第2話「力」
「なんの用だ?」
紫炎のいる講堂に入ったリューヤは開口一番そう言った。
「少しは元気になられましたか?」
紫炎は柔和な笑みを浮かべ優しく言った。
「そうだな・・・・・一時程落ち込んではいないよ。リーンが残してくれた命を大切に使わなけりゃならない・・・・・今はそう考えてる。」
「そうですか。ようやくあなたも、前を向けるようになったのですね・・・」
「そうでもないさ。」
リューヤは腕組をして静かに言った。
「正直に言えば、夜眠る前や一人でいる時、どうしようもない寂しさを感じる事がある・・・・・・愛する者の消えたこの世で生きていく価値があるのか?・・・・と考えて死にたくもなる事もある。」
「それでも、生きる覚悟はしているのですね?」
リューヤは試されるかのような質問にうんざりしたが、あれからここまで面倒を見てくれた紫炎の顔を立てて、正直に答える事にした。
「ああ、そのつもりだ。死ぬにしても、あんたやアレクシーナ様に恩を返してからだ・・・・・そう思ってるよ。」
「義理堅いのですね・・・・・」
紫炎は口元をスッと引いて薄い笑みを浮かべた。
「どうだろうな?正直、生きるのに何か目的が無ければ辛い・・・・・それだけの話さ。」
紫炎はリューヤの話を静かに聞き、一拍置いてから意を決したように口を開いた。
「お気付きでしょうが、今、この紫炎教本部は多くの機関に見張られています。」
「そのようだな。」
「その機関の目的にもお気付きですか?」
「いや・・・・あんたのβ能力や俺のα能力を狙ってる連中かと思っていたが、ハッキリとは分からないな。あんたは知ってるのか?」
蝋燭の揺らぎが、紫炎の顔に影を落とす。
「確かにそれもあるでしょうが、大半の機関は違う目的で見ています。あなたや私がリーン・サンドライトのように手に負えない危険な存在かどうか?手を組むべきかどうか?それを見極めているのです。もちろん、私達を殺す事もその選択肢に入っていますが・・・・・・・」
「見張っている?」
「そうです。大きな力を持った者は味方でなければ敵ですから、その興味は大変なものでしょう。特にある機関は・・・・」
「?」
「あなたが手に入れた宝珠の力を狙っています。」
「それだ・・・・・・俺はそんな物はどこにも持っていない。」
「「それ」が、必ずしも目に見え、手に触れれるとは限りません。宝珠はあなたの中にあるのです。」
「・・・・・・・よしんばそうだとしても、俺の一番の願いだったリーンは・・・・・・・願い事がなんでも叶うって言うのは言いすぎだ・・・・」
「そうですね、一定の物理限界、時間的な限界は確かに存在します。ですが・・・・・あなたの手に入れた力はやはり巨大なのです。」
紫炎は静かにそう言った。




