面会の時
《ご注意ください》
昨日、間違えて2話同時更新してしまいました。更新しましたのは、
121話『面会(レディーナ視点)』
122話『面会の前(アルバート視点)』
になります。まだお読みになっていない話がありましたら、お手数お掛けし申し訳ありませんが、お読み頂けます様お願いいたします。
以後、気を付けます。申し訳ありませんでした。
アルバート視点
行くぞ。そう声掛けられたのは面会時間5分前の事。
案内されるままに長い螺旋階段を昇る。
距離は結構あるものの、高さ的には高すぎず。
段数にして86段目。その場所に目当ての扉があった。
彼が扉をノックすると、腰元からジャラリと鍵束が現れた。
(何、を?)
その鍵束の中から一つ、鍵を選ぶと、扉に付いている鍵穴に差し込む。
(まさか…)
手首が左に回されると、ガチャリ。と開錠の音がした。
(閉じ込められているのか!)
思わず彼を睨みつけると、彼は陽気に肩を竦めて見せ、顎で入れと促した。
(時間が惜しい。)
怒鳴りつけたい衝動を堪え、深く呼吸を繰り返し怒りの感情を抑え込む。
(久々に会わせる顔は、いつもの自分でありたい。)
呼吸と、心を落ち着かせて扉を開く。
徐々に開かれた視界の先に、泣くのを堪えている顔があった。
「レディーナ」
傾いた彼女を支えて驚く。あまりの軽さに。
消えてしまいそうで、慌てて力を込めて抱き締めた。
『ホントに?ホントに、アルバート?』
見上げるその痩せこけた顔に泣きそうになった。それを喉を締めて耐える。
背中を撫でて促すと、ようやく彼女の目から涙が零れた。
「こんなに痩せて。ごはん、ちゃんと食べてる?」
「うん。ご、ごめんな、さい。」
「夜は?眠れてる?寒くない?」
着ていた上着を彼女に掛けてその上からまた包む。
「うっ…うん。うん。ありっがとう。」
「レディーナ、顔を見せて。」
泣くのを隠す癖のある彼女の頬を両手で覆い、上げさせる。
両の親指で目尻の涙を優しく撫で拭きながら目元に隈が無いか確認する。
(良かった。)
そのまま頬を撫で、自分の体温が伝わるように、包み込む。
レディーナの冷たい手がそっと、自分の手に重なる。
胸が苦しくて、呼吸が乱れた。
「レディ「そこまでだっ!」
自分の声を遮る声。声の方へ振り返れば、ラッセル・グレイが立っていた。
「時間だ。」
その言葉に抵抗する様に、レディーナを腕の中に囲い、力を込めて抱き締める。
自分の背に回されたレディーナの手も、それにきゅっと応えてくれた。
「少し早いが、もう充分だろう。」
顎で指示された橙が俺の身体をレディーナから引き離す。
「っ!レディーナ!」
「アルバート!」
「くっ、離せ!自分で立てる。」
後ろで引っ張ってる奴が、これは失礼。と手を離した。
ぐっと拳を握り締め様々な感情を押し込める。
目を閉じ、深呼吸し、冷静な自分へ戻す。
目を開ければ、座って茫然とこちらを見ているレディーナが映った。
(大丈夫。)
今だ胸の中は様々な感情で溢れているが、頭は冷静だ。
「レディーナ、立って。」
そう彼女の前で手を差し出すと、いつかの様に手に手が乗せられた。
その小さな手をキュッと掴んで引っ張ると、彼女が引かれて立ち上がる。
「いつでも、君を想っているよ。今日は、会えて嬉しかった。」
潤む瞳を見つめたまま、想いを唇に乗せて彼女の指先に口付けた。
いつかの様に。