第16話「リューヤの死」
「君達はこの世界に飽いていないのかね。」
正面に捉えていたはずのザルマの声が後ろから聞こえた。
小夜子は、確認もせず背後の気配を斬る。
手応えはない。
「平凡な日常、膿んだ世界。変えたいとは思わないのか?」
ザルマは小夜子の背後に常に回る。
(早い・・・・・どういう理屈でこれ程の動きが出来る?音速すら軽く超えてる・・・・・にも拘らず衝撃波がほとんどない・・・・・どうすれば・・・・・)
「リューヤ、逃げろ!!!私達では勝てない!」
小夜子が叫んだ。
「殺す気ならとっくにやれてる・・・・・我々と君達の間で、何がしかの妥協点を見出したいのだがね・・・・・・」
「ザルマ・・・・・」
リューヤが落ち着いた表情で言った。
「古いぜ・・・・」
リューヤが抜く手も見せぬクイックドローでザルマを打ち抜く。
「古い?」
ザルマの声がリューヤの背後から聞こえた。弾丸は命中していないようだ。
「古いとはどういう意味だ?」
「お前の考え方は過去の遺物だって言ってんだよ。少なくともここにいる俺達にそんな誘いは通用しねーてこった。」
西城が気を引く意味で言った。
「古いと言うより器が小さいな。選ばれたもんだけの世界で残りは皆殺しか?そんなアホな事についてく人間がどれだけいるってんだ?それに力だけでそれを成し遂げる為には莫大な力が必要じゃねーのか?」
「我々にはそれだけの力がある!!!」
「それで、自分が優等種のつもりだろうが劣等種とやらがいなくなったらお前はそんなかじゃ只の凡人だろ?それで、その中でまた再び劣等種と優等種に分かれて殺しあう・・・・結果は見えてる。そんな事もわからないのか?」
リューヤがこの絶望的な状況で軽口を叩く。西城にも小夜子にもリューヤの意図は読めなかった。実はリューヤ自身にもよく分かっていない・・・・・
「生産力として残せという事か?必要ないな・・・・・・」
「だいたい、お前の能力ってのは誰のおかげでなりたってると思ってるんだ??そいつらに利用されてるって事が分らないのか?お前のその傲慢な自尊心に付込むのはさぞかし楽だったろうよ・・・・・」
リューヤがザルマに嘲笑を浴びせる。
「だ・ま・れ」
ザルマの顔が紅潮する。
「お前が何様のつもりでいるのか知らないが、お前はその程度の事も分らない。只のア・ホだ。」
クックックック・・・・・フフフ・・・・・・ハーハッハッハ
ザルマが笑った。
「なるほど、面白い、面白いな。この状況でそれだけの軽口を叩ける。お前は貴重なモルモットだ。いつまでその軽口が持つか試してやろうか?」
「くだらん事を考えると足元を掬われるぜ?やるんなら一気にやるんだな。」
次の瞬間、リューヤは引き倒され、倒れた頭部にザルマの膝が入っていた。床と膝に頭部を挟まれ、リューヤの意識は飛んだ。
「リューヤ!!」
小夜子と西城の声が重なった。
「ハハハ、軽口は実力と相談して叩くべきだといういい例だ・・・・・・。さて、切り札を失った君達はどうするつもりだ?死ぬか?生きるか?選べ・・・・・・・」