友
ロッテ視点
「ねぇ、ねぇ」
本日最後の授業である楽曲の授業を終え、楽器室から教室への移動中、後ろから呼び掛けられた声に振り向き、声を掛けてきた相手を見て驚いた。
「あ、…」
罪悪感から次の言葉が出ない。自然、顔が強張ってしまった。
「ちょっと聞いて欲しい事があるんだけど…」
(懐かしい響き…)
それは友達であったマリアが良く使っていた口癖だった。
「ちょっと、聞いて欲しい事があるんだけど」はマリアがあたしに話がある時良く使う口癖だった。
マリアはあたしの自慢の友達、…友達だった。
この学園に入ってから知り合ったけれど、すぐに仲良くなって、まるで昔からの親友みたいに何でも話せたし、冗談も沢山言い合った。何度もお互いの家に泊まりに行って夜眠くなるまで一晩中話す事もあった。
そんな関係が変わってしまったのは5年生の時だった。
今まで色んな話をしてきた彼女の口からは毎日の様に「レディーナ様がね…」とレディーナ様一色に変わってしまった。
最初は楽しんで聞いていた。毎日、毎日同じ様な話ばかりだったけれど。
そんなある日、偶然廊下で会話しているレディーナ様とマリアを見つけた。
レディーナ様とは直接面識は無かったけれど、マリアから聞いているレディーナ様は気さくな方の様だったので、こちらから声を掛けてみようと勇気を出して足を踏み出した時
「ご覧になって、レディーナ様。小鳥達が」「可愛らしいわね」と言う会話が聞こえ足が止まった。
(ご覧になって…!?)
その後に続く会話もまるでお嬢様の様な違和感だらけの言葉遣いで…。
マリアじゃないみたい。そう思った。
その日からレディーナ様の事を話すマリアを冷めた目で見る様になってしまった。
いけない。と思ってもあたしの中でその感情『軽蔑』が消える事は無く、次第にマリアを見るのが怖くなった。
あたしが、あたしの心が離れれば離れる程、マリアはレディーナ様にべったりになって、知らない人になってしまった様に感じた。
いつしか、マリアの横にあたしじゃなくてレディーナ様が居るのが当たり前になった。
アルバート様と楽しそうに話しているマリアも目に入り、それも鼻についた。
マリアを見ると胸に焼ける様な苛立ちと怒りが止まらなくなる。
それは『嫉妬』
でもそれが何に対してで、誰に対してのものなのか、もう自分じゃ分からなくなってしまっている。
「ねぇ、ちょっとわたしの話聞いてる?」
その言葉にはっと我に返る。昔を思い出している場合じゃなかった。
「あ、うん。」
正直言えば少し、いや、全然聞いていなかった。
それがあたしの表情に出てしまったのか、彼女は眉根に皺を寄せてはぁー、と息を漏らした。
「もう一回言うからちゃんと聞いて」
「は、はい。」
睨みつけるかの様な彼女の視線。この構図はいつかと真逆ではないか…
「今日の放課後、レディーナ様とアルバート様が小校舎で勉強会を開くからぜひ参加してって伝言。みんなに伝えて」




