何で俺が浮気者みてえな扱いになってんだよ! ああ、チックショウ、んな面倒くせえことになんなら、俺が何でもかんでも適当に喋くった方がましだったじゃねえか!」

 ミリアは唇を尖らせ、「色白の小柄の可愛い子が恋人にできてるって、言っちまったの。ダメだったの?」と呟く。

 リョウは一瞬怪訝な顔をし、「それってもしかして……。」と言いかけた時、アキが「あの野良猫のことな。」と口を出した。

 リョウは再びベッドに転がる。「白かよ!」

 「リョウ、最近白ちゃんと仲良しだしねえ。白ちゃんも今お留守番頑張ってる所だしねえ。相思相愛の恋人じゃないの。」

 「あっははは!」シュンが膝を叩いて笑い出す。「あの女の人、苦虫噛み潰したみてえな顔してたな。」

 「あとねえ、リョウの曲のことあんま知らなそうだったから、リョウはキラーチューンいっぱい作ってます。天才って書いといてって言って来た。」

 リョウは唖然としてミリアを見た。

 「リョウ、大丈夫だ。今度から音楽以外の雑誌のやつは全部ミリアに回せ。それがいい。だって面白ぇもん。」

 「まあ、バンドもでかくなってきたことだし、これからのLast Rebellionは分業制にした方が効率的だな。」アキがもっともらしく述べ、「そうなの。ミリアがギタリスト兼インタビュー係。」ミリアは自信たっぷりに微笑んだ。


 それから本日最後のインタビュアーが到来した。リョウはミリアの受け答えを聞きたく、再び前言撤回を繰り返し、今度は四人してインタビューに応じることとした。

 音楽的な内容はリョウが答えたが、それ以外をミリアに回すことで、たしかにインタビュアーは翻弄されていく。リョウはそれが可笑しくてならず、一度二度笑いを収めるために席を離れた程であった。

 そしてそれも終わると再び四人はリョウの部屋へと戻った。

 「あーあ、結局昼飯はルームサービスのハンバーガーかよ。俺もシラス丼食いたかったぜー。シラス丼んんん。」リョウはベッドに伏しながらもごもごと呟いた。

 「あのね、すんごい美味しかった。お魚がね、透明で。そんなのが、ご飯にぶわーって乗っかってんの。」ミリアは何の邪気も無く答える。すかさずリョウが睨んだ。

 「そんな不貞腐れてるお前に朗報だ。今日は相当インタビュー頑張ったから、夜飯に伊佐木さんが旨い寿司屋連れてってくれるみてえだぞ。」

 「マジか!」リョウは飛び起きた。

 「市場ん所にある、地元民の食堂みてえな所なんだけど、凄ぇ旨いんだって。しかもな、寿司が寿司のくせに回らねえらしい。理解できるか? んなもん。」

 リョウは厳しい眼差しで静かに首を横に振った。「……寿司は回るもんだろう、普通。」

 「その普通じゃねえのが旨さの要因だ。」

 アキは二人の会話に呆れながら、窓の外をぼんやりと眺めた。

 「よっし。じゃあクソつまんねえインタビューは終わったし、腹空かすためにも、ちっと走ってくっかな。」リョウは意気揚々と立ち上がった。すぐさまベッドの下に転がっていたトランクを蹴上げると、中からハーフパンツを取り出し、何も言わずにそのままパンツ姿になって履き替える。更にトランクからは草臥れたランニングシューズも出て来た。

 「そんなの持って来てたの?」ミリアは興味深げに散らかったトランクの中を覗き込んだ。「んまあ、スパッツも……一、二、三枚もある! これ、こないだ買ったばかしのランニングシャツ。まあだ、値札まで付けっぱなし。」

 「体が資本だかんな。」リョウは伸脚をしながら言った。「デスメタルのフロントマンとして、がなれなくなったら終ぇだ。ヴァッケン出るまでは風邪一つ引く気はねえ。」

 「ガンも、やめてね。」深刻そうに呟いたミリアを尻目に、「たりめえだろ。風邪も引かねえんだから、風邪以上のモンは当然引かねえんだよ。」と吐き捨てるように言うと、ミリアが引っこ抜いてベッドに放りっぱなしになっていたイヤホンを、耳穴に突っ込み、そのまま勢いよく部屋を飛び出して行った。と思いきや、すぐに扉から再び顔を覗かせ、「一時間で帰ってくっから、先に寿司屋行っちまうんじゃねえぞ。ちゃあんとリーダー様の帰りを待ってろよ。いいな。」と睨みを利かせて、去って行ったのである。

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