罪と罰
アルバート視点
「な…、な、な」
「そうか、マリアはアルバートの事が好きだったのか。」
「ち、ちがっ」
「だって、アルバート様を見て頬を染めてたじゃない。」
「そ、それはっ」
「ほう。頬を染めたのか。」
「ちがう、ちがいますっ」
マリアを挟んで行われているビートとロッテの会話を呆れながら聞く自分の口からため息が漏れた。
「いちゃつくのは、家に帰ってからにしてくれないか。」
思った以上に苛立った声が出たのは別に羨ましくてじゃない。
自分の言葉にマリアがボッと音が出るかと思う程、一気に顔を真っ赤に染め、ビートがにやにやしながら、そうだな。と呟くのをみて、苦々しい気持ちになったのも、羨んででは決してない。
「へ?いちゃつく?」
と、一人状況が読めずキョロキョロしているロッテは、空気が読めない奴なのかもしれない、と思った。
とは言え自分も、セバスチャンから渡されたマリアの報告書を見るまで気付かなかったが…。
「ロッテ、他でもないこのあたしが、レディーナ様の婚約者であるアルバート様を好きになる訳無いでしょう?」
呆れつつ、目元を緩めマリアがロッテの頭を撫でた。
「へ?えっと…?」
キョトン。とマリアを見つめるロッテの肩にビートが手を乗せ、ウィンクした。
(げっ。)
「ふえぇーー!?いつから?あたし、知らないよっ!」
「ずっと前よ。入学したての頃。その頃はまだ仲良くなってなかったから…。」
「じゃあ、アルバート様を好きだったんじゃないの?」
「それは、困るな。マリア、浮気は許さないぞ。」
「なっ!そ、そんな訳ありません。違います!」
「だ、そうだ。」
マリアとロッテの会話に又もビートが入って楽しそうにマリアをいじめている。
レディーナの前では品行方正な優等生を演じているが、コイツの本性はこれだ。
惚れた女が困り慌てるのを、心底楽しんでいる。
「アルバート様を見て赤くなってたのは?」
「そ、それは…。アルバート様の隣にビートさんがいて…」
「舞踏会の時、羨ましそうにレディーナ様を見てたのは?」
「うっ。それは…、好きな人と踊れるレディーナ様が羨ましくて。」
ロッテからの詰問にマリアは顔をだんだんと俯かせ、それをビートが満足気に眺めている。
俺は何だか、無性にレディーナに会いたくなった。
「もしかして…図書室でやったテストの勉強会の時に、生徒会長を呼んだのもマリア?」
「…。ええ、そうよ。」
寸の間、マリアの返答が遅れたのは答えに困ったからではない。
自分と同じく、それに気付いたビートがこちらへ視線を送り合図するのを、頭を僅かに動かし頷いて応える。
「ええ、そうよ。ロッテ。アルバート様と一緒に勉強するレディーナ様が羨ましくて、ビートさんをあたしが誘ったの。…でも、ロッテ。何故貴女が、それを知ってるの?」
「…え?」
先程までの女性特有の高い声色から、落ち着いた声色へ変えたマリアをロッテの大きな瞳が見つめている。
「あの日、あの図書室に、貴女は居なかったわよね?」
「あ、えっと。それは…」
左上に、右上に、左下にとロッテが視線を動かし、再度マリアへ焦点を合わせた。
「ごめんなさい。あの子、舞踏会でアルバート様と踊ってた子から話を聞いて、邪魔しようと…」
(やっぱり絡んでいたか。)
そう思うと、自然と漏れ出たため息にマリアとロッテが再び身体を震わせこちらへ振り返った。
「「アルバート様…」」
再び目に涙を溜め、二人が手を取り合って縋るような目でこちらを見ている。
(何で俺が加害者の様な目で見られなくてはいけないんだ。)
「まぁ、落ち着け。さて、あとは罪に対する罰が必要な訳だが…、こちらに任せて貰えないか?アルバート。」
顔を歪めた自分の肩に手が置かれた。見れば、ビートが笑うのを必死で堪え、肩を震わせながら置いた手だった。
(何を今更。)
元々そのつもりで来ただろう、と目で非難すれば、更に笑みを強めた。
分かった、任せる。と答えると、ありがとう、助かる。と答える。
(何を今更。)
有無を言わせるつもりも無かっただろうに。と無二の友人へ再度目で非難した。
気付かれた方もいらっしゃるかと思いますが…補足です。
ロッテに勉強会の事を教えたのがディーだと言う事は、40話『友』の「ねぇ、ちょっとわたしの話聞いてる?」の一人称で分かります。
レディーナ 「私」
ディー 「わたし」
マリア 「あたし」(レディーナの前除く。)
上記の様に、それぞれ一人称が違いました。




