第10話「セキュリティー」
リューヤ一行は、関係者以外立ち入り禁止の看板のある門を抜け、白い小さなビルの様な建物に向かった。少し煤けた感じのする壁で、小さめの駅の前にある、古くなったビルを連想させる。
「着いたわ。」
ビルヘルミナ・レイナードがリューヤと小夜子の乗る後部座席に向かってそう言った。車は二台出迎えにきていたが、リューヤから目を離すなという命令を受けていた小夜子とビルヘルミナが同乗し、西城は運転手一人と後続の車で3人の後を追尾した。
4人は車から降り、白い古びた建物の前に立った。
「随分と古めかしい建物だな。」
西城が不機嫌そうな顔で、建物を眺めた。
「外面はカモフラージュよ。中のセキュリティーは完全に近いわ。網膜スキャナ、監視カメラ、監視カメラは人の皮膚の状態から個体を識別出来るように出来ているわ。それとIDカード。ちなみに、あなた方のそれらの情報はあなた方の所属する国から頂いているわ。」
リューヤも西城同様、不機嫌そうな顔でビルヘルミナに質問を向けた。
「それで、ここはどこなんだ?俺達の国で言うα研究所か何かなのか?」
「違うわ。ここはF国情報局の拠点の一つ。私の上司と、この国のβ能力者研究機関の所長と、その上の責任者が待ってるわ。」
「まあ、いいさ、取りあえず入らせてもらおうか。」
リューヤはそう言って、ビルヘルミナを促した。
「そうね、詳しい話は上に聞いてもらうのが一番だと思うわ。」
ビルヘルミナはそう言って、古びたボロビルの一つ目の自動ドアをIDカードを差し込み開けた。
リューヤ、小夜子、西城がそれに続く。
ビルヘルミナは、次の扉の前にある小さな窓口の受付に何事かを告げ封筒を受け取った。ビルヘルミナは封筒から三枚のIDカードを取り出し、三人に渡す。緑色でICチップらしき物がついている。
「武器や、金属の類いはここで預けて。内部は持ち込み厳禁だから。」
三人は言われるがままに、それらをビルヘルミナに預け、奥へと向かった。
そして、少し広い場所に出て、エレベータに乗った。
エレベーターにもカードの差し込み口があり、ビルヘルミナはそこにカードを差し込み、番号を押した。
エレベーターは音もなく目的の階につき、止まる。
3人は、ホテルのドアより無機質なドアの連続を抜け、一番奥にある扉の前まで、ビルヘルミナに連れられていった。
ここにも、カードを差し込むところがついていた。覗き穴のようなものも扉についている。
「ここにさっき渡したカードを差し込んで、そこの網膜スキャンを覗いて。」
三人は、言われるがままに、カードを差し込み、片目を覗き穴に向けた。「セキュリティーは面倒とワンセットだな。」などと、西城はぶつくさ言いながら、手順をこなした。
「入りたまえ。」
ドアの上についているスピーカーから声がし、扉のロックが外れる音がする。
ビルヘルミナが、「失礼します」と言ってドアを開けた。
その瞬間、リューヤは何か禍々しいものを、ドアの隙間から感じた。