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私じゃない婚約者

レディーナ視点

アルバートと会えたあの日から5日が経った。

あの日から私の周りが少し変わった。


相変わらず灰色の景色の中だが、渡される毛布が1枚増やされた。

希望すれば、食事の時間だけ紅茶が飲めるようになった。

朝昼晩、スープの他にプリンが出る様になった。


(美味しい…)

お昼に出された黄色い卵プリンを食べている最中、ガチャリと開錠する音がした。

「俺が差し入れたプリンの味はどうだ?」

「お気遣い頂きまして、ありがとうございます。」

フンッと鼻を鳴らしてラッセル様とダンさんが入ってきた。


バサリッと今日も足元に新聞が投げ渡され、それに頭を下げて応えた。

「アルバートの婚約者が決まったぞ。」

片側の口端を上げてラッセル様が私の反応を窺う。


「そう、ですか…」

嘘、嫌だ。と否定する感情で一杯になった後、これで良かったんだ。と冷静な頭を装う。

だって、どうしたって、私はその場所に戻れないから。

だから、良かった。これでジーク家は安泰だ。


…でも、本当は嫌だ。嫌で、嫌で堪らない。

(アルバートを取らないで!)

喉元が詰まる。叫びたいのをぐっと手元のプリンを握り締めて耐えた。


「相手を知りたいか?」

思考を感情に支配されていた為に冷静さを忘れ、はっと反応してしまった。

「い、いえ。知りたくありません。」

「そうか?遠慮はするな。」

「遠慮なんかしていませんっ!」

一度剥がれた強がりの仮面はそう簡単には付け直せない。

ラッセル様は今迄で一番楽しそうに顔を歪めた。


「アルバートの婚約者は…」

「いやっ!やめてっ!!」

これでもかと力を込めて両手を両耳に押し付けてしゃがみ込む。

半分だけ残ったプリンが床に転がるのが見えて、固く目を閉じた。

「当分楽しめそうだな。」

塞いでいても、退出するラッセル様の呟きは容易に私の手を通り抜けた。

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