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22.そして戦場へ -移住生活15日目-

【リンククリスタル】

【その他雑談】

 フィールド:【ラフォリスの街】

 チャンネル:32

  3:お前ら今日の決闘見に行くの?

  5:当然だろ

  8:初狩りとデッドイーター戦とか熱すぎる

  9:初狩りさんはラフォリスの闇に手を出してしまったのだ

  2:結局、陸ってのがデッドイーターなのは間違いないのか?

  3:絶対とは言い切れないんじゃないか

  5:初狩りさんが着物姿の男に決闘申し込んでるの見た奴がいるらしいしな

  2:でもそいつが嘘ついてるって可能性もあるだろ

  9:初狩りさんの戦いだけでも見る価値あるし見に行きゃわかんだろ

  5:確かに

  3:よし俺も行くか

   本当は予定があったんだがな

 11:ってかこの中で初狩りさんが戦ってるの見たことある奴いるの?

  8:いないんじゃね

   初狩りさんラフォリスに来たことなんてないじゃん

  3:20持ちなんて滅多にこないからな

   二人も同時にいる現状が奇跡

  5:まあ初狩りさんは紅炎のディズベールにぞっこんらしいからな

  9:紅炎のディズベールはデッドイーターが美味しくいただきました

  5:最近紅炎のとデッドイーターが一緒にって目撃情報が本当多いよな

   俺も一度見てみたいわ

  3:毎朝9時にフォレストガーデンで一緒に飯食ってるらしいじゃん

  5:どこだそれ

  3:南西の方にある木っぽいカフェ

  8:あそこか今度覗いてくる

  9:その後8を見た者はいない……

  3:ひぇ

  2:それにしてもデッドイーターの実力がついに明かされるんだよな

  5:ぶっちゃけ無理そうだけどな

   20持ちってわけでもないし

  8:紅炎のディズベールと一緒にいるってだけで只者じゃないけどな

  3:紅炎のは有名どころの固定パーティーからの誘い全部蹴ったって話だよな

  8:そそ、一時的にパーティーを組むことは普通にあるらしいけど

   固定だけは絶対組まないんだと

  2:あきらかに今は固定組んでるけどなあれ

  9:紅炎のディズベールといえども一人のメスだったってことだ 

  5:そろそろ落ちる

   また夜に話そうぜ

  3:おつ

  8:まだ時間には早いよな

   俺はもうちょいいようかな

  2:それなら――

 


~~~~~~



 いよいよルベルクと決闘の日がきた。

 現在の時刻は14時。約束の時間まであと2時間。

 体調は万全、身嗜み完璧、忘れ物確認よし。

 何か問題を挙げるとするなら、早く準備しすぎて手持ち無沙汰になってしまったことくらいか。

 

 俺は今305号室(わがや)にいる。

 今日はディズのモーニングコールでたたき起こされることもなかったため、宿屋『祝福』内でゆっくりしていた。

 モーニングコールがなかったのは、しっかり休めというディズの心遣いなのだろうが、こんなに時間を持て余すなら、俺から連絡してでも朝食を一緒した方がよかったと今では後悔している。

 

 ちょっと早いが出発するか?

 家にいてもすることないし。

 コロシアム付近で暇を潰せそうなものでも探せばいいよな。


 ってことで、出発しゅっぱ……つ?

 

「お、ようやく出てき――」


 バタン、と開けたドアをそのまま閉める。


 冷静になれ、俺。

 なんでこいつがここにいる?

 こいつがここで、ここがこいつで、いやもう意味わからん。

 どうなってるんだ。


 一瞬見ただけでわかった。

 ドアの向こう側にいたのはラッチとかいう女に違いない。

 草原で出会った3人組の一人で、パリングを使える俺を特種情報として売り飛ばそうとした人でなしだ。

 見た目が魔女を演じる可愛い女の子というだけに、当時ギャップによるショックが半端なかった。


「おい、くそがっ!! 開けやがれ!」


 叩かれるドア。

 迫り来る恐怖。

 いつからこの物語はホラーになってしまったのだろうか。

 幼馴染が現れて『来ちゃった……』という展開なら俺も大歓迎だったのだが。


「ごめんなさい、今留守にしてます。一昨日来てくれませんか」


「はあ!? 意味わかんねえよ!! いいから開けろよ!! おい!」


 数多くの新聞勧誘を撃退してきた俺の決まり文句も通じる気配はない。

 それどころかドアへの攻撃速度が早まった気がする。


 くそ、なんて近所迷惑な奴なんだ……。

 俺には時間制限もあるし圧倒的に不利じゃないか。


「……わかったわかった、今開けるから落ち着け」


「ったく、始めからそうすりゃいんだよ」


 俺のクリスタルバンドに反応し、ドアが開錠される。

 ゆっくりとドアを開き、俺はラッチと対面することとなった。


 束の間の沈黙。


「……んじゃ、入らせてもらうぞ」

「なんでだよ!」


