第14話「この地に生きる者」
そう言い切ってリューヤは、拳を壁にぶつけた。
「落ち着け。リューヤ。」
西城の言葉を聞いてリューヤは、手を額にあてた。
「頭を冷やして来る。」
リューヤがドアに向かう。
「待って!」
ビルヘルミナがそう言って後を追う。小夜子と西城がその後に続く。
リューヤは部屋を出て、エレベーターの前で足止めをくらった。一番最後になった西城もエレベーターに乗ることが出来た。
「頭を冷やすのは賛成よ。でも、我々にもあなたを守る義務がある事を忘れないで。」
「俺は一人になる事も許されないのか。」
リューヤは吐き捨てるように言った。
「当たり前だ。お前は自分を軽く考え過ぎてる。少しは立場という物を考えろ。」
小夜子は強い口調でリューヤを責めた。リューヤは誰とも目線を交えず、エレベーターのドアを見詰める。エレベーターが一階のロビーに着き、ドアが開いた。
リューヤがロビーから玄関へと向かう。
「どこに行くつもり?」
「さあな、俺の足に聞いてくれ。」
リューヤが足早に歩く後に、ビルヘルミナと小夜子が続く。西城はフロントに鍵を預け、走ってリューヤの後を追う。
「そっちは・・・・・・・」
リューヤが角を曲がろうとすると、ビルヘルミナが声を上げた。路地を曲がろうとすると数人の子供が座っていた。リューヤは子供の顔を見て驚いた。全員の片目が白い。
「なんだ・・・・・・・」
「闇医者の手によって角膜を取られた子供たちよ。」
ビルヘルミナが答えた。
「生きた人間から角膜を取ってるってのか!」
西城が声を上げた。
「角膜や臓器は高値で売買される。子供を攫っては死なない程度に臓器を奪っていくシンジケートがあるの。」
「・・・・・・・・この国にもそんなものがあるのか・・・・・・・・・」
小夜子が静かに言った。
「アルネシアの資金源のバックにそのシンジケートがある事は分かっている。そこまで掴んでいても、ザルマのせいで主犯格は国外逃亡。相変わらずこんな事が繰り返されてるわ。ザルマが先読みをするせいで我々は常に後手に回って、このシンジケートを壊滅出来ない。」
「・・・・・・・・」
リューヤが拳を握る。
「一週間も待つ必要はない・・・・・・・」
「・・・・・・」
小夜子が諦めたような目で、目線を落とした。
「依頼を受けると伝えてくれ。」