第9話「再会」
飛行場を出てすぐに、リューヤと小夜子はある気配を感じていた。
「つけられてるな。」
小夜子が呟いた。
「知る人ぞ知るリューヤ・アルデベータ様ですもの、尾行者くらいいるでしょうね。」
ビルヘルミナがカラカウ調子で言った。
「ただの尾行者とは違う。」
「そうだな。」
「私が調べる。Bの3ルートで行って貰えるかしら。後から追いかけるわ。」
「どうする気?」
「何者か確かめる。場合によっては排除する。」
「排除する?この国にきて早々問題は起こして欲しくないわね。」
「捕まえてあなた方に引き渡すわ。」
「了解。」
ビルヘルミナが電話を取り出し、小夜子が別方向へ動こうとした瞬間、リューヤが声を上げた。
「待ってくれないか?この気配、覚えがある。恐らく・・・・知り合いだな。」
「知り合い?」
ビルヘルミナが声を上げ、小夜子がフッと笑う。
「こんな所にまでついて来る知り合い・・・・・ね。」
リューヤが振り返り、声を張り上げる。
「西城!コソコソしないで出て来いよ!」
サングラスをかけた巨漢が体を揺らしながら近づいて来る。小夜子が身構える。
「荒事はごめんだぜ。」
西城は巨体を揺らしながらそう言ってサングラスを外した。
「あんた、別の任務についていたんじゃないのか?」
リューヤが皮肉っぽく言った。
「それはもういい。俺一人で手に負える問題じゃなくなった。それに俺は面が割れて日本にいられなくなったしな。」
「どういう知り合いだ?」
小夜子が口を挟む。
「クライ王国のエージェントの一人さ。」
西城はにこやかに言った。
「自分でエージェントと言うようじゃ、極秘任務は無理だな。」
リューヤも笑顔の表情のまま言った。
「そういう事だ。名前の知れたエージェントの仕事なんざ、外交任務だけって事だよ。」
「あなたが西城 真治ね・・・・・」
ビルヘルミナが静かに言い、続けた。
「連絡は受けているわ。」
「どういう事だ?」
小夜子が油断の無い目付きのまま言った。
「リューヤぼっちゃんのお守りを日本のエージェントだけに任せる訳には行かないって事さ。」
西城はひょうひょうとしていたが、隙を見せない目で小夜子を見ていた。
「つまり、こういう事か?日本のエージェントだけでは信用出来ないので、リューヤの国籍のある国のエージェントが私同様、リューヤの見張りに付く。そして、それは、国家間レベルでの了承事項。」
小夜子はそう言って構えをといた。
「まあ、そういう事だ。よろしくな。おじょーさん方、リューヤ。」
西城は、自分が尾行していた悪ふざけに悪びれもせずそう言った。




