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私に必要なもの

レディーナ視点

アルバートが用意してくれた馬車に乗り込む。

当然の様に私の横にアルバートが座ると、御者が頭を下げ入り口の扉を閉めた。

数分後、僅かな揺れが体に伝わると、窓の外の景色が後ろへ流れ始めた。


動き出して数分もしない内にアルバートが身動ぎしたのが伝わり、横目で確認するとアルバートの手が私の頭の後ろに伸びている所だった。

私はその手を掴み留めると、アルバートの膝の上にその手を戻し、向い側に移動し座り直した。

「レディーナ…」

「ぷっ、なんて顔してるのよ」

緩めていたはずの目元が再び悲痛に歪み、眉がこれでもかと下がっている彼の顔につい笑ってしまった。


「避けたんじゃないわ。大丈夫。謝罪はちゃんと受け取りました。」

「じゃあ、どうして…」

「ごめんね。謝罪は受け取ったけど、整理する時間が欲しいの。…ちゃんと考えたい。」


このままアルバートに身を委ねたら、流されてしまいそうだった。

本当は、流されてしまいたいと思っている。


でも、それじゃだめなのだ。


これから先、アルバートが違う人の手を取る度、乞われて許す。そんな関係は間違っている。

乞われずとも、許せる。そんな強い心と、信じられる強い物が『私』には必要なのだ。

(傷ついても笑って許せる様な…)


少なくとも、それはアルバートには出来ている様に思う。

今回、自分の事は棚に上げて泣いていたが、私だって先日まで自覚なく散々アルバートを裏切り、傷つけてきた。

でも、アルバートは怒る事も責める事も、なじる事もせず、大きな心で包んでくれていた。


私もそうなりたい。

彼の隣に堂々と立てる私になりたい。


今迄だってアルバートが注目を集める度、ヤキモチを焼いてきた。

でも今思えば、それらはどこか他人事だった。

何故なら、アルバートは必ず私の隣に立ち、必ず私を選んでくれていたから。

それが今回初めて、私の前に堂々とディーが立ち塞がった事で自分事だと実感し、やっとこの『私の弱さ』に気付けた。


「婚約破棄…とか言うんじゃないよな?」

先程と変わらぬ弱々しい目なのに、鋭い空気はどうやって出してるんだろう?器用だな。と感心する。

「逆よ。婚約破棄されない為に、考える時間が欲しいの。」

「なっ!?俺はっ!!」


言葉を制止する為にすっとアルバートの口元へ指先を近づける。

(この先の言葉を口にされたら…弱い私は流されてしまうから。)


アルバートの唇と私の指先、触れるか触れないかの距離。

ディーはもう触れたのだろうかと思うとズキリッと胸が痛んだ。


「今日、私が謝罪を受け取らなかったらどうするつもりだったの?」

重苦しい雰囲気を軽く変えて貰おうと話を変える。

いつもはギロリと猛禽類の様なアルバートの鋭い睨みが、今日はジトリとねちっこい。

「許して貰えるまで謝るつもりだった。…一晩中でも。」

「あら、こわい。」


先程までアルバートの口元へ寄せていた手元を自分の口元に引き寄せ、口元を隠す様にくすくすと笑って見せる。

ねちっこい視線はそのままに、アルバートがガシガシッと柔らかな黒い髪を掻く。

「…分かったよ、レディーナの気が済むまで待つ。」

「ふふ、ありがとう。アルバート」


ニコッとほほ笑むと、少しだけ頬を赤く染めたアルバートはぷいっと私から窓へ視線を移した。

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