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レディーナと言う少女

アルバート視点

「分かってるから」

そう言って柔らかな髪を耳にかけると不安に揺れていた瞳が緩まったのが分かった。

そのまま髪の中へ指先を潜らせれば閉じて隠される瞳。

浮かべる表情はまだ幼さを残し、無防備で無垢な柔らかな笑顔。

この目元に、口元に、何度口付けを落としたいと思ってきた事だろう。


レディーナは人に求める事が苦手故に、自己主張が苦手だ。


レディーナの母君は彼女が幼い頃に亡くなり、父君が一人で息子と娘を育てた。

後ろ指をさされない様にと幼い頃から厳しく育てられたレディーナには、兄以外甘えられる人が居なかった。

嫌われない様に、求められるままにと育った彼女は知らず人に求める事が出来なくなってしまったのだ。


初めてレディーナに会った日、自分はまだ子供で新しい友達が出来るとしか認識していなかった。

だから彼女の最初の印象は『つまらないヤツ』だった。

常に静かに笑っているだけで、何を言ってもやっても表情を変えない彼女を「人形みたいだ」と思っていた。

思えばあの頃から気になる子ではあったが。


まだまだワンパクだった自分は、その表情が崩れるのを期待して沢山のいたずらを仕掛けた。

でも、そのいたずらは成功する事なく、いつも控え目な笑みと共にかわされてしまっていた。

そんな彼女への印象が変わる日は、ある日突然訪れた。


その日いたずら目的でレディーナの頭に付いていた髪飾りを外した。

その時初めてレディーナの瞳から涙が零れるのを見た。

表情を崩す事に成功はしたが、泣かせたかったわけじゃない。

罪悪感から伸ばした手、潜り込ませたレディーナの髪、手に伝わる猫っ毛の柔らかな髪は目の前にいるのは『女の子』だと教えてくれた。


撫でられると目を閉じるのはレディーナの癖なのか、今までと違う幼さの残る笑顔が顔に浮かんでいて、その表情に初めてドキリッと心臓が高鳴った。

高鳴った心臓はドクドクと鼓動を速め、熱が上がるのを感じた。

手を離し難く撫で続けていると、「もう、いいよ。」と制止の声がかかりはっと手を離した。

パチリッと瞳を開き首を傾げたレディーナはもう、前の彼女とは違って見えた。


その時湧いた「自分が守りたい」と言う強い想い。

それはもう「独占欲」だったのだと思う。

欲望のままにレディーナを調べられたのは幼さ故の勢いによるものか、レディーナを知れば知る程、守りたいという欲求は強くなる一方であった。


あの穏やかな笑みの向こうにある無邪気な笑顔。

上品な言葉遣いの向こうにある生意気な言葉。

柔らかな雰囲気の向こうにある子供っぽさ。

それはずっとそばで自分が守って来たもの。


あの時抱いた『自分が守りたい』と言う強い想いは今もこの胸にある。

しかし、もう一つ。だからこそ抱く思いもある。


だからこそ、『自分を求めて』欲しい。そう思ってしまうのだ。

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