ライバル宣言
「何だかおかしいな?と思ったの!見てたらアルバートが好きっぽいのに劇場へ行かないとか言ってたから。だからレディーナも、もしかして?って思ってたの!」
昨日の冷たい態度とは打って変わってディーは明るく興奮した様に話し出した。
「あ、あの…?」
一方のレディーナはディーに押され気味である。
「あ!ごめんね。まずはちゃんと自己紹介しなくちゃ。わたしはディー。前世では戸叶翼って言いました。」
その言葉に目を見開くレディーナ。あれ?とディーが首を傾げる。
「あの…、ゼンセとは?言っている意味が良くわからなくて…」
暫し、お互いにパチパチと目を瞬かせた。
「え?知ってるんじゃないの?だってアルバートとの演劇鑑賞断ってたじゃない。それにわたしの名前…、名乗ってないのにディーって」
途端にディーの眉が下がり、しゅんと背中を丸め、段々と声が小さくなった。
慌ててレディーナはディーの手を取り、握った。
「あの!ゼンセとかは良く分かりませんけど、知ったんです!だから名前が分かったんです!」
レディーナは昨日衝突した時に起きた出来事を簡単に説明した。
分かったのは、『ディーの名前』と、『レディーナとディーが同じ人を好きになるという事。』
それから、『ディーとアルバートがこれから何をするかという事。』
「ふーん、イベント内容だけ知ってるって事かな?」
パチクリと可愛らしいはずのディーの目が一瞬、据わった様に見えて、レディーナの背が冷えた。
「まぁ、知ってるんだもんね?ならわたしはズルにならない。」
ディーがブツブツ呟き、一人うんうんと頷いたかと思うと
「レディーナ、アルバートを賭けて、お互い正々堂々と戦おう!」
え?え?と困惑しているレディーナの手を無理やり掴んで力強くギュッと握った。
「んじゃ、次は舞踏会だね。お互いがんばろー!」
と呑気な声で手を振りながら来た道を戻っていくディー。
レディーナはただ茫然と立ち尽くしてその背中を見送った。