リーミル2 アトラスとの出会い
数刻後、リーミルの姿は聖都端の市場にあった。
ギリシャの哲学者プラトンの著作で現在に伝わるアトランティス大陸の姿は、神が大陸を同心円をなす陸地帯と水地帯に分割して作り上げた。その中心地に海神ポセイドンの聖域が位置するという、実に秩序だった姿をしている、
これは、アトランティス大陸ではなく、アトランティスを代表する都市国家シリャードの姿が伝わったものではあるまいか。
もともとは、ルードン河の川辺にあった真理の女神の聖域を示す石柱や神殿と巡礼者たちを迎える安宿が、いくつか建ち並ぶだけの貧相な光景であったらしい。
ある時から、安宿が追い払われ、神殿を囲むように九つの国の国王が集う議会や、国王が居住する館が加わって、それらの区域を守るために堀と城壁が築かれた。もちろん国王に仕える数多くの家臣や召使いの居住区が必要となる。そんな区画が内側の城壁を取り囲んでその外側に堀が作られた。数多くの人々に食糧や物資を供給するための市が立ち、その市が拡大して物資を求める人々が行き交い、それらを守る為に周囲に城壁が築かれて巨大な都市国家となった。
が、今は、その中央に占領軍たるアテナイの一軍がいる。
(ふぅ……)
リーミルは肩の力が抜ける心地よさを感じていた。市外もこの辺りに来ると雑多な濁った雰囲気が漂い、飾り気のない清濁生の正直さが心地よいのである。彼女自身は堅苦しい王女の衣装を脱ぎ捨てて町娘の衣服を着用している。庶民らしい貧相なサンダルを履いた足が軽やかでこの町の景色に溶けこんでいる。
そんなリーミルの鼻をアトランティナがハラサと呼ぶ柑橘系の果物の香りが刺激した。ハラサ水売りが街路に出している店の軒先である。冷たい井戸水に蜂蜜とハラサの絞り汁で香りづけにハラサの皮を薄く刻んで入れる。庶民の飲み物である。
リーミルは懐の金袋に手をやって、両替を忘れたことを悔いた。金袋には3粒ほどの銀の小粒が入っている。こんなもので代金を払っても、貧しいハラサ水売りはお釣りを払えないに違いなく、第一、リーミルの身分がばれてしまうだろう。
しかし、ここいらの人々は細やかな配慮をする。リーミルの素振りから彼女が今日は金を持っていないことを悟ったらしく、ハラサ水売りは昨日顔なじみになった客に、カップを差し出した。
「飲みな。どうせ、もう温くなって売り物にゃならねぇや」
客を待つ間に冷たいハラサ水が温まってしまって売り物にならない。タダで飲めと言うのである。
「ありがと」
リーミルはそう礼を言って、店の傍らの縁台に腰掛けてハラサ水を喉に流した。冷たく新鮮な感触が、心地よく喉を通過した。彼女はこの区画の雑多な雰囲気に溶けこんで違和感が無い。ただ、リーミルから見ても、この区画は心地よくはあるが、日常の時が流れる退屈さを感じている。
(あらっ?)
そんなリーミルが、ふと目を引かれた姿がある。
(グラトあたりから田舎貴族が迷い込んできたのかしら)
その青年の姿はどう見ても、目的地を見失って道に迷っている。
目的地の方向を探ろうとして背伸びをして見たり、
自分の場所の情報を得ようときょろきょろと辺りを見回したり、
そして、忙しく行き交う人々やその数の多さに面食らって、人に道を尋ねることが出来ずにいる。何か、眺めているだけで面白い。ただ、その純朴さには好感が持てる。
その青年。ルージから海を渡ってやって来たアトラスである。
アトラスがなすことなく足を止めて一息ついていると、自分を観察するかのような少女と視線を合わすことになる。リーミルとアトラスの初めての出会いと言えた。ただ、リーミルは一瞬にしてアトラスの視線を避けた。別のよからぬ気配がしたのである。
(二人?)
