表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/148

62話 消えたオーガ

 どこへ行った?

 目にしたオーガは三体、少なくともあと二体はいるはずだ。

 ゴブリンの住処と思っていたあの円筒形の小屋か?

 いや、あの巨体にあの小屋は狭すぎる。

 いるとすればべつの場所だろう。


 嫌な予感がする。いったん撤退すべきだ。

 だが、フェルパとリンを置いてはいけない。

 わたしもゴブリンの小屋へと向かい、彼らを見つけ次第三人で撤退するのだ。


 槍をかまえて走り出した。

 二人はどこだ? 可能な限り早く見つけねばならない。

 前方にはゴブリンの小屋が二つ。音と気配で分かればよいが。


 チッ!

 右手の小屋からゴブリンが顔をのぞかせた。

 異変を察知したのか周囲を見渡した瞬間、わたしと目が合った。


「ゲフッ」


 声で危険を知らせようとしたのだろう、ゴブリンが息を吸ったと同時に、その喉にヤリを突き入れた。

 危なかった。いま、大声をあげられてはマズイことになる。


 ヤリを引き抜くと、そのまま小屋へと入っていく。

 いた。仲間の倒れる音に反応し、あわてて近くのヤリに手を伸ばすゴブリンが一匹。

 させるか!

 わたしの突いたヤリはゴブリンの脇腹から入り、反対側へと抜けた。

 即死だな。確実に心臓をとらえた。

 ひねるようにヤリを引き抜くと、ゴブリンは地面に倒れるのだった。



 ピーと笛が鳴った。

 しまった! 気づかれたか!!

 だが、笛の音は少し遠い。

 気づかれたのはリンかフェルパのどちらかか?


 想定より早い。さすがケモノに近いだけある。

 しかし、不幸ばかりではない。これでフェルパとリンの居場所の見当がつく。


 東の方角か。

 急げ!

 わたしは小屋から飛びだそうとする。


 が、ピタリと足を止めた。

 いる。何かが、すぐそこに。


 ここか!

 壁に向かって槍を突き出す。


「ギャッ!」


 大当たりだ。

 ヤリは泥の壁を簡単に突き破り、何かに刺さった。

 鳴き声からしてゴブリンに違いあるまい。


 槍を手放し小屋から飛び出す。

 案の定、ヤリに胸を貫かれたゴブリンの姿があった。


 とどめとばかりに剣でゴブリンの首をはねる。これで四匹、だが、歯を折る時間はなさそうだ。

 まあいい。死体が消えないのならば、こいつらを滅ぼしてからゆっくりと回収させてもらうとしよう。


「ギギャ!」


 こちらを指さすゴブリンがいた。

 それに反応したゴブリンが二体、三体とこちらに向かって走ってくる。

 ワラワラと湧いてきやがった。やはり以前とは比べ物にならない数だ。


 じゃあな。

 反転すると東に向けて走り出す。

 リンとフェルパはもう引き始めているに違いない。

 南東方向が撤退路。笛の音が東から聞こえたならば、すでに追われてる最中だ。


 いた!

 集落の少し外。ゴブリンと剣を交えながら東へ逃げようとするリンとフェルパを見つけた。

 だが、ゴブリンの方が動きが早い。あっという間に囲まれつつある。


 割って入らねば。

 しんがりをつとめて二人を逃がす。

 完全に囲まれてしまえば、あの二人では逃げるのは困難だ。


 ――ところが。


 ボウと炎があがった。

 一匹のゴブリンの目の前だ。それは大きな玉の形を保ったまま、フェルパとリンに向かって飛んでいく。


 なんだ! あれは!?

 高速で飛ぶ炎の玉。フェルパとリンはとっさにかわしたものの、地面に着弾し、周囲を激しく燃え上がらせた。


 なんだ?

 まさか魔法か!!


 炎を放ったのは、いびつに曲がった杖を持ったゴブリン。

 頭には鳥の羽根で編んだ冠をのせ、首にはしゃれこうべを連ねたネックレスをさげる。


 クソ! なんだと!

 あんなやつがいたとは。


「ギュゲー」

「ゲゴゴゴゴ」


 背後から二匹のゴブリンが迫ってきた。

 杖を持ったゴブリンを狙いたかったが、しかたがあるまい。

 瞬時に切り返し、剣を振るう。


 一匹のゴブリンの首をはねた。

 もう一匹が飛ばしてくる吹き矢をかがんでかわすと、胸を一突き。

 勝負あったな。トドメは刺さずともいいだろう。いまはフェルパとリンを手助けするのが先だ。


「いま行く! しんがりは任せろ」


 大声でフェルパとリンに呼びかけた。

 すでに逃げている彼らだが、これで迷いなく逃げに徹することができるだろう。


 ――ところが、ボウとまた炎が灯った。ゴブリンが掲げた杖から炎の玉が放たれたのだ。それは駆け寄ろうとする私の前の地面を焼いた。


 まさか、分断を狙ったのか?

 フェルパやリンでなく、私の合流を阻止しようと?


 あのゴブリンは危険だ。逃げに徹する予定だったが、アイツだけでも仕留めておきたい。


「……summon……ogre」


 そのとき何かが聞こえた。

 見ればまた別のゴブリンが地面に向かって何かを放り投げていた。

 声を発したのはアイツか?

 しかし、なにを、なぜ地面に?


 ボコリ。

 地面が割れて巨大な腕が姿を見せた。

 それから、あたま、体と、まるで地面から生えてくるかのように巨人が姿を現す。


 コイツはオーガか!

 まさか、あのとき見たオーガは魔法で召喚したオーガだったのか!?


 オーガを見たリンの足が止まる。

 マズイ。出てきたオーガはリンのそば。すぐ逃げなければやられる。


「リン!」


 だが、私の叫び声もむなしく、オーガは近くにあった丸太を掴むと、呆気に取られるリンを殴り飛ばしてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
殺人鬼がパンデミックの謎にせまる物語です 殺人鬼アダムと狂人都市
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