私の居場所
1話遡りまして、112話『石壁の塔』の直後になります。
レディーナ視点
「あの、私は何故…ここに?」
ダンさんに変わって対面に座った銀髪の彼に問う。ダンさんは彼の横に立った。
「君は罪を犯してここに居る。」
「罪?あの、なんの事か…。誤解では無いでしょうか?」
ラッセル・グレイ、様。グレイと付くなら王族の方。
失礼の無い様、窺いながら尋ねる。
「君の罪は…侮辱罪だ。」
「そんな…、人違いでは?私は、何も!」
「ルール違反では無いか、君はそう言ったそうだな?」
一瞬、何の事か分からなかった。言葉を3度頭の中で繰り返してようやく思い出す。
そう、あれはお兄様に…。
「私の優勝は、違反だと。君はそう侮辱した。」
「ちが、違います!」
そう、あれは…剣術大会の閉会式で。
そこまで思い出して分かった。思い出した。
「貴方は、あの時の…!」
「そう、アルバートと決勝戦で戦ったのは私だ。」
青ざめ、震える私に彼が冷たく笑う。
「ようやく、思い出してくれた様だね。」
「私、私、そんな…つもりじゃ…」
「そう、そんなつもりじゃ無かった?でも、残念。君の罪は確定している。」
まるで私の反応を楽しむかのように、彼が優雅に足を組む。
「そんな、そんな…」
泣いちゃダメ。泣いちゃダメなのに…
(あぁ、視界が歪む。)
「今日からこの塔が君の居場所だよ?」
「もうしわけ、ありませんでした。許して、下さい。」
「期間は無期限。」
「ごめん、なさい。どうか、どうか。」
「ここが今日から、君の部屋だ。」
「お願い…。帰り…たい。帰ら、せて。」
「ようこそ、幽閉の塔へ」
彼の言葉を最後に、私の意識は遠ざかってしまった。