晴れやかな空
ディー視点
「あのぉ、わたしはどうしたら…」
「もう少々お待ちください。」
申し訳ありません、と出迎えてくれた執事さんと思われる彼が頭を下げると、側で控えている女性に目配せした。
服装からしてメイドさんだろうか。
彼女が頭を下げると階段を登り、先程ロビンが入った部屋に向かい、扉を叩いている。
暫く待つ間、行儀が悪いかな?と思いつつ、家の中を見回す。
(わぁ、金持ちっぽい!)
キラキラと太陽の光を受けて輝くシャンデリアが、とても綺麗だった。足元にはテレビで見る様なふかふかの赤絨毯が敷かれ、至る所に高価そうな陶器や絵が飾られている。
バタンと再び大きな音がしてびっくりした。
階段へ目をやれば先程より身なりを整えた驚き顔のロビンが階段の踊り場に立っていた。
タタタタッと足早に階段を一段飛ばしで降り、目の前で止まる。
「ど、どうしたんだよっ」
「あ、うん。話があって…ロビン、様?」
そう言うと嫌そうに顔を歪めてペシンッと頭を叩かれた。
「庭に、居るから…」
「うわぁっ」
ぐぃっと手首を掴まれ、引かれて廊下をぐいぐいと進む。
「どうぞ、ごゆっくり。」
先程の言葉は執事にだったらしい。彼が頭を下げると「うるさいっ」とロビンが吠えた。
「うっはー、庭にプールなんて、生で初めて見たよ」
デデーンと広がる青い芝生にこれまた、デデーンと広くて青いプールがあった。聞けばその向こうに広がる森もロビンの家の物だと言う。
(ゲームでは描写が無かったから知らなかったなぁ。)
「おぼっちゃま、だったんだ。」
ロビンの顔を窺うとふいっと顔を反らされた。
手首を掴まれたまま、大きな木の下にあるベンチへ誘導される。座ると何人かのメイドさんがテーブルとお茶菓子を運んで来た。ロビンがわたしの隣に座る。
「なに飲む?紅茶?珈琲?」
「白湯」
「は?」
「うそ。珈琲。」
ぶつぶつ言いながらロビンがメイドさんに指示すると珈琲の良い匂いがした。
「砂糖とミルクは?」
「いらない。」
「え?まじで?ブラック?」
「うん。ロビンは?」
「お、俺もぶらっく」
メイドさんがくすくす笑いながら畏まりました。と珈琲を二つ用意してくれた。
「ふふ。」
「な、なんだよ。」
珈琲を飲んだロビンがげぇって顔をしたので思わず笑ってしまう。
「で、話って?」
「うん。あのね、まぁ。色々、結構、心配掛けちゃったかなぁ…って。ごめんね。」
「心配なんかしてない。」
「そっか。」
「…少し、だけ。ほんのすこーーしだけ、した。」
「うん。ありがとね。」
ずっと何か胸につかえていたいた物が、笑顔でお礼を言えたらスッキリした。
もう、お前は何なんだよー。とロビンが頭をテーブルに突っ伏したので、ばかね。って笑ってやった。
そしたらロビンが、うぅーって唸った。
(何だか、面白い。)
「アレ、持ってきて。」
ロビンが近くのメイドさんに指示して持ってきて貰ったのは、トロフィーだった。
「なに、これ?」
テーブルに置かれた金色のトロフィーをまじまじと眺める。
「優勝トロフィー。お前に、やる。」
「優勝って?」
「は?剣術大会で、俺、優勝したじゃん。」
「え?そうだったの?ごめん。見て無かった。」
「はぁーーー!?」
見れば確かに、中央の台座に『第1回 剣術大会優勝』の文字と、ロビンの名前が共に書いてあった。
「見て無かったって、どういう事?」
「え?ごめん。アルバート様に夢中で。」
がーんっと、正にそんな表情でロビンが固まった。
「もういい。取り敢えず、ソレ。お前にやるから。」
「え?折角なのに、悪いよ。」
「良い。やる。それより、分かったろ?俺、結構強いんだ。」
「う、うん…。」
(確かに優勝したなら強いのだろう。で?)
「俺、もっと、もっと強くなるから。」
「う、うん…。」
「頼れる位、強く、なるから。だから…。」
「う、うん…。」
「もし何か困った事があったら、言えよ。」
「へ?」
「お、俺が、必ず、守ってやるから。」
「…、え、別に要らない。」
「は?」
「だって、わたしも強くなるつもりだし。」
「は?」
「誰にも頼らず、自分の力で生きるの。憧れてたんだ、キャリアウーマン」
「はぁーーーっっ!?」
晴れやかな空にロビンの抜ける様な大声が吸い込まれていった。
短いですが、これにて第四章終了となり、次話より最終章となります。
毎日21時更新予定です。
最後までお付き合い頂けると嬉しいです。