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はじまり

————キーンコーンカーンコーン


授業開始を知らせる鐘の音が遠くから聞こえる。


私の名前は、鳴海由奈。

魔法戦術学園に通う、16歳の平凡以下の才能の魔法使い。

鳴海家は代々魔力が強く、この国では有名な名家だが、私は幼い頃から魔力が弱く、周りからは出来損ないと言われて育ってきた。そんな私を両親は決して責めたりしなかったが、周りからのプレッシャーはやはり大きかった。


私が10歳の頃、この国に魔物と呼ばれる怪物が突如街に現れた。力のある魔法使いは魔物を倒す為に戦ったが誰一人として魔物に敵うものは居なかった。そして魔物に支配されそうになったこの国を魔法の力で救ったのが私の両親だ。今やこの国の英雄となっているが、魔物を封印する際に魔力を使い果たし魔物と一緒に消え去ってしまい、既にこの世界には居ない。

亡くなってしまったのか、別世界の時空へと移動したのか分からないが親の七光りすらない私には、消えてしまった両親が残した莫大な財産や魔法の書などはただの重荷にすぎない。

「早く両親のような立派な魔法使いになりなさい。」

「もっと頑張りなさい。」

「だからいつまで経っても出来損ないって言われるのよ。」

そんな言葉ばかり言われる日々に嫌気がさしてた私は現実逃避するべく、今こうして授業開始の鐘の音が鳴っているにも関わらず、屋上で横になって空を眺めている。


「今日はいい天気だなぁー。絶好のお昼寝日和だよね!」

大きな欠伸を一つして、目を瞑る。

こうしていると全てのしがらみから解放されて自然と一体化したようで心地よい。

気温も良く小鳥達の鳴き声も子守唄のようで私はあっという間に眠りに落ちていた。



〈ユナ、、〉

心地よい眠りの中、地鳴りのような低い声で誰かが私を呼ぶ声が聞こえる。

〈ユナ、、オマエハ、、、、、ダ〉


「ーーえ?」


肝心なところが聞き取れない。

何度も聞き返してみても、その声は遠ざかるばかり。

「待って!あなたは一体誰なの?」


〈イズレ、、マタ、、〉


「待っーーー!」

目が覚めるとそこは先程眠りついた屋上だった。

どのくらい眠っていたのか、真っ青だった空も今はオレンジ色に染まっている。


「そろそろ帰らなきゃ。」

制服についた砂を軽く払い、鞄を取りに教室へ向かう。放課後の校舎は静かだが、静か過ぎて少し気味が悪い。魔物でも出たらどうしようなんて思いながら歩いていると、「おい、由奈!」と背後から怒鳴り声が聞こえた。

振り返るとそこには般若の如く怒り狂う、幼馴染みの神崎真斗がいた。ある意味魔物よりタチが悪いかもしれない。

「真斗じゃん、どうしたの?」

授業をサボった事を怒っているのは分かりきっているので出来るだけ平然を装って答えてみる。

「どうしたの?じゃねぇよ‼︎お前どうして毎回授業サボるんだよ!今まで何処にいたんだ!心配したんだからな!」

やっぱりな、と心の中で思うが下手な事を言うと余計面倒な事になるのが分かっているから、お説教が終わるまでは敢えて黙っておく。


真斗は私と違って名家ではないものの、幼い頃から魔法使いの才能もあって成績も優秀。いつも赤点の私とは大違いだ。

そんな真斗と私が出会ったのはまだ私達が5歳くらいの頃。私が魔法のレッスンに耐えられなくなって家を飛び出し公園のブランコに座って泣いていたところ、たまたま公園に遊びに来ていた真斗が私を慰めてくれたのがきっかけだ。

それから私がどんなに辛い時でも真斗はいつでも私の側にいてくれた。真斗が居なかったら今の私はなかったかもしれないってくらい、真斗には感謝している。本人にはこんな事、口が裂けても言わないけれど。

「全く、、。まぁいい。帰るぞ。」

今日の授業の内容はこうだったとか、明日は小テストがあるぞとか、そんなたわいもない会話をしながら、二人並んで帰り道を歩く。

「そういえば今日ね、不思議な夢を見たんだ。地鳴りみたいな声が私の名前を呼ぶの。頭の中まで響く声でね、声を聞くと頭が痛むのだけれど、何故だか話聞かなきゃ!って思って追いかけた。でも肝心なところが全然聞き取れなくて、、」と今日見た不思議な夢について真斗に話す。

「ま、所詮は夢だろ。あんまり気にすんな!それよりも、お前は明日の小テストの事を考えた方がいいぞ。今日俺の家寄っていけ。今回割と範囲が広いからな。そういえば翔太もお前に会いたがってたぞ。」

「翔太くん最近会ってなかったもんねー!勉強は嫌だけど翔太くんに会えるの楽しみだな。」

翔太くんは真斗の弟でしっかり者の真斗とは違って気の弱いところもあるけれど魔法の力も真斗と同じく強くて、私が季節外れにお花畑が見たいなんて突拍子も無いことを言った時に魔法であたり一面を花畑にしてくれた事があったっけ。

そんな事を思い出しながら、私達は真斗の家へと向かった。


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