 当然のように305号室(わがや)上がり込もうとするラッチを制止する。

 進入を許せばどうなるかわかったものではない。ここは死守だ。


「まず一つ聞かせてくれ。なんで俺の居所を知ってる?」


「ん? ……あー、あれだあれ、そう、直接見たんだよ、祝福ここに入ってくのをな」


 うんうんとラッチが満足げに頷く。

 俺としてはまったく納得できないが、これ以上聞いても無駄だということはわかった。

 名前も教えてないし、俺が着物を着ていることさえ知らないはずなのに、よく探し当てたものだ。


「……で、今度こそ俺を売り飛ばそうってか」


「おいおい、人聞きの悪いこと言うなよ。わざわざ励ましに来てやったんだぜ? 決闘前で緊張してるんじゃないかってな」


 決闘のことをラッチが知っていることに疑問はないが、励ましに来たというのはまずありえない。理由がない。ついでに胸も。


「本音は?」


「勝てる見込みがどのくらいあるか教えろ」


 正直でよろしい。

 

 ラッチの口振りからすると、どうやら決闘の勝敗で賭けが行われているようだ。

 大方、当事者の俺から話を聞けば有利に事を運べるとでも考えたのだろう。

 まったくもってけしからん。


「よし、どこで賭けに参加できるか教えてくれ。話はそれからだ」


 けしからんので俺はラッチに案内してもらうことにした。




 


 時刻は15時45分。 

 途中寄り道をしたが、約束の時間までにコロシアムへと到着した。 


 時間に余裕はないが、寄り道をした甲斐はあったといえる。



 【素材・その他】

 ・証明書類:302年6月24日16時に行われる『ルベルク』『陸』両名の決闘において、『陸』への勝利に金貨1000枚を賭けたことを証明する。

 質:F【級】  重さ:0.001【kg】  耐久度:100 / 100  分類:その他

 製作者:エマ

 

 

 ラッチを通すことで自分自身への勝利に賭けることはできた。

 終始監視するなど気苦労は絶えなかったが、こうしてアイテムが手元にあるのだから、俺は一つの戦いに勝利したといえるのではないか。

 あとは勝利してこれをディズに換金してもらうだけでいい。

 そうすれば、欲しかったあんなものやこんなものが買い放題だ。


 ふふふ、新しい爪切りがいっぱい買えちゃうぞ。

 

 俺は上機嫌でコロシアムの門を潜り、先へと進んでいく。

 


「……めっちゃ混んでるな」 


 薄暗い石造りの通路を抜けた先で見た光景に、思わずそう声に出してしまう。一気に現実に引き戻された気分だ。

 受付の順番を待つ長蛇の列。酒や食料を販売する商人。謎のパンフレット片手に観客席入り口へと向かう老若男女。

 ただの決闘、それも昨日の朝告知を出したばかりだというのに、よくこれだけの人が集まったものだ。


 軽く見渡すと石柱に寄りかかるようにしているディズの姿がすぐに見つかった。

 本人はまったく気にしていないようだが、周囲の視線がディズに収束しているので遠くから見ると一目瞭然である。

 容姿、右手の刻印、知名度、これらの要素が合わさり視線を集めやすいのだろう。


「あ、陸! ようやく来たわね!」


 ディズも俺の姿に気付いたようで、こちらに駆け寄ってくる。


 と、同時に不吉もやってくる――


「……おい、『陸』って言わなかったか?」

「え、陸?」

「挑戦者の?」

「ほら、パンフレットにも……」


 広間に伝わっていく不穏な空気。

 これはまずいパターンだ。

 ディズは察していないようだが、俺にはカクテルパーティー効果でわかる。


「ディズ、選手用の控え室がどこにあるか知ってるか?」


「え? そこの通路を通って行けば――きゃっ!? ど、どうしたのよ!?」


 ディズの手を引っ張り俺は走り出す。

 

 どうせ決闘の時に全員に見られるのは承知だ。

 それでも簡単には割り切れない。

 それはそれ、これはこれ、だ。




「はぁ……はぁ……まったく急にどうしたのよ」


「いや、すまん。突然走りたくなったんだ」


 人目がなくなるまででよかったというのに、結局控え室前まで走ってきてしまった。


「はいはい、もうそれでいいわよ」


 俺の戯言に半ば諦め気味に返すディズ。

 この短期間で随分と俺への対応も慣れたものだ。


「――それより調子はどう? 大丈夫?」


「ん、問題ない」


「そう、ならよかった。…………頑張りなさいよ?」


「誰かさんの話では俺は絶対勝てないらしいけどな」


「勝ち負けなんて問題じゃないわよ。応援はしてあげるから精一杯やりなさい」


 俺の背中をぱしんと叩くディズの白い歯がこぼれる。


「おう」


 短く返事をして、俺は控え室の扉を押し開いた。


「……じゃあ行ってくるかな。観客席で見守っててくれ」


「ええ、行ってらっしゃい」


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