交差
(レディーナ視点)
「レディーナ様はいらっしゃるかしら?」
観劇の翌週、授業が始まる前の教室にディーが私を訪ねて来た。
「少しお話宜しいですか?」
ディーの可愛らしい顔がコテンと斜めに傾げると、更に可愛くなった。
「レディーナ様…」
後ろで心配そうに私を見るマリアさんに一つ頷くと、ディーと向き合い、頷いた。
ディーは私のそれを確認すると振り返りもせず歩き出したので、私は慌てて後を追った。
(どこまで行くのかしら?)
結構な距離を歩いた。次第に人混みが薄れ、まばらになる。やがて誰も居なくなった廊下の突き当たり。
その場でディーが体を反転させた。お互いの瞳にお互いを写す。
(……?)
ディーから誘い出したのに、しかし待てども話始める気配がない。
私は腕時計をチラッと見た。もうそろそろ授業が始まってしまう。
「えっと…、ディーさん…?」
仕方なく、こちらから話し掛けようと声を発したその時
「やっぱり!」
と明るい声でディーが私の手を取った。
(ディー視点)
次の週になっていの一番にレディーナを呼び出した。
わたしの予想を確信に変えるためである。
連れ出した廊下の先、向かい合うレディーナの顔には困惑の表情が浮かんでいる。
さて、何て切り出そうか…しばしそう考えていた時
『えっと…、ディーさん…?』
レディーナが困惑のままわたしを呼んだ。
”わたし”を呼んだ。
その瞬間、わたしの予想は確信に変わった。
わたしと同じ『前世の記憶を持っている』
しかしこの確信は、この後の話を聞いて少しだけ変わる。