リーミルは自分の前方から下心を隠しもせずにやって来る男の数を数えたが、背後にもう一つ同じ種類の気配を感じて数を修正した。
(いえ、3人ね)
この区画には警察権力の手が行き届きにくく、ヤクザな荒くれどもが集まる場所でもある。
「やぁ、お姉さん。ハラサ水じゃなくて、酒をおごってやっても良いぜ」
男の一人がリーミルにそう声をかけた。リーミルは言葉を聞き流しながら、ハラサ水売りの店主に目配せをして、もっと距離を置いてトラブルを避けなさいと指示をした。
既に、リーミルと男たちの周囲には事の成り行きを見守る人々の輪が出来ている。
「姉さん、お前、耳が聞こえねぇのか?」
「いや、俺たちを見ても驚く様子がないってなぁ、めくらかもしれねぇ」
リーミルは絡む男たちのねちっこい言葉を聞き流して、カップに残ったハラサ水を飲み干した。彼女は荒くれ男たちなど目に入らぬように微笑んだ。
(あら、なんという勇ましいこと)
アトラスの姿が目に入ったのである。この種のトラブルはこの区画では珍しいことではない。この区画で生活する人々は、トラブルに興味を示しつつも、男たちが周囲を威圧するように見回す視線を避けてうつむいて避けている。
そんな中で、事の成り行きに戸惑っているが、目の前で見ず知らずの女が荒くれ男に絡まれて難渋するという状況に、アトラスが男たちに向ける視線が鋭い。
男の一人が返事を促すようにリーミルを脅した。
「お前さん、返事をする口がねぇのか?」
にやにやと笑う男たちの輪が小さくなってリーミルを囲んだ。
「女が欲しければ、マグニトラにでも行く事ね」
リーミルはすましてその方向を指差した。ルードン河を挟んだ対岸にマグニトラと呼ばれる歓楽街があり、売春宿が建ち並ぶ。リーミルは男たちに売春婦を買えと言うのである。
「なにぉっ」
男たちはそう言いつつ息をのんで黙った。彼らを見つめるリーミルの目に威圧感があり、それ以上の言葉を発することが出来ない。この辺り、リーミルは彼らをあしらうのには慣れている。
リーミルはふと男たちの視線の向きが変わったのに気付いた。
あしらわれた彼らの怒りの矛先が、どうやらリーミルが興味を示しているらしいアトラスに向いていた。周囲の人々に混じって、男たちの視線に向きあうアトラスは一人目立つ。
「あんっ、アレがお前の色男ってわけかい?」
アトラスにとって迷惑なことに、男たちの感情は怒りから憎しみに変わって、アトラスに向いた。
「おいっ、色男さんよ。女の前で勇敢なところ、見せたかねぇのか」
そんな言葉の口調を聞いていれば、男たちはアトラスが一人と見て侮る様子が伺える。野次馬が三人の荒くれ男に後ずさりをし、アトラスと男たちを囲む輪になった。
「無礼な」
アトラスは怒りを見せたが、その怒りが男たちの哄笑を誘った。
「おいおいっ、田舎貴族さまが、俺たちを無礼だとよ」
「無礼なのは、臆病なくせに長刀を帯びてる田舎貴族さまだぜ。」
男たちは自分たちの言葉に興奮を募らせ、3人は短刀を抜いた。
「餓鬼はしらねぇだろうが、刀ってのは、刺されると痛いんだぜ」
「その腰の剣はただの飾り物か」
真っ正直な性格のアトラスはあしらうということが出来きず、男たちに合わせて剣の束に手をかけた。
「ふうん」
