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リーミルの思い

 同じ頃、フローイ国王の館では、リーミルが灯りもつけず、ベッドの脇の窓から差し込む満月の光のみを浴びながら一人ベッドで横になっていた。大きく見開いた目に月の光が反射してきらりと光った。議会から帰宅した祖父のボルススから子細は聞いている。

(これからと言うときに、突然の帰国ですって?)

 そう考えながら思い起こすのはもちろんアトラスの事である。ルージ国の王子アトラスに嫁ぎ、ルージ国とフローイ国の関係を強化するために、彼女はこのシリャードに呼ばれた。しかし、シュレーブ国の方が一足早く、エリュティア姫をアトラスの嫁入りさせる話を持ちかけた。そこにリーミルが割り込もうと画策したわけだが、予想もしない事態に計画は頓挫した。その悔しさに彼女は小指の爪を噛み、舌打ちしたくなるほどの思いで居たのである。しかし、事情を聞けば、反逆者呼ばわりまでされたアトラスに同情する気にもなる。あの純朴な田舎青年は、何やら煽られて余計なことを口にしてしまったらしい。

(全く、なんて間抜けなやつ)

 リーミルは多少の愛情を込めてそう思った。フローイの男には無いあの無垢な性格は嫌いではない。ただ、積極的にアトラスに接近しようとした事が、果たしてアトラスに対する愛情だったのか、出会ったこともないエリュティアという少女ら対する嫉妬の混じったライバル神だったのか彼女自身も良く理解できないのである。

(私があの田舎者を愛している? まさか……)


 彼女は混乱する頭の中を整理するために、これからの予定を考えた。二日後、彼女は祖父と供に帰国の途につく。

(フェミナ)

 リーミルは自分が呟いた名がエリュティアの幼なじみだとは知らない。ただ、彼女の帰国と少し時間をずらして、シュレーブ国貴族の姫フェミナが、フローイ国のリーミルの弟グライス王子に嫁いでくる。壮麗な行列を仕立ててやってくるだろう。迎えるフローイ国も国を上げて祝いの婚礼式典を行うことになる。グライス王子とフェミナ姫の幸福を祝うわけではない、両国が堅く結びついてこの大地に覇を唱える足がかりにするためである。リーミルはいつしかため息と供に深い眠りに陥った。

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