プロローグ
ファンタジーです。
勉強不足の為、至らない点多々あるかと思いますが、広い心でお読みいただけるとありがたいです。
よろしくお願いいたします。
「今夜はついにフォンダン様演出の演劇鑑賞の日ですわ。楽しみですね!レディーナ様」
「えぇ!お誘いを受けてくれてありがとう、マリアさん」
次の授業がある教室へと続く階段を降りながら、友人であるマリアと共に楽しげに話す少女、レディーナ・バレンティンは、ご機嫌であった。
次の授業が…では無く、今日の放課後観られる予定の演劇がずっと楽しみにしていた物だからである。
踊る胸に合わせて少し早く、そして弾むように階段を降りている途中
「きゃっ!」
足早に前方不注意気味で駆け降りていたからか、下の階から上がってくる小さな体に気付かず一人の女性とぶつかってしまった。
「あら!失礼いたしまし…っ!?」
取り繕う様にスカートの裾を持ち上げ謝罪と共に優雅に頭を垂れた後、顔を上げ相手の顔を伺った時、レディーナの頭の中に落雷が走る様にある映像が一瞬にして駆け巡った。
「大丈夫ですか…?」
目の前の少女が心配気にレディーナの顔を覗き込む。
つぶらで大きく美しいエメラルドグリーンの瞳は吸い込まれそうな程澄んで、雪の様に白く透明感のある肌に淡い花の様な頬、対照的に真っ赤で少しほっこりとした唇の少女。
肩まであるストレートの黒髪は暗い印象ではなく、美しく流れて日の光を受け輝いている。
なんて可愛い人だろう…と、何処か的外れな、現実逃避にも似た感想を抱いたレディーナは次に出すべき言葉を、取るべき態度を知っている。いや、今知った。
今起こった頭の中での出来事に混乱しながら、今知った言葉と態度を取るべく、レディーナは丸めていた背をスッと伸ばすと高飛車に、射抜く様に鋭く相手を睨んだ。
「…以後、気を付けて頂けるかしら?」
それを見て目の前の少女は委縮し小さな体を更に小さくして俯いた。
「…すいませんでした。」
可愛らしく澄んだ声は小さく謝罪の言葉を紡いだ。
「行きましょ、マリアさん。次の授業に遅れてしまいますわ」
少女を見る事なく、つんっと顔を上げて階段の先へ足を進めるレディーナ。
慌ててマリアが後を追いかけた。
レディーナのご機嫌はこの時、この瞬間終わりを告げた。