自覚
レディーナ視点
「ビートまで、協力してくれたのね…。」
「まさか決行がこんなに早くなるとは思って無かった様だがな。」
塔に閉じ込められてから、救い出されるまでのアレコレをお兄様に説明されて頭がパンク寸前だ。
私を救い出す為の作戦をビートが考え、お兄様が手筈を整え、アルバートが指揮し、もしもの時のラッセル様を焚き付ける役にツバサが名乗り出て、マリアさんが皆のお世話をしてくれたのだと言う。ちなみに、お父様の頭突きはアドリブだったそうだ。
(なんて。あぁ、なんて…)
なんて私は幸せ者なのだろう。
私の為に、こんなに沢山の人が助けてくれた。
「さぁ、布団の中にお戻り。」
背を支えられながら起こしていた体を横たえた。
お兄様が首元まで布団を引き上げ、撫でる様におでこに触れる。
「分かるか、レディーナ。あの日、お前の意思が必要だったんだ。お前が嫌だと言ったから、皆で助ける事が出来た。分かるか?」
「はい、お兄様。」
分かる。今なら分かる。
今までの私は、他人の目を、他人の評価を気にして、誰かの望む姿であろうとしていた。
人に望まれる姿でいるのは、苦しいけど楽だった。
少なくとも、嫌われる事は無いから。
自分から望むのは、とても怖かった。
望んで、拒否された時を思うと怖くて。だからそこからずっと、逃げていた。
拒否される事を恐れて、相手から与えられるのを待った。
『助けて』を言えず、『助けて貰う』のを待った。
『レディーナ、与えられるのを待ってるだけじゃ駄目なのよ。』
そう言っていたツバサの言葉が今なら分かる。
必要なのは、誰かの意思じゃなくて私の意思。
人からどう望まれるかでは無く、私がどうなりたいか。
「さぁ、目を閉じて。」
「お兄様、もう帰ってしまうの?」
「また明日、顔を見に来るよ。」
おやすみ。そう言って額にキスが贈られた。また明日。その約束が嬉しかった。