【第三話】僕、恋しちゃってました♥
屋上を後にした優太は、教室に戻り自分の席に着くと、京介の机を眺めながら考え込んでいた。
僕、何であんな事言っちゃったんだろう。
初めはただ、友達になりたいって思っただけなのに。
でも「好き」って口にしてみると、しっくりきたっていうか、初めからそうだったんじゃないかとも思うし。……僕、京介の事を好きになっちゃってたんだね。
「優太どうしたの?ボーっとするなんて、珍しくない?」
女の子にしては少し低めの元気な声が、優太の意識を現実に引き戻す。
それは同じクラスの『田中美咲』であった。
美咲はいつも元気で責任感のある、リーダータイプの女の子だ。
優太とは高校からの付き合いではあるが、三年間同じクラスだった事もあって、二人は仲が良かった
「ちょっとね〜。恋の悩みって言うか、そうじゃないって言うか〜。」
「ふ…ふ〜ん。てか、最近寺田にストーカーしてるけど、その恋の相手って寺田だったりして?」
「…………うん。」
「マジで!?優太ってそっちだったんだ!」
「違うもん。京介だからだもん。」
「んー。でも、寺田は難しいかもよ?」
そう言って、美咲は中学生時代の話を聞かせてくれたのである。
「寺田とは小・中同じでさ。私は直接、仲良かった
わけじゃないんだけどね。
まぁ、昔も明るいタイプではなかったけど普通に
喋ってたし、友達もいたんだよ。彼女もいたし」
「え?京介って彼女いたの?」
「いたんだけど、その彼女と寺田の友達がデキてた
らしくてさ。寺田に内緒で付き合ってたんだって
そんで、寺田は二人の浮気現場に直面したと。
もちろん彼女とも友達とも縁は切ったんだけど
それ以来、他の人とも距離を置いて今に至る
………やっば!じゃ〜ね優太。」
そそくさと逃げて行った美咲が最後に視線を移した方向を見ると、視線を下に落とした京介が立っていた。
だが先程の告白と美咲から聞いた話の事で、頭が一杯になっていた優太は、京介にかける言葉がなかなか出て来なかった。
結局その日は恥ずかしさと気まずさで、京介に声をかける事が出来ないのだった。
家に帰り着くなり、優太はベッドに飛び込んだ。
そして天井を見つめながら、学校であった事について考え出した。
美咲から聞いた話は、よく聞くような内容だったけど。実際に自分がされた時、僕は今までの僕でいられるのかな?
人間関係を完全にシャットアウトしないとしても
やつぱり人間不信にはなっちゃうよね?
それに京介が他の人よりも、すっごく繊細だったとしたら?
僕は京介に対して何をすればいいの?
どうする事が正解なのかなぁ……。
一日程度考えたくらいでは、解決策なんか出る筈もなかった。人の心というものは、そんなに簡単なものではないのだ。そもそも、解決策があるのかどうかさえもわからない。
それでも優太は必死に考えた。
しかし、やはり答えは出て来なかったのである。
出て来なかったけれど、何もしない事が最善策だとはどうしても思えなかった。
とりあえず、京介と話さない事には前に進まないよね?
翌日、優太は昼休みになると屋上へと急いだ。
屋上のドアに手を掛けて心を落ち着かせると、少し躊躇いながら扉を開けるのだった。
扉の先には、昨日と同じ体勢で京介が寝転んでいた。
優太は京介の横に座ると、暫く京介の顔を眺めた
そして深呼吸をしてから、静かに話しかけたのである。
「京介?起きてる?」
「・・・・・」
「昨日の事だけどね……」
「お前には関係ない。」
「うん。でもね、僕……えっと……京介に笑って欲し
いと思ったんだ。
今すぐじゃなくても昔みたいに……」
「昔みたいに何?
つか、人の過去調べて楽しい?」
「昔みたいに、京介に友達が出来たらいいな…と……
思って。」
「俺の気持ちも知らないヤツが軽々しくそんな…事…
………………死ね。」
京介はそう吐き捨てると、逃げるように屋上から立ち去って行った。
声を荒らげ、感情を剥き出しにした京介の姿を見るのは初めてだった。京介の新たな一面を見る事が出来たのに、優太は素直に喜べない。
それどころか、自分の軽率さが腹立たしくて涙が溢れて来たのである。
暫く泣くと、涙は自然と止まって行った。
止まったのに放心したまま、その場を動けずに座り込んでいた。
優太が少し落ち着いて、動き出せるようになったのは、授業が終わり皆が帰り始めた頃であった。
【第四話】へつづく




