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第21話「小夜子の心」

小夜子がリューヤの病室に一人付きっきりでいた。考える事は山のようにあった。あの女が本当にリーン・サンドライトなのかどうか、もしそうなら、リューヤは何者なのか?考えても分らない事だらけだった。リューヤが巨大な力を持っているのは知っていたが、死んだ人間をまるっきり別の場所に復活させる・・・・・そんな力まであるとは想像していなかった。

 リーン・サンドライト本人だとするなら、リーンを構成する物質はどこから現れたのだろう?宙から急に物質が現れる。そんな事はありえない気がした。本来無いものがこの世界に現れたとするならば、その歪はどれ程ののものなのか?宇宙規模で見れば、地球上に電子の粒が一つだけ生まれたようなものなのだろうか?リーン・サンドライトの死体はあるのだろうか?このクライ王国では土葬が習慣である。調べる事は出来る。恐らく、この国の諜報機関がやっているだろう。結果が知りたかった。

 そして、今はともかくとしても、リューヤにリーン・サンドライトの復活を告げるかどうか?世界の運命に関わるとまで言われている者の恋人の復活、それが何の影響がないとは思えなかった。

「小夜子?」

 リューヤが目を覚ましていた。

「なんだ?」

「いや、目が覚めたから、いるかどうか確かめただけだ。」

 小夜子はフッと笑った。

「心配する必要は無い。私が死ぬか外されるか、お前が死ぬかまで、私はお前の警護と監視につく事に決まった事は言ったろ?」

 リューヤもフッと笑う。

「リーンがいなくなってから・・・・・・・」

 リューヤは小夜子と目を合わせない。

「俺は気弱になった・・・・・・目を瞑って開くと誰もいない世界に取り残されてしまう・・・・・・そんな夢を最近よく見る。」

「病院のベットについていれば、誰でもそんな感傷に捉われるさ。」

「かつて、リーンは死んだと聞かされていた。それでも俺はその事をそれ程考えもせず生きた。だが、リーンの生存を知ってリーンが死んだ後はその事ばかり考えていた。大きな何かを失った・・・・・・そんな喪失感がずっと付き纏っていた。」

「・・・・・・・・・・」

「俺は、この世界でこれ以上生きて何をするんだ・・・・・生きる意味もない・・・・・そう考えていた。」

「そうなのか?」

「だが、ザルマを倒し、アルネシアが壊滅していってる事を聞くと、俺にも出来る事があったんだと思える。」

 小夜子は壁を見詰めるリューヤの横顔を見詰めた。綺麗だと思った。

「リューヤ・・・・・お前は優し過ぎる・・・・・・この先、お前が本当に世界の命運を背負うと言うなら、この先、もっと嫌な物を見なければならなくなる。ザルマなどよりもっと老獪で、もっと醜悪な物も見なければならなくなる。その時は・・・・・・・・」

 私が支えよう・・・・・そう言いそうになった。自分がそんな事を考えていると、今初めて知った。

「その時は?」

「その時は・・・・・いや、その時はその時の話だ・・・・・・お前が何を選び、どう決断するのか・・・・・それを見定め、お前が敵になるなら私はお前を殺す。」

 殺す気などいつの頃からか消えていた。自分のかつての恋人を死なせてしまった事に苦しみ、臓器や角膜を奪われた子供の為に戦う決意をした。それを知った時から、自分はリューヤを殺せない。そうなってしまっていた。

「そうならない事を祈ってるよ。」

「私に殺されたくなかったら・・・・・・・油断だけはしない事だ・・・・・・」

 小夜子は自分の中に起こっている化学変化に気付き、その自分の甘さを呪いたくなった。

「俺が間違えたら殺してくれ・・・・・・・」

 リューヤはそう言って小夜子の方を向き、微笑した。




「そのあとで反キリストが地獄の王となります。さらに最後の信仰によってキリスト教のあらゆる王国が25年間にわたって震え、不信心な者たちも同様に震えます。そしてもっと悲しい戦争があって、町や都市、城やすべての建物が焼かれたり荒らされたり破壊されたりします。純潔な血が大量に流され、妻たちや未亡人たちは凌辱され、乳呑み児たちは町の壁において引き裂かれます。地獄の王サタンによってあまりにも多くの悪が成されるので、ほとんど全世界が破壊されて荒れ果てるでしょう。」

 注 「アンリ2世への書簡」より 出サイト:ノストラダムスサロン

仮題「シャングリラ」第2章 了

一週間後くらいから第3章UPします

それでは、それまで〜

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