リーミルは他人事のように感心した。腰の重心を下げ一呼吸で腰を捻って剣を抜き取る様子にあの若者が剣に練達している様子が伺えるのである。ただ、剣の切っ先を人に向けるときの呼吸が荒く、あの若者は人を斬った経験はあるまい。この男たちは争い事を避けるすべも知らず放っておけば殺し合いをするだろう。そして、剣の扱いに慣れた若者は力加減も知らずに剣を振るって3人を切り捨ててしまうに違いない。
あの三人が殺されてもどうと言うことはない。ただ、あの無垢な若者に殺しをさせるというのは気が引ける。リーミルはハラサ水売りが壺の中で蜂蜜をかき混ぜてるのに使っていた棒を手にして立ち上がった。
「ちょっと……」
リーミルは手にした棒で、手前にいた男の後頭部を突き、こちらに振り返りさせてから、棒を振り下ろし頭部を激しく打った。棒を受けた男は、頭を抑えてうずくまった。もう一人が襲いかかってきたのを、リーミルは身を翻して避けて、足払いをかけた。男はつんのめって店の縁台に突っ込んだ。リーミルはやすやすと棒で男の後頭部を打ち据えて気絶させた。
リーダー格の男が残った。一瞬、逃げ道を探した気配がある。しかし、周囲の人々の視線に自分の腕力を誇りたいという自己顕示欲が勝った。たしかに、大柄で周囲を圧する体格の男である。
「この女が」
さらに腕力を誇示するように太い腕を持ち上げて威嚇した。ただ、体格や腕力を誇示する姿勢は酷く無防備になる。
(頭の中まで、ケダモノなの?)
リーミルは手にした棒をちらちらと振って見せた。先ほど仲間がこの棒に打ち据えられたという印象があり、男の注意がこの棒に集中した。
その刹那、リーミルは右の足を蹴り出した。蹴り出した右のつま先が的確に男の股間を捉えていて、何かがグシャリと潰れたような感触が伝わった。
(きゃっ)
リーミルはその感触の気色悪さに内心悲鳴を上げた。しかし、男は股間を押さえたまま声も出せずに悶絶して地を転がった。
「これが、フローイの流儀よ。女を侮辱する男はこうなるの。」
リーミルはそう言い放ち、周囲を眺めて破壊されてしまった店を眺めて、懐に手を入れて小さな金袋を取り出し、店主に投げ与えた。
「これで店を直しなさい」
再び周囲を眺め回して、使うことのなかった剣を鞘にしまったアトラスの手引いた。
「さぁ、場所を変えましょう」
二人はしばらく人混みを抜けて足早に歩いた。アトラスはリーミルに手を引かれるまま素直に歩いた。歩きつつアトラスは言った。
「礼を言う。助けてもらったようだ」
そう言うアトラスの純朴さにリーミルは好意を持った。愛玩動物のように可愛い。並の男なら女に強がってみせるに違いない。しかし、この若者は自分の剣の腕を誇ることもせず、トラブルを避けてくれた礼を言うのである。リーミルにとって、初めて観る種類の男だった。
「あなた、シリャードは初めて?」
「昨日、着いたばかりだ」
「それで、ふらふらと出歩いて、宿の場所を見失ったの」
「ああ。迷っていた」
そんな短い会話の中、リーミルは若者の言葉に違和感のある訛りがあるのに気付いた。彼女の祖父のボルススは武人ながら政略に長けた男で、身内の政略結婚やら、各地に潜入させた密偵やら、各国の協力者らがリーミルが幼い頃から住まう王宮に集う。自然、リーミルは各国の言葉の言い回しや訛りに馴染んでいるはずだった。そんな訛りに当てはまらないのである。かといって、占領軍の蛮族の言葉遣いではなく、庶民ではあり得ないほど礼儀正しい物言いをする。
(あやつらの頑固さと純朴さは、策謀には向かぬ)
