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卒業発表会―早朝―

まだ日が昇り初めて間もない早朝、ロッテはストレイジ学園の壮大な校庭の一角で身を屈め、ひたすら雑草を抜いていた。

「抜いても、抜いても綺麗にならない。ね、レオン。」

「…。」

その隣、少し離れた所でロッテの幼馴染でパン屋のレオンが黙々と同じく雑草を抜き取っていた。


ビートからロッテに与えられた罰は、1ヶ月の奉仕作業だった。

先々週の1週間は、王都にある各騎士団の雑務を。

先週は、児童施設のお手伝いを。

そして今週は、ここストレイジ学園の雑用係だ。

ちなみに来週は商店街のゴミ拾い予定である。


「ふー、大分集まったね。入れるゴミ袋貰って来る。」

そう言ってロッテが立ち上がると、ヒューと音を立てて風が通り抜けた。

一瞬で体温を風に奪われロッテが身震いすると、レオンは着ていたジャケットを脱いで無言でロッテの肩にかけた。

「ふふ、ありがと。レオンお兄ちゃん。」

実際にロッテとレオンが兄妹な訳では無い。幼い頃、年上の幼馴染をロッテはそう呼んでいたのだ。

懐かしい呼び名に一瞬顔を顰めたレオンは、再び無言で雑草抜きの作業へ戻った。


ガラガラと職員室の引き戸を開けると、既に数人の教師がそこに居た。

「あの、ゴミ袋貰いに来ました。」

ああ、聞いてるよ。と一人の男性教師が束ねられた数枚のゴミ袋をロッテへ手渡す。

ロッテはペコリッと無言で頭を下げ、来た道を戻り、再び校庭のレオンの隣へ腰を降ろした。


「ねぇ、レオン。別に付き合ってくれなくて良いのよ?これはあたしの罰なんだから。」

そう、この奉仕作業はビートがロッテに与えた罰であって、レディーナへの直接加害者であるレオンとその他2名にはまた別の罰則が騎士団より与えられ、レオンは1ヶ月の営業禁止を言い渡された。

それなのに、レオンは毎朝ロッテを訪ね、奉仕作業を手伝ってくれている。


レオンはちらりとロッテへ一度視線を向けると、再び地面の雑草へ視線を落とした。

「巻き込んで、ごめんね。」

レディーナを驚かす作戦の協力をロッテが頼んだ時、最初レオンは反対した。

そんな事をしても、何の解決にもならない。と珍しく無口の口を開いた。

なら、他の人に頼む。と当ても無いのに粋がると、分かった、協力する。と呟いて、再び無口のレオンに戻った。


他の2名の内、一人はレオンの店の従業員だった。

2人では迫力が足りないから、とロッテが新たに助っ人を頼んだのはあまり評判の良くない男で、当日いきなり木刀を持ち出し勝手に動いたのは彼だった。


「ごめんね…」

もう一度謝罪の言葉を口にしてから、ロッテは集めた雑草をゴミ袋の中に入れていく。

半分以上入れると重くて運べなくなるという事をロッテは最近知った。

そうして雑草が半分位まで入れられたゴミ袋が今日は8個出来上がった。


運ぶ為にゴミ袋を掴もうとすると、レオンに頭をペシッと叩かれてロッテが不満顔で睨む。

呆れた顔をしたレオンが一言、待て。と伝えると校庭の隅にある小屋の中に消えた。

消えたレオンを訝しげにロッテが待つ事、数分。

レオンは台車と共に戻ってくると、台車に7個のゴミ袋を積んだ。

そして、もう一つ。8個目のゴミ袋をロッテに手渡すと、行くぞ。とロッテを確認もせずに歩き出す。


レオンが7個のゴミ袋を積んだ台車をガラガラ押す隣を、1個のゴミ袋を抱えたロッテが付いていく。

向かう先は、学園の裏口にあるゴミ収集所だ。


「ねぇ、レオン知ってた?マリアには彼氏が居たんですって。」

ちらりとレオンの顔をロッテが窺う。レオンは変わらず、ただまっすぐ前を向いていた。

ロッテは彼が、レオンがマリアと楽しそうに話している所を良く見かけた。

あたしには無口で無愛想なくせに、好きな子の前では笑うんだ。とそれを見る度ロッテは悲しかった。


「レオンにお嫁さんが来なかったら、仕方ないから、あたしがなってあげる。」

レオンが立ち止まって、ロッテを見る。

「…。お前は本当に馬鹿だな。」

ロッテを見るレオンの目も『馬鹿』だと言っている。

馬鹿にされてるのに、何だかロッテは嬉しくなって、競争よ!と張り切り、一人で駆けていく。


それを追う事も無く、歩調を変えずに歩くレオンの目は、眩しそうにロッテの背中を見つめていた。

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