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第20話「リーンの意思」

アレクシーナはかつてα研究所だった場所の一室に入った。

そこでは、ベットの上に西城が横たわっていた。

「これは、アレクシーナ様」

 西城が起き上がろうとするのをアレクシーナは手で制した。

「横のままでいい。少し長い話になるかもしれんしな。」

アレクシーナはベットの横にある椅子に腰掛けた。

「無茶をしたものだな・・・・・・・・」

「リューヤを守るのが俺の仕事ですからね。あの状況じゃ薬を使うしかありませんでした。もっとも役に立ちもしませんでしたがね。」

 西城はそう言って微笑んだ。

「能力者を人工的に作り出す薬・・・・・・リーンとの約束で研究は放棄したのだがな・・・・・・」

 念の為に持たせた薬だった。短期間でその能力を引き出す為、後遺症はかなり酷い。幻覚、幻聴の症状が出る。人為的に無理矢理そういう力を引き出す為か、一般にそういう症状に使われる薬の効きは弱く、ほとんど効かないと言ってよかった。西城にそういう説明はした。だからいざという時以外使うなと厳命しておいた。

 それでも持たせておいた事に間違いは無い。そういう時が来たと自分で判断したら迷わず飲めと言った。自分を酷い人間だと思う。どう言い訳をしても使う為に持たせたのだ。

「王女・・・・いや、女王、くだらん事で悩まんで下さい。自分で判断した事です。もし薬を使っていなかったら全滅していた事だって十分ありえたんです。幸い症状も想像していた程じゃない。」

 アレクシーナは微笑した。西城のこういう所に救われる。

「リーンの問題はどうなりました?」

「本物だな・・・・・DNAも記憶もリーン本人である事を示している。」

「そいつあー良かった。リューヤも喜ぶ。」

「いや、リューヤには教えないつもりだ。」

「そいつあ・・・・・・」

「幸いリューヤにはザルマを倒した記憶もリーンを呼び戻した記憶もない・・・・・・」

「やはり、リューヤが呼び戻したと?」

「はっきりした判断基準はないが、リーンもリューヤに呼ばれたと言っているし、詳細過ぎるF国の調書もそう言ってる。」

「やっかいごとを押し付けられましたな。」

「そういう事だ・・・・・・リーンもリューヤもサイジョーも我が国の人間だからな。筋は通る・・・・・しかし、通り過ぎる・・・・・一応機密扱いはするらしいが、責任はこっちに押し付ける形だ。」

「日本の対応はどうです?水無月は日本のエージェントですよ。」

「日本は少し、欲をかいてるようだな。サヨコをリューヤに貼り付けたままだ。機密扱いにする事には同意してるがな。」

「リューヤをリーンに会わせてやったらどうですか?」

「私も悩んだのだが・・・・・リーンにリューヤに会う意思がない・・・・・会う意思がないどころか、ハッキリとリューヤと会う事を拒絶している。」

「?どういう事です?」

「リーンはこの世の・・・いやあの世か・・・・・・とにかくリーンはこの世界の事を知ったのだ・・・・・少ないながらあの世の事を覚えている。今、リューヤに会う事はリューヤの為にも自分の為にもならないと言ってきかない。」

「そうですか・・・・・・」

「それを事実かどうか確認する方法は我々にはないが・・・・・・少なくともリーンは明らかに変わってしまった・・・・・・・・β能力も保持したままだが、「悪魔」の意思ではなく自分の意思で話す・・・・・・・想像に過ぎないが今のリーンはシエンに似ているのではないかと思える・・・・・・・」

「紫炎ですか・・・・・・・」

「サイジョー、お前が回復したらサトーと一緒にリーンに会ってみてはもらえないか?正直、私一人で全ての事を判断するのは難しい。」

「分りました。私が回復しきらなかった場合は陽子だけでも行かせます。」

「頼むぞ」

 アレクシーナはそう言って立ち上がった。そして部屋を出る時に、「一日でも早い回復を祈ってる。」と言って微笑んだ。 

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