リーミルの祖父ボルススがそう言ったことがある。ルージの人々の気質は裏工作には向かず、ボルススが唯一策略の手を伸ばしていない人々。リーミルが聞く機会がないとすればルージの訛りである。
(なるほど、ルージ者ね)
ルージ国の出身者だと思いついたのである。彼女は心の底でアトラスの故郷を言い当てた。
「貴方、ルージの人?」
「私が、田舎者だと?」
「田舎者だというなら、まぁ、私も似たようなものよ」
リーミルは水路の傍らのベンチにアトラスを誘って座らせた。行き交う人々の姿は多く、彼女たちに興味を示す者はいない。
二人は意図して互いの名を名乗るのを控えた。相手の名を尋ねようとすれば、自分の名を名乗らねばならない。アトラスは偽の名を名乗ると言う知恵が回らず、リーミルはこの男の純真さに、偽りの名をすり込むことには罪悪感がある。
「ご家族は?」
「故郷には母と妹がいる。父はこの聖都に」
「家族が離ればなれで、寂しいこと」
「いや。父はそうは思ってない」
「どうして?」
「父は異邦人の女とその息子の方を愛している」
アトラスも目の前の女性が自分と同じ辺境の人間だと知って少し心を許したように、身分は隠したまま、生い立ちや境遇を語っている。
自分より兄のほうが愛されている。
自分を愛してくれる母のために。
普通なら隠しておきたい本音を、まるで姉に悩み事を語るかのように話している。
(なんとまあ、素直な男)
知りたいことを素直に話してくれるか、語れずに正直に口ごもるだけ。フローイ風の言葉の裏に込められた腹の探り合いと比べれば、なんと単純。
リーミルはこの正直なルージの若者に尋ねたい事がある。もちろん、祖父ボルススが勧める縁談の相手の評判や人柄についてである。
「ルージにはアトラスという王子がいるそうね」
核心を突いた質問にアトラスは面食らって口ごもった。リーミルは勝手な推測を込めて、アトラスに返答を促した。
「何か、伝説のレトラスのように素晴らしい肉体の持ち主で、勇敢さは比類ないとか言う噂だわ。本当なの?」
アトラスはもっとむっつりと黙りこくった。しかし、その表情を観察したところ、決してリーミルの言葉に不快感を感じている様子はなく、リーミルの指摘を密かに喜んでいる感情が滲み出している。
どうやらこの男にとってアトラスという人物名は口にしがたいらしい。
リーミルは、ふっと吐息を漏らした。若者が腰に帯びる剣。その剣の束に青緑の輝きを放つアクアマリンの宝石がはめ込まれているのに気付いたのである。アクアマリンと言えばルージを象徴する色だが、そんな宝石を剣の束にはめ込んでいるのは王家の人間だけである。
(これが、アトラスなの?)
そう気付いて、リーミルは興味深げに質問を重ねた。笑顔と裏腹に尋ねる内容は強烈である。
「お答えがないのね。では、ルージの牙狼王リダルが戦をしたがっているのは本当なの」
アトラスはリーミルの言葉を言下に否定した。
「そんな事があるものか」
「でも、このシリャードでは、そんな噂で一杯」
アトラスは考えつつ言葉を繕った。
「噂は事実ではない。王宮で王が戦を始めるなどと口にするのは聞いたことがない」
アトラスはリーミルの明るい笑い声に言葉を途絶えさせた。
「あら、ごめんなさい。あなたを笑ったんじゃないの」
リーミルはそう言って、心の中に残りの言葉を吐き出した。
(なんという、運命の神のお導き。いえ、恋愛の神の悪戯?)
