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3.1 アトランティス神話

神々の血筋を引くと言われる賢者で語り部のスーロンが夜空を指さして語り始めた。

 よろしいですか? この指先はあの空を指さしているのではない。あなたたちが生まれるより、私が生まれるよりずっと以前から、あの空よりずっと彼方にある暗黒と静けさを指さしているのです。


 昔々、この世界は全てまったくの暗闇と静けさの中に混沌としてありました。それを私たちはヒュリシアンと呼んでいます。そのヒュリシアンにはルスリスとレーナという二人の神が思索の中で住んでおいででした。ルスリスは男神で、レーナは女神でした。

 永遠に続くとも思われた二人の神々の思索の中に、ある日突然にまばゆい光と共に一人の女神が生まれました。ルスリスとレーナはこの女神の誕生を喜んでルミリアと名付けました。ルミリアは明るく輝き、真理の光でヒュリシアンを照らしだしました。ところが、彼女の光で照らされたヒュリシアンの混沌が大きく別れ始めました。今でも私たちは、ルスリスとレーナの住む所を引き裂くヒュリシアンの裂け目(天の川)を夜空に眺めることが出来ます。

 驚いたルスリスとレーナはルミリアにヒュリシアンの一部、アトルと呼ばれる所を与えて彼女の世界としました。ルミリアの真理に照らされたアトルでは正義、律法、忠誠、智といった輝くものが浮かび、火や水や土など目に見える重いものが沈んで行きました。

 ルミリアの次に生まれたのはアナラスでした。アナラスは座して手を広げるだけで空を包み込むほど大きく、力のある神でした。利口なアナラスはヒュリシアンとアトルを遮る長く赤い柵、イアネルクを築き上げました。ヒュリシアンの世界とアトルの世界が、切り替わるとき、私たちの目には東や西の空にイアネルクが赤く輝くのを見ることができます。

 次にアナラスは、アトルの上部「正義」「律法」「忠誠」などからなる場所にルミリアの神殿を築きました。それは「智」と「律法」の二つの柱で支えられ「希望」の礎石の上に「満足」の石を積み上げて作られていました。ルミリアは喜んで真理の光を強めてアナラスの領域を創りました。そこは「風」「音楽」「享楽」などからなる場所でした。これらより重いものは更に沈んで行きました。アナラスはその領域に4つの門を持った神殿を作り住みました。アナラスが神殿を築いた頃、ヒュリシアンでは3番目の神エトンが生まれました。ルミリアは更に輝きを強めてこの2番目の弟のための領域を創りました。ルミリアとアナラスの支配するところの下で、「炎」、「光」、「灼熱」、更に「美」が加わって固まってアトランティスの大地となりました。エトンはその炎の中に自らの神殿を築いて大地を支配しました。また、この時に大地にならなかった「運命」「野望」「争乱」といったものは大地から分かれ流れて海となりました。また、この時に一緒に流れた「勇気」「雄々しい美」「怒り」といったものは、アトランティスの大地から少し離れて固まってルージ島となりました。

 エトンに続いて生まれたのはリムラスという雄々しい神でした。しかし、どうしたことか、この神は生まれながらにして呪われた運命を背負って参りました。このリムラスはルージ島に神殿を建て海を支配しました。リムラスの呪われた運命のために常に兄弟の争いが起こりました。空の風は波を立て、大地は振るえて火で天を焦がしました。巨大な波は大地を侵しました。

 兄弟間の絶え間ない争いを漆黒の闇のヒュリシアンの中で嘆いたルスリスとレーナはルミリアに兄弟間の調停と裁きを命じました。この時から、ルミリアは真理と審判を併せ持った神となりました。また、ルスリスとレーナは月の女神リカケーを生み、ルミリアの住む所とヒュリシアンの間「癒し」、「同情」。「忘却」よりなる領域に住まわせて、姉のルミリアの眠りの間、姉に代わって兄弟の調停を務めさせました。争いの結果、空を支配するアナラスが地表を治め、エトンは地下深く地中の世界を治めています。空は昼はルミリア、夜はリカケーが支配しています。

 さらにルスリスとレーナはアトルの中で分離した様々な美徳をこねて様々な祝福された人々、つまり私たちアトランティナの祖先を創造されました。ルミリア、アナラス、エトン、リムラス、リカケーの神々は祝福された人々の中から特に優れた人々を夫や妻としました。そして、神とアトランティナの間に更に多くの神々が生まれる事になりました。

 いま、神々はこの大地の上で、ルミリアの真理の光とリカケーの癒しの光を受けながら、我々アトランティナ(アトランティス人)を見守っておいでです。


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