面会の前
《ご注意下さい》
間違えて、本日2話同時更新となってしまいました。
先に前話をお読み下さい。申し訳ありません
前話『面会』の前の出来事になります。
アルバート視点
レディーナとの面会申請が通った。と連絡を受けたのは昨日の夜の事。
ジーク家の方は相変わらず却下されていたが、アレク様の方が通ったのだと言う。
彼は約束通り、その権利を自分にくれた。
「女々しいな。」
厳重に警備された門を抜け、木々の中を馬車に揺られる事数十分、ようやく辿り着いた灰色の塔の前、出迎えた橙色の男が言う。
「レディーナに会わせてくれ。」
「面会時間までまだ1時間もある。まずは、受付へ案内しよう。」
案内された塔の中は薄暗く、湿っていて、寒かった。
着ていた上着のボタンを首元まで留め、しっかりと身を包む。
紙に日時や目的、自分の名とレディーナの名を記入し終えると、一人の男性が白い騎士を2人連れて歩いてきた。
「ようこそ。私はラッセル・グレイ。」
(こいつが…)
その瞬間、心と身体が怒りに震えた。それに反射してぐっと腕に力が入るのを、冷めた頭が抑える。
「面会させて頂き、ありがとうございます。」
「時間まで少しある。あちらで話でもしましょうか。」
そう案内された場所も灰色の寂しい場所だった。狭い室内に最低限の机と椅子。入り口脇に小さな来客用と思われるソファが置かれていた。
「ここは?」
「騎士達の待機室です。」
奥側に彼が座ったので、入り口側のソファに腰掛ける。
「レディーナの罪を取り消して頂けるとか。ありがとうございます。」
「えぇ、婚約者が罪人では、ね。私の立場もありますから。」
婚約者…言葉にされて改めて実感する。
もう彼女は他人のものだと。
「では何故、まだレディーナを釈放しないのですか?」
「少々手続きに手間取っていまして。まぁ、あの子と私の婚約披露までには何とかしますよ。」
あの子…まるで自分の所有物であるかの様な言い回しに、自分の独占欲が酷く傷付けられた。
「是非、いらして下さいね。」
「…えぇ。」
怒りを押し込めて、そう返事するので精一杯だった。
「あの子は最近、新聞を欲しがってね。特に君の記事は熱心に読んでいるよ。」
「そうですか。」
「今日のはちょっと泣いていたけどね。」
「…、そうですか。」
暫し雑談と言う名の苦痛の時間に耐える。
「殿下、そろそろお時間です。」
橙色の騎士に促され、奴が席を立つ。
「私は先に婚約者の元へ失礼させて貰うよ。君は後から彼に付いてくると良い。」
そう残して再び2人の白い騎士を引き連れ、部屋を出て行った。
時計の針が進むのが遅くて、もどかしく感じる。
残された部屋で自分はただ時計の針だけを眺めていた。