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第17話「覚悟」

・・・・・・このままではリューヤは死ぬ・・・・・・・・

小夜子の感覚が捉えるリューヤのオーラ(生体エネルギーの波)は、どんどんと失われていく。

 間違いなく人が死ぬ時の現象だった。リューヤが死ぬ・・・・いや死んだとしたならば、今、我々の取るべき行動は・・・・・・・いや、死なせてはならない・・・・まだ病院に担ぎ込めば間に合うかもしれない・・・・・・

 目まぐるしく頭が回るが思考は纏まらない。

「ほう、お前達の国は、そんな物を開発していたのか・・・・・・無駄な事だとは思うがやってみるがいい・・・・・」

 ザルマが西城に何か言ってる・・・・・西城が何かしたのか?

「水無月!リューヤを連れて逃げろ!」

 無理だ・・・・・・出来るはずがない

「早くしろ!ここは俺が食い止める。」

 無理だ・・・・・

 西城が銃をザルマに向けて撃つ。当然のごとくザルマには当たらない。

「早くしろ!!」

 ザルマがどれ程の力を持っているのか定かではない。しかし、銃弾が当たれば怪我はするし、斬られれば血も出る。そこに活路があるだろうか?小夜子の頭で僅かな可能性に賭けてみようという気持ちが生まれた。

「面白い考えだな?ミス水無月。後少し待ったほうがいい。その男の心意気を無駄にしない方がいいな。」

思考を読んだ?

「そこにいる劣等種は、未完成の薬を飲み込んで、一時的に我々優等種と同じ力を得ようとしているという事だよ。」

 小夜子がチラリと西城を見た。クライ王国は人工的に能力者を開発していた。その技術があれば、一時的にそういう能力を持たせる事は可能なのかもしれない。西城が服用してこの場に入り込まなかったという事は、何らかの副作用があるのは間違いないと考えていいだろう。緊急用に持たされていた薬・・・・そういう事なのだ。何故なのかは分らないが、ザルマはすぐに西城を始末しようとしない。リューヤの意識を一瞬で奪ったあのスピードがあれば、西城も小夜子も始末するのは簡単なはずだ。なんのつもりかは分らないがそこがこの男の隙だ。

「そういう事だ。ただ、時間をかければリューヤ君の生存確率は下がるよ。」

 西城が発する気の質が明らかに変わった。その瞬間、小夜子は刀をがむしゃらに振り回しながら、リューヤに近づいた。むやみやたらに刀を振り回せば、近づくのは簡単ではないはずだった。しかも、小夜子の振り回しは素人のそれではない。一度でも読みが遅れれば、当たり所によれば、死ぬ。小夜子はそうやってリューヤの傍に近づいた。しかし、リューヤを連れて行くには刀の振りを止めねばならない。ザルマがその隙を見逃すだろうか?賭けだった。

「ゲームオーバーだ。」

 刀を止めリューヤの体に手をかけた瞬間、背後でザルマの声が聞こえた。真後ろ、それは予測できた事だった。小夜子は刀を掴み、真後ろの標的に向けて払った。

 側頭部に衝撃が走った。意識が一瞬飛ぶ。

 死ぬ・・・・・・・・・

 そう思った。

 だが、致命傷となるはずの追撃は来なかった。

「水無月・・・・・・・水無月・・・・・」

 朦朧とする意識の中で呼ぶ声が聞こえた。

「水無月!!!!!」

 小夜子はハッとして、首を振る。体のあちらこちらが痛い、だが、側頭部以外の痛みはそれ程でもなかった。声の方を見ると、西城が、ザルマを後ろから羽交い絞めにしていた。

 小夜子は素早く刀を取り、そのまま掛け声と共にザルマを突いた。

 今、西城の命を顧みる余裕はなかった。

 西城諸共、ザルマを殺したはずだった。

 だが、そこには二人はいなかった。あれ程の力があるのなら、西城ごとであろうと避けれないはずはなかったのだ。

 西城を抱えたままでも凄まじいスピードだった。西城が振りほどかれていないのが、奇跡的だと思えた。

「この劣等種の虫けらの犬があ!!!!」

ザルマが西城を振りほどこうと力を込めていた。

「犬だろうが虫けらだろうが意地ってもんがあるんだよ。」

 西城はそれだけ言うと、更に羽交い絞めにした腕に力を込めた。常人なら首の骨が折れている程の力だった。

「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 ザルマが声を上げた。

 ザルマの腕や首に凄まじい力が集まっていくのが分った。それに合わせ西城も更に渾身の力を込めた。

 最後のチャンスに思えた。

 小夜子が再び刀を突いた。

 これで終わらなければ、全員死ぬ。そう思えた。

 だが、刀は空しく空を斬っていた。

 ドシンという音が聞こえた。

 それは、西城が落ちた・・・・絶望の音だった。

「ククク・・・・・・・・フフフ・・・・・・ハーッハッハッハ・・・・・・・僅かだが焦ったぞ・・・・・たいしたものだ・・・・・・・だが、もう終わりだ・・・・・・お前らは殺す!・・・・・・・」

 ザルマはハッキリとした殺意を発していた。

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