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24.エピローグ

 ルベルクとの決闘後、いくつもの変化があった。



 変化その1、アクセサリーの取得。

 勝利すれば『ルベルクの所持しているアイテムの中から好きなものを貰える』という条件により、A級アクセサリー『雨の宝玉』をルベルクから貰った。

 俺としては、こちらが賭けたものが『ディズとフレンド登録する権利』とかいう意味不明なものだったので、回復薬をいくつかわけてくれるだけでいいと遠慮したのだが、ルベルクは『ディズとのフレンド登録にはそれだけの価値がある』と勝手にアイテムの所有権を放棄して置いていったのだ。

 

 なんというか最後までディズ一筋な奴だったな……。

 悪い奴じゃないんだけどね、うん。


 決闘に対するコメントも『良き戦いだった、ありがとう』と一言だけ。正直、一周回ってかっこよかった。

 ルベルクはしばらくの間ラフォリスにいるらしいので、もしかするとまた決闘を挑まれることもあるかもしれない。具体的な期間は言っていなかったが、『しばらくの間=ディズがいる間』だと俺は予想している。

 ちなみに、雨の宝玉は俺的に微妙なアイテムだったので、売って金にでもしようかと密かに計画中だったり。

 

 

 変化その2、臨時収入。

 俺は決闘において自分の勝利に金貨1000枚を賭けていた。

 驚くべきこと……ではないかもしれないが、俺に賭ける酔狂などそういるはずもなく、配当はかなりのものだった。

 それこそ、A級装備の一式くらい期待できそうな額だ。なので近いうち、装備とコマンド用のアイテムを更新したいと考えている。

 ラッチにはあれから会っていないが、きっと今頃俺と同じような心境でいることだろう。



 変化その3、ブーム。

 これは俺のことではないのだが、現在ラフォリスでは自爆玉が爆売れ状態らしい。

 そこら中の店に山積みされるように置いてあった自爆玉が、今では一つも見当たらない。

 俺はラフォリスの将来が若干心配になってしまった。



 そして変化その4……


「サ、サインお願いします!!」


 ――ラフォリスでの評判。

 これが一番大きい。


「すまんな、サインは書かないことにしている」


 一度言ってみたかったこの台詞。

 今では繰り返し過ぎて飽きてきたくらいだ。


「はぅ……クールで素敵……」


 ああ……。

 また一人、いたいけな少女の心を奪ってしまったか……。


「――顔がにやけてるわよ?」


「おっといかん、せっかくのクールガイが台無しになるところだった。ありがとうディズ」


「ありがとうじゃないわよ……」


 俺の隣を歩くディズがいつもながら溜息をつく。


 色々と用事を済ませ、俺達は例のカフェに向かっている最中だ。

 夕焼けの空が俺達の進む道を暖かく照らしている。



「……それにしてもさっきの戦いは本当にびっくりしたわ」


「またその話か」


 決闘が終わって時間もそんなに経っていないというのに、3、4回は聞いた気がする。


「それほどだったってことよ。自爆玉の件はまあいいとして、金貨で攻撃を防ぐなんて聞いたことないもの」


「一か八かだったけどな。ルベルクが勝利を確信してもバリアを解除しなければ、負けてたのは俺だ」


「私が1日じっくり考えてもまったくみえなかった勝機が、陸にはたった数分でみえたんだもの。それだけで凄いわよ」


 悔しそうに、しかしそれ以上にどこか誇らしそうに語るディズ。

 さっきからずっとこんな調子だ。

 こちらとしてはドヤ顔で誇りまくってやる予定だったのに、そんな気もすっかり失せてしまった。


「ってか、1日じっくり考えてくれてたことの方がびっくりだな」


「何言ってるのよ、そんなの当たり前でしょ? 勝てないとは言ったけど、負けないで欲しいとは思ってたわよ。だからあんなに止めたんじゃない」


「それもそうか」


 今思えば、ディズには初めて会った時から迷惑をかけっぱなしだ。


 ――いや、でも最初に迷惑をかけられたのは俺か?

 突然、相席してきたと思ったら、喧嘩に巻き込まれたからな。

 あの時は本当にどうしようかと思ったもんだ……


 そんなことを考えていると、ディズが駆け足で2歩、3歩と進み、俺の前へと出てくる。

 なにやら緊張した様子で、俺を見るディズ。



「……陸? ……今日は――」

「すいません!! サイン下さい!!」


 ディズが何かを言いかけたところで、可愛らしい少女からまたもやサインを求められる。

 人気者は辛い。


「悪い、サインは書かないことにしてるんだ」

「……そうですか。失礼しました……」


 しょぼくれて去っていく少女の姿に心が痛くなる。

 俺はなんて罪な男なのだろうか。


「――で、どうしたディズ」


「はぁ……もういいわよ……」


「なんだ妬いてるのか?」


「んなわけないでしょ! 大体ね、私だってサインくらい、しょっちゅう――」

「す、すいません……」


 まるで見計らったようなタイミングで、一人の男がディズの前に現れる。

 体つきはガッチリしているわりに内気そうな男性だ。


 『ほらみなさい』とでもいわんばかりに、ディズが勝ち誇った顔で俺を見る。

 ディズがちょこちょこサインを頼まれていることなど、俺も知っているというのに今更である。



「サインかしら? ごめんなさい、私サインは――」

「罵ってください!!」




~~~~~~



【リンククリスタル】

【その他雑談】

 フィールド:【ラフォリスの街】

 チャンネル:32

  5:初狩り狩りのデッドイーターさんマジぱねぇっす

  3:無理にでも見に行ってよかったわ

 21:あの試合展開はさすがに予想できなかったな

 23:デッドイーターさん空飛んでたしな

  9:自爆玉の正しい使い方を知りました

 27:でも初狩りのルベルクも強かったけよな

  5:ファイアフィラメントだっけ

 27:うむ

  3:それが20越えてるんだよな

 23:あれはなー

 30:お前ら今すぐルミ領に繋げてみろ!!

  5:どうした

  3:めんど

 27:ちょい繋げてくる

 30:まじやばいぞ

  5:なにがあったかだけ教えてくれ

 30:ハリムの奴が死んだ

  5:は?

  3:ハリムってトップランカーのだよな?

  5:どういうこと?

 30:死んだんだって、だから

  3:トッププレイヤーの一人だよな

 23:モンスターにやられたってこと?

 30:いや、本当に死んだらしい

   しかも自殺や寿命でもないとか――



~~~~~~


 

 約12年前、肉体、脳、神経、あらゆる人体の秘密が解明され、科学はヒトの身体をコンピュータ内で表現することに成功した。

 人工知能の開発、身体的障害に対する画期的なリハビリテーションを始めとする医療技術の飛躍的進歩、様々な分野で人の電子化技術は活躍をみせた。

 それから2年、人々は仮想世界において人が住むことを目的とした世界を生み出す。実在する生身の人を電子化し、仮想世界で安寧の生活を送るという過去にない電子世界への移住サービスの始まりだった。


 仮想世界への移住サービスの名を『Another tale of fantasy』。

 仮想世界の名は『アトフ』という。



 これはそんな広く小さな電子世界で俺が頑張る物語。


1章終了です。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。

2章も読んでいただければ幸いです。


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