石壁の塔
レディーナ視点
ダン・サイモンと名乗った橙色の髪の彼に連れられたのは王都の端にある高くそびえ立つ塔だった。
黒と灰と白色の石で出来たそれに、小さな窓が少しだけ付いているのが下からでも見て分かった。
中に入ると、ヒヤリと冷気が肌を撫でた。
日中でも窓から入る光は僅かで薄暗く、ダンさんが先頭で灯す明りで何とか足元が見えた。
左程段差の大きくない螺旋階段を登って暫く、ようやく着いたその場所にある扉の中に案内された。
50段までは数えたが、疲れて止めてしまった為、今何段目か分からない。
その先にも階段が続いていたので、頂上では無い事だけ分かった。
まずダンさんが入り、私の前の騎士も入室する。
後ろの騎士に押され私も入室し、付いてきた後ろの2人が入室した所で、バタンッと扉が閉まった。
「そこに座れ。」
ダンさんが奥の椅子に座り、テーブルを挟んだ対面を顎で示す。
おずおずと座ると、私の後ろに2人の騎士が立った。
もう一人は入り口で通せんぼする様に立っている。
「あの、私は一体、何故…」
「暫し、待つように。」
隠しているのか、何も思っていないのか、対面する瞳には何の感情も映っていなかった。
狭いここには、今座っている椅子とテーブルの他には何もない。
壁も相変わらず石壁で、温かみもまるで無かった。
まるで、牢獄の様だ。と見た事も無いのに思った。
階段を登った為にかいた汗が冷えて、寒い。
足元も勿論石だ。そこからの冷気で足元も冷えた。
温かい紅茶が飲みたかった。
どれ位そうしていたのか、息苦しい程重く静寂した室内にトントンと、扉をノックする音が響いて顔を上げ、扉へ視線を向ける。
入り口に立っている騎士が扉を開いて、頭を下げると一人の男性が入室してきた。
細身の身体、身長はアルバート位か、鋭い目元の…銀髪の男性。
(見た事…あるような)
入ってきた男性が冷たい笑顔を顔に張り付けて言った。
「ようこそ、レディーナ。私はラッセル・グレイ。」