後の静けさ
レディーナ視点
ダンステストが無事終わり、皆が帰宅を急ぐ中、名残惜しさに背中を押され、帰り間際また大ホールへ戻って来た。
私は一人、ホールの中央に立って会場を見回した。
先程まで煌びやかだったここは、今は片付けも済んで元の顔に戻っている。
胸に残るのは充実感と喪失感。
舞台を見終わった後と似ている。と思った。
「レディーナ、お疲れ様。君が居てくれて助かったよ。」
後ろからビートの声が掛かった。
私の横に並ぶと同じく、会場を眺めている。きっと私と同じ気持ちを感じているはずだ。
個人的な感情を無視すれば、今回の模擬舞踏会は素晴らしかった。
裏方のお仕事も楽しかった。
参加するだけでは気付かなかった気遣いも知る事が出来た。
「私も…楽しかったわ」
素直な気持ちを込めてビートを見上げる。
「…。ずっと思ってた事なんだが、良かったらこのまま生徒会役員を続けてみないか?」
「え!?」
「責任感も、奉仕の心も持っている君に向いていると思う」
ビートが私を見下ろし笑顔で頷く。
(私に向いている?)
確かに楽しかった。頼られるとやる気が出たし、笑顔を見ると満足感で胸が満たされた。
(でも…未来視で見た私はどうだったのかしら?)
ディーが言っていた前世で私はどうだったのだろう。
「レディーナ、帰るよ?」
その時、大ホールの扉からアルバートが姿を現した。
ホール中央にいる私達を見つけると怪訝な顔をした。
「引き留めて悪かった。考えてみてくれ。」
ビートが私の背を押してアルバートへ促す。
促されるままトコトコとアルバートの前へ進みでてアルバートを見上げる。
アルバートは相変わらず怪訝な表情でビートを見ていた。
「行きましょう」
不穏な空気に耐え切れず私はアルバートの手を取った。




