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7.戦いと成長2

「ギギィ……」


 転倒状態から起き上がったゴブリンが俺を睨みつけてくる。

 体当たりをスキル『ブロック』で防がれたことに、大層ご立腹のようだ。


 あらら、怖い顔しちゃって。

 そんな顔でなにをしようってんだか。


「グァギャアアア!!」


 飛び掛かってくるゴブリン。ただがむしゃらにしがみつくことだけを考えてるような行動だ。

 しがみついた後、どのような攻撃を仕掛けてくるのか多少興味はあるが、自分の体を差し出してまで知りたいことではない。


 芸がないなぁ。


 過程だけを見れば、体当たりとさほど変わらない。

 つまり俺のやることも変わらない。


「ブロック」


 ブロックのスキルを使い、藤娘の扇面を俺とゴブリンの間に置くようにして構える。

 相手が学習しないというのなら、学習するまで同じ最善策を繰り返すだけだ。


「ギャッ!!」


 ゴブリンが藤娘に阻まれて地面に転がる。

 少し前にも見た光景だ。

 ゴブリンの必死な表情が、あまりに滑稽で哀れに思えてくる。


 MP確認。



 【ステータス】

 MP:148 / 150  



 ん、今度はMPが減ってないな。

 自然回復したとしても、こんな短時間じゃ1がいいところだよな。

 ってことは、ブロックのMP消費量が変わったと考えるべきか。

 

 防御に余裕があるという経験から、俺が無意識にスキルの強度を弱めたか。

 あるいは、単純にゴブリンの2度目の攻撃が弱かっただけか。

 まっ、ここら辺だろうな。


 そんなことを考えながらゴブリンが起き上がるのを待っていると、新たなゴブリンが視界に入ってくる。

 左前方から2匹、右前方から1匹。仲間の悲鳴を聞いて集まってきたのかもしれない。


 全部で4匹か!

 盛り上がってきたぞ!!

 いいねいいねー。

 っと、こうもしてられんな。


 4匹相手に大人しく防御に徹するつもりはない。

 実験主体から、戦闘モードに頭を切り替える。

 最初の獲物は正面の1匹。2度の体当たりによる自滅で足元もおぼつかないゴブリンだ。


 開いた藤娘の要を親指で支えるように真っ直ぐと平手で持ち、踏み込む足と一緒に突き上げる。


「ふっ!!」 


 藤娘の先に仕込まれた刃により、ゴブリンの首はあっさりと体から離れた。


 んー、いくらなんでも脆すぎないか?

 それとも藤娘の斬れ味がやばいのかね。


 試しに、胴体だけになったゴブリンの体に素手で一撃を加えてみる。

 ぐしゃっと潰れるゴブリンの腕。

 骨までは砕けなかったが、本気で殴ればいけそうな気もする。


 こりゃあ両方だな。

 藤娘も凄いが、こいつらの脆さも結構なもんだぞ。

 どこぞの料理人ごっことかが捗りそうだな。

 

「「ギギャア!」」


 左手方向から2匹のゴブリンが僅かに距離をあけて走ってくる。

 双方、止まることなど考えずにそのまま突進してくるようだ。


 まーた、体当たりか。

 どんだけ好きなんだよ。

 スキル構成を見直すことを強く勧めるね。


 俺は1匹目のゴブリンの体当たりを2歩後ろに下がることで回避し、2匹目のゴブリンに対しては、直進方向に藤娘の先を置くようにして備える。

 進行方向上に無視できない障害物があるというのに、ゴブリンは走る速度を緩めることをしない。

 もう少し融通が利くと思っていたのだが、ゴブリンにはこのまま俺との距離を詰めればどうなるかということが理解できないらしい。


「ギャアア……ギギャッ……」


 藤娘に自ら体を貫かれ、悶え苦しむゴブリン。

 束の間、もう一体のゴブリンが俺の背後から、手を伸ばし襲い掛かってくる。

 それに合わせ、俺は正面で悶えるゴブリンの体から藤娘を引き抜くと同時に蹴飛ばし、後ろを振り返る。

 

「――パリング!!」


 藤娘をゴブリンの腕に添えるようにして、軌道を逸らすことだけに集中する。

 タイミング、角度は自己採点では満点だ。

 本来、受け流しは高度な技術である。素人が見よう見真似で、ほいほいできるようなものではないはずだが、そこはスキルがカバーしてくれるはず。


 ゴブリンの腕が藤娘に触れた。


 どうだ!! いけるか!?


 攻撃を受けた俺の手に残る確かな違和感。初めての感覚だが、パリングのスキルによるものだと俺は確信した。

 滑るようにしてゴブリンの攻撃が逸れる。


 ――なんだこの快感は!!

 気持ちいいいいいっ!!