『王』という単純な言葉の使い方が不自然だった。家臣が王を呼ぶときは、信頼や敬愛を込めて『我らが王』と呼ぶ。また、目の前の男の若さの家臣が王宮で王に謁見して言葉を交わすことはあるまい。リーミルは僅かなヒントから、目の前の若者がルージの王子、彼女が祖父によって政略結婚させられようとする相手だと判断してのけたのである。
彼女は立ち上がって、一時の別れの言葉を吐いた。これから早急に祖父の所へ戻って決心をつげに行かねばならない。
「残念だけど、今日はここまで。貴方を送って行ってあげることは出来そうにないわ。」
その通りである。この迷子の王子をルージ国王の館に送って行けば、まだ隠しておきたい自分の正体がばれてしまうし、アトラスも彼自身が隠しているつもりの正体を暴かれるのは望むまい。リーミルは立ち上がって水路の方を指差した。
「道を辿ってもダメよ、迷うだけ。水路の幅が広くなる方に向かいなさい」
単純な理屈である。ルードン河から水を引き込んで広がっている水路である。交差する水路を幅の広くなる方を選んで辿ればシリャードの中心に近づけるのである。
「おいっ、娘」
アトラスは戸惑いつつ駆け去ろうとするリーミルにそう声をかけた。リーミルは笑って立ち止まりつつ振り返った。この若者は女性に声をかけ慣れていない。慣れていればもっと別の言葉があるだろう。
(女についても、田舎者なのね)
そう考えるリーミルに、アトラスは左腕につけていた腕輪を外して渡した。
「礼だ」
田舎者らしい律儀さでトラブルから救ってもらった礼にと、腕輪をはずして与えるつもりなのである。リーミルは腕輪を受け取りつつ礼の代わりに言葉を放った。
「また、近いうちに会えるでしょう」
リーミルは駆けながらやや後悔している。アトラスの目の前で、見ず知らずの男の股間を蹴り上げるなどということをやって見せたことを。
ただ、リーミルが好意を持ったこのアトラスの素直さは、アトラスが纏っていた仮面を剥いだ姿で、アトラスの家族から観れば思いもよらない姿に違いない。
姿を消したときと同様に、ふらりとリーミルが王の執務室に姿を見せた。ボルススは笑いながら、謁見の許可を求めるという儀礼を無視する孫娘を改めて叱った。
「ここでは礼儀をわきまえよ。我々が礼儀をわきまえぬ田舎者だと噂が立つ」
「私、田舎者もいいかなぁって思うのよ」
「例えば?ルージか」
「たとえ、ルージ国に行ったとしても、生魚は食べなきゃいいのね」
「それは、アトラスに嫁いでも良いと言うことか?」
「まあね」
「どういう心変わりだ?」
「愛を司るフェリンの悪戯に引っかかったと言うところかしら」
ボルススの見るところ、普段は装飾品にはさほど興味を示さない孫娘が、腕輪をもっている。孫娘は腕輪を見せびらかすように手の中で転がしたり、指で回したりした。その癖、大事な物を扱うように落として傷つけるのを恐れる様子もある。
「では、面会の話を進めて良いのだな」
ボルススはそう言ったが、政治と愛は切り離している男である。孫娘の意志と関わりなく政略の道具に使う。日程は既に決まっているはずだ。その日程をリーミルは確認した。
「いつになるの?」
「六日後、ミッシュー明けになる」
アトランティスの暦でターアの月の後、ミッシューという一年の不浄が集まるとされている不吉な日が5日間ある。その日を避けて吉日に二人を娶せる手はずを整えていると言うのである。
祖父と孫に互いの腹を探るような沈黙があり、リーミルは話題を変えて沈黙を破った。
「見て、私にはぶかぶか」
リーミルは手の平で弄んでいた腕輪を、するりと腕にはめてみせた。ボルススは孫娘に提案した。
「気に入ったものならば、手直しさせれば良かろう」
フローイ国は山岳地帯が多く、銀を産出する。人々は銀を使った細工が巧みで、フローイの銀製品としてアトランティスで鳴り響いている。そんな熟練した細工師に依頼すれば、腕輪の大きさなどリーミルの腕に合わせて上手く作り直すに違いない。
「いいわ、このままそっとしておきたいから」
リーミルはそう言って、するりと身を翻して部屋から消えた。