 最低限の力で攻撃を無効化するという厨二性能、タイミングや角度の調整といったアクション性、なにより攻撃を逸らしたときのなんともいえない快感が忘れられない。

 これはとてもいいスキルだ。



 数分後。

 まだ戦闘は続いている。


「パリング! パリング! パリング!」


 俺は4匹のゴブリンをまとめて相手していた。

 長引かせるように戦っているので、次から次へとゴブリンは仲間を呼ぶように現れるが、新しくゴブリンが戦闘に参加するたび1体を殲滅するという手法で4匹を維持し続けている。

 おかげでスキルのこつも掴めてきた。今では体当たりのように軌道が読みにくい攻撃にも、パリングで楽々対応できるようになったほどだ。

 スキルに頼らない単純な回避行動とスキルによるブロックとパリング。これらをうまく組み合わせ、ゴブリン達の攻撃を全て無効化していく。

 スキルの使用でMPが減ってしまうため、最下級魔力回復薬を2本飲んだが、HPは1も減っていない。 


 やばっ、面白すぎる。

 戦闘の達人になった気分だぜ。

 相手が弱いだけってのはわかってますけどねー。

 このまま戦っていたい気持ちはあるが、最下級魔力回復薬は残り2本か。

 いくらくらいするのかわからんし、2本くらいは非常用にとっときたいところだな。

 十分コツもつかめたしスキルの練習はもういいか。


「ほっ、よっと」


 2匹のゴブリンをそれぞれ半分に切断する。


「もういっちょ!」


 2匹を巻き込むように横に一振り。

 先の2匹と同じような結末を与えてやった。

 

 

 戦闘ステータス確認。

 


 【ステータス】

 レベル:5

 HP:240 / 240

 MP:52 / 210 


 

 レベル5か。

 いい感じいい感じ。


 スキル確認。

 

 

 【スキル】

 【オリジナルスキル】

 ・コマンド:アイテム

 【修得スキル】3 / 5

 ・危険察知 Lv.3

 ・パリング Lv.9

 ・ブロック Lv.10

 


 おお!? 

 めっちゃ上がってるな。どういう仕様だこれ。

 後半とかパリングばっか使ってたのにブロックのがレベル高いぞ。

 使用回数や、倒した敵のレベルや数がスキルレベルアップの条件ではないってことか。

 どれだけ使いこなせるか、とかかな。


 今のところ考えられるのはそのくらいだ。

 一度も効果を実感できていない危険察知のレベルまで上がっているので、それも怪しいものだが。


 『危険察知』かー。

 よくわからんな。


 説明を見る限り、その名の通り危険を察知する能力が高まるスキルらしい。

 使用するタイプのスキルではなく、常時発動型のいわゆるパッシブスキルに分類されるスキルだ。


 なんだか第六感が発達しそうな面白そうなスキルだと思ったんだけどな。

 まあ、もう少し様子をみてみるか。

 スキルレベルが上がればなにか変わってくるかもしれないし。

 

 あとはあれだな。武器の耐久度も見ておくか。

 藤娘の耐久度。

 

 

 【装備品】

 武器:藤娘 (耐久度:100 / 100)



 すごいな。。

 さすがC級武器だ。

 こんなゴブリンくらいじゃ耐久度は減らないってか。

 

 ……よし、最後にゴブリンの死体を使って実験だ。


 リストクリスタルバンドで回収すれば骨0.1キログラムになってしまうゴブリンの死体を、リストクリスタルバンドを使わずに直接加工することで他に有効活用できないかという実験である。

 実験には料理という手法を用いることにしよう。


 だってゴブリン食べてみたいし……。


 インベントリからサバイバルダガーを実体化し、ゴブリンの死体からふとももを一部切り取る。

 血抜き処理はしていないが、そんなことはどうでもいい。

 俺の経験上、血抜き処理などしなくても、しっかりと焼けば健康上に問題は一切ない。

 味に変化はあるが、俺は野性味あふれる味も嫌いではないのだ。



 周辺から集めた木の枝を使い火をおこす。

 方法はスライムの時と同様だ。

 

 そこにサバイバルダガーで突き刺したゴブリンの肉を持っていくこと数分……。

 


 うん、焼けてるな。

 

 やや表面に緑が残っているが、最善を尽くした上での結果なら喜んで受け入れよう。

 緑色の肉など異世界っぽくて夢があるではないか。

 

「いっただきまーす」


 一口サイズに切ったゴブリンのもも肉を口へと放り込む。


 ……まずいな。

 熊肉から脂肪の旨みをとったらこんな味になりそうだ。

 だが、悪くはない。


 硬く、ぱさぱさとしており、独特なくさみがある。

 美味しいと思える要素はないが、それがいい。

 これぞ男のサバイバル料理。

 


 ……ふぅ、食った食ったー。 


 リストクリスタルバンドに収納しなくても、死体を加工できることはわかった。

 次は、その加工したものをリストクリスタルバンドに収納できるかを試すだけだ。

 もしこれができるなら、リストクリスタルバンドを使わずに、自分でモンスターを解体したほうが遥かに素材回収率が高いことになる。


 俺は焼いたゴブリンの肉を手に収納を念じる。


 …………。

 駄目か。

 

 モンスターの死体は加工してしまうと、インベントリに収納できなくなるらしい。

 ということは、自力で毛皮を剥いだりしても、使い道はほぼないだろう。

 インベントリに収納できないという性質はアトフでは致命的だ。


 まあ、俺としては食べられただけで大満足だがな。


 残ったゴブリンの死体からリストクリスタルバンドで素材を収集し、俺はラフォリスへと戻